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「王弟殿下の許可はある」
「……」
そう言われたとしても、頷く事なんて出来ない。
外堀から埋めていかれているようで、そこに私やルイスの意思なんてない。
「あなたの性癖の問題もあるし……」
「……」
お母様が溜息をつきながら言うのだけれど、それに対して突っ込む気力もない。
ただ黙って唇を噛みしめて、俯きながら、膝の上で手を握り締める。
悔しい、悲しい。でも嬉しい。
自分でもわけが分からなくなるくらいに、色んな感情に支配されていて、もはや頭はパンク寸前だ。
「……ルイスが王族預かりになる話が出て来ているんだ」
お父様の言葉に顔をあげれば、その目は真剣だった。
本当の事なのかとルイスへも視線を向けるが、視線を反らされ、唇を噛みしめている。
「王位継承権を正式に授けるという。その為に、王族の教育を施すのだ」
「ルイスが……王宮へ移るという事ですか?」
誰も言葉を発せず、空間が静まりかえる。
つまりは、肯定ということだろう。
王族の教育を今から受けるとなれば時間が足りない。いくら公爵令息として生きて来たと言っても、国の中枢に関わるのだ。
それこそ寝る間も惜しむ事になるだろうから、王宮に住まいを移すだろう。というか、王位継承権が授けられるなら、身の安全の事を考えれば王宮に住むべきだ。
――遠い。
ルイスが、本当に遠い存在だという事を感じさせられる。
今こうやって公爵家に居る事が不思議なのだ。
「それに……許可というより、王弟殿下がルイスの婚約者にミアの名前を上げているんだ」
「!?」
何故!?
どうして!?
確かに身分的にも釣り合いは取れるだろうし、臣籍降下するのであればちょうどいい。
魔術公爵家として私は落ちこぼれでも、ルイスには最強魔術師が母で、その類稀なる魔術の力も受け継いでいる。
……問題はない、問題は全くないのだけれど。
「ふ……ぇ」
「ミア!?」
「ちょ……」
「義姉上!?」
ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
もう頭の中がいっぱいすぎて、訳が分からない。
王位継承権、ヒロインの事、公爵家の事。私自身の問題だけではないし、あまりにも多岐に渡りすぎている。
そして……私は、ルイスとただ一緒に居たいわけではない事が分かった。
――ルイスの心が欲しい。
愛し、愛されたいのだ。
今は家族のような愛情でも。
空気ではなく、奴隷でもなく……良い意味で、居て当たり前となりたい。居なくてはいけない存在になりたいのだ。お互いに。
こんな外堀を埋められた、ルイスとの政略的な結婚なんて出来ない。
「……」
そう言われたとしても、頷く事なんて出来ない。
外堀から埋めていかれているようで、そこに私やルイスの意思なんてない。
「あなたの性癖の問題もあるし……」
「……」
お母様が溜息をつきながら言うのだけれど、それに対して突っ込む気力もない。
ただ黙って唇を噛みしめて、俯きながら、膝の上で手を握り締める。
悔しい、悲しい。でも嬉しい。
自分でもわけが分からなくなるくらいに、色んな感情に支配されていて、もはや頭はパンク寸前だ。
「……ルイスが王族預かりになる話が出て来ているんだ」
お父様の言葉に顔をあげれば、その目は真剣だった。
本当の事なのかとルイスへも視線を向けるが、視線を反らされ、唇を噛みしめている。
「王位継承権を正式に授けるという。その為に、王族の教育を施すのだ」
「ルイスが……王宮へ移るという事ですか?」
誰も言葉を発せず、空間が静まりかえる。
つまりは、肯定ということだろう。
王族の教育を今から受けるとなれば時間が足りない。いくら公爵令息として生きて来たと言っても、国の中枢に関わるのだ。
それこそ寝る間も惜しむ事になるだろうから、王宮に住まいを移すだろう。というか、王位継承権が授けられるなら、身の安全の事を考えれば王宮に住むべきだ。
――遠い。
ルイスが、本当に遠い存在だという事を感じさせられる。
今こうやって公爵家に居る事が不思議なのだ。
「それに……許可というより、王弟殿下がルイスの婚約者にミアの名前を上げているんだ」
「!?」
何故!?
どうして!?
確かに身分的にも釣り合いは取れるだろうし、臣籍降下するのであればちょうどいい。
魔術公爵家として私は落ちこぼれでも、ルイスには最強魔術師が母で、その類稀なる魔術の力も受け継いでいる。
……問題はない、問題は全くないのだけれど。
「ふ……ぇ」
「ミア!?」
「ちょ……」
「義姉上!?」
ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
もう頭の中がいっぱいすぎて、訳が分からない。
王位継承権、ヒロインの事、公爵家の事。私自身の問題だけではないし、あまりにも多岐に渡りすぎている。
そして……私は、ルイスとただ一緒に居たいわけではない事が分かった。
――ルイスの心が欲しい。
愛し、愛されたいのだ。
今は家族のような愛情でも。
空気ではなく、奴隷でもなく……良い意味で、居て当たり前となりたい。居なくてはいけない存在になりたいのだ。お互いに。
こんな外堀を埋められた、ルイスとの政略的な結婚なんて出来ない。
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