【完結】悪役令息の義姉となりました

かずきりり

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 隣国……。
 アザリア・レオ・フォールド王女殿下の国だろう。一応まだ王太子殿下の婚約者なのだから、アサノヨ国が危機に陥っているとしたら避難民の受け入れ位するという事か。
 ……でも、私は……。

「嫌です」
「ミア!?」

 慌てるお父様をよそに、私はベッドから立ち上がり軽く髪を整える。自分の服装を確認すれば、まだ学院の制服に身を包んでいた。
 せいぜい怪我人をベッドに運ぶのが精いっぱいな程、人手は足りていないのだろう。
 今となっては、好都合なのだけれど。

「待ちなさい!」

 扉に向かおうとした私の前に、お父様が立ちふさがった。

「ミア! どこへ行くの!?」

 一拍遅れて、私が出て行こうとした事に気が付いたお母様は、私の腕を掴んで問いただす。

「学院へ……ルイスの元へ行かせて下さい」
「危険だ!」
「それでも行きます」

 私の変わらない決意を前に、お父様は言葉に詰まり、お母様も顔を歪める。
 どのみち、このまま国が崩壊してしまえば先行きなんて分からないのだ。そもそも、命が助かるのかさえも分からない。
 ルイスの魔力を考えれば、このまま魔力暴走を続ければ……隣国まで確実に影響をくらうだろう。

「ルイスは……魔力に呑まれて正気を失っているんだぞ?」
「だからって、このまま見殺しには出来ません」
「ミア……魔力暴走が一体何なのか……分かっているのね?」

 力強く頷く。
 ゲームでは魔力暴走という言葉だけで終わっていたけれど、それは一体どういうものなのか、私はしっかり調べていた。
 流石、魔術家だけあって、しっかりと書物はあったのだから。

 ――魔力暴走、それは魔力にのまれ、正気を失い、体内に駆け巡る魔力が暴走し外へと放たれる事。

 身体中の魔力が底を尽きたとしても、生命を魔力に変えて暴走しつづける。そう、命尽きるまで……。
 だからこそ、止めたい、止めないといけない。
 ゲームのシナリオと完全に変わってしまっているとしても、ゲームではヒロインが止められていたのだから、何かしら方法はある筈だ。
 それに今は……。

「ルイスは、絶対に私を傷つけたりしない」
「ルイスは正気を失っているんだぞ!?」
「貴女まで失うなんて嫌よ!!」

 両親の悲痛な叫び。
 だけど私はしっかりと二人を見据える。
 心配する気持ちもわかる。だけど……。

「ルイスは私の婚約者……最愛の人です。止めさせて下さい」

 ハッキリと言い切った私に、驚きと喜びの表情が一瞬顔を出した後、……悲しむような表情を見せた両親だけれど、その後は覚悟を決めた顔になった。
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