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――ミアが落ち着いてから、また話をしよう。
そう区切りをつけて話は終わり、翌日からはいつも通りの日常だ。
いつも通り……とは、少し違うかもしれないけれど。
「ミアは……俺と結婚する事が嫌なのか……?」
学院へと向かう馬車の中で、ルイスがポツリと零した言葉に、私は急いで顔を上げた。
そこには悲しそうな顔をしたルイスが居て、反射的に声をあげた。
「嫌ではないよ!?」
そう、嫌ではない。
むしろ好きなのだ。大好きなのだ。
私にとっては何よりも、かけがえのない存在なのだから。
「……少なくとも、好かれていると思っていたんだけど……」
私を見る事もなく、窓の外に視線を向けるルイス。
その瞳に私が映らない事に、心が締め付けられる。
だって、違うの。私が好きかではなくて、ルイスの気持ちが……。
「付いたよ、義姉上」
胸が締め付けられていると、喉まで締め付けられているようで。
声を出そうと口を開いた瞬間、馬車は止まった。
ルイスは素早く馬車から下りると、いつものようにエスコートをしてくれたのだけれど、どこか他人行儀で。教室までの道のりでも、私達の距離が、いつもより離れているように感じた。
「義姉上、お昼はどこでとりますか?」
それでも変わらず、私の側に居てくれるルイス。
相変わらずヒロインの元へ行く様子もなく、私が学院を休んでいる間にヒロインと戯れていたという話も聞かないどころか、ルイスも学院へ来ていなかったようだ。
どうやら私が目覚めた日は、登城をしていたようで、一度きちんと話をした方が良いのかもしれないと覚悟を決めた。
「上級貴族のサロンが使えるかな? ……ちょっと話をしたいのだけれど」
「………………セフィーリオ公爵家専用のサロンがありますよ」
ルイスは瞳孔を見開いて、何故かショックを受けた顔をして間を開けたけれど、それも一瞬で。すぐにいつもの表情になった。
……セフィーリオ公爵家専用のサロンがあったのか。あそこら辺はヒロインとっ攻略対象者達が頻繁に出入りするから、近づく事すら嫌だったものな。
しかし、個室のような場所で誰にも聞かれず、ゆっくり話が出来る場所なんてサロン以外に思い浮かばない。
ルイスと共に教室のある建物から、食堂などの共同の場がある建物へ……そして、そこから解放廊下でサロン棟へと繋がる。
綺麗に整えられた庭園を横目にあるいて居れば、いきなり人影が道を塞いだ。
「どうなってんのよ! このクソアマ!!」
そう罵声を上げて、行く手を阻んだのはマリー・クレトン子爵令嬢。ヒロインだった。
そう区切りをつけて話は終わり、翌日からはいつも通りの日常だ。
いつも通り……とは、少し違うかもしれないけれど。
「ミアは……俺と結婚する事が嫌なのか……?」
学院へと向かう馬車の中で、ルイスがポツリと零した言葉に、私は急いで顔を上げた。
そこには悲しそうな顔をしたルイスが居て、反射的に声をあげた。
「嫌ではないよ!?」
そう、嫌ではない。
むしろ好きなのだ。大好きなのだ。
私にとっては何よりも、かけがえのない存在なのだから。
「……少なくとも、好かれていると思っていたんだけど……」
私を見る事もなく、窓の外に視線を向けるルイス。
その瞳に私が映らない事に、心が締め付けられる。
だって、違うの。私が好きかではなくて、ルイスの気持ちが……。
「付いたよ、義姉上」
胸が締め付けられていると、喉まで締め付けられているようで。
声を出そうと口を開いた瞬間、馬車は止まった。
ルイスは素早く馬車から下りると、いつものようにエスコートをしてくれたのだけれど、どこか他人行儀で。教室までの道のりでも、私達の距離が、いつもより離れているように感じた。
「義姉上、お昼はどこでとりますか?」
それでも変わらず、私の側に居てくれるルイス。
相変わらずヒロインの元へ行く様子もなく、私が学院を休んでいる間にヒロインと戯れていたという話も聞かないどころか、ルイスも学院へ来ていなかったようだ。
どうやら私が目覚めた日は、登城をしていたようで、一度きちんと話をした方が良いのかもしれないと覚悟を決めた。
「上級貴族のサロンが使えるかな? ……ちょっと話をしたいのだけれど」
「………………セフィーリオ公爵家専用のサロンがありますよ」
ルイスは瞳孔を見開いて、何故かショックを受けた顔をして間を開けたけれど、それも一瞬で。すぐにいつもの表情になった。
……セフィーリオ公爵家専用のサロンがあったのか。あそこら辺はヒロインとっ攻略対象者達が頻繁に出入りするから、近づく事すら嫌だったものな。
しかし、個室のような場所で誰にも聞かれず、ゆっくり話が出来る場所なんてサロン以外に思い浮かばない。
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