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「それで……どういう事かな」

 食卓へ着き、食前の飲み物を口に含めば、前菜が届いたタイミングでお父様が切り出した。
 はっや! まだ前菜に口も付けてないのに!?
 なんて思いながらも、私はナイフとフォークを持って、食事を始める。
 両親には少し呆れた目線を送られたけれど、またもお腹が騒音を立てたら、たまったものではない。

「エザリオ・アサニヨ王弟殿下の子どもだっただけです」
「それが、どういう事なのよ! あなた?」

 ルイスも前菜に手をつけながら、何事でもないように言い放つ。
 けれど、その言葉に驚きを隠せないのはお母様だ。矛先はお父様に向いたけれども。

「いや、それは……だから言えなかったというか……」

 チラリとこちらを向いて、私の様子を伺うお父様。
 なんだろうと首を傾げていれば、ルイスが口を開いた。

「義姉上も全部知っていますよ」

 あぁ、そういう事か。
 私は口の中に物が詰まった状態で、首を縦に動かして肯定の意味を表現した。

「……私だけ……仲間外れ?」

 一瞬ポカンとしたお父様とお母様だったけれど、急にお母様が項垂れたかと思えば、悲し気な声で呟いた。
 あ、知らぬはお母様だけなのか。
 実の息子動揺に接し、ルイスの事も我が子同然に愛しているお母様にとっては辛いだろう。

「……義姉上と街歩きをしている時に、王弟殿下に会いまして……」

 慰めるように、ルイスが全てを話し始めた。
 そう、王弟殿下から聞いた事を一部始終。

「……そう……か」

 話を聞いたお父様は何か思う所があるのか、遠くを見ながら呟く。

「あなた、相違はないの?」

 お母様は驚きより納得の方が強いのか、驚き慌てるのはなくなり、落ち着いた眼差しでお父様へ問いかけた。
 エザリオ・アサニヨ王弟殿下と最強魔術師リリアック・セフィーリオ公爵令嬢との子ども。
 その二人を知っている人ならば、おかしいとすら思わないのだろう。
 ゆっくりと深く頷いたお父様は、真剣な表情でルイスを見た。

「学院では、王弟殿下の子という事まで言ったのか?」
「いえ。聞けば良いと匂わせただけです」
「……どうして、そんな事を言ったのだ……」

 不安そうに、悲しそうに、お父様は縋るように問いかけた。
 お母様も瞳を潤ませながらルイスを見つめる。けれど……。

「王太子殿下が義姉上をこの国から追い出そうとしたからですよ」
「何!?」
「何ですって!?」

 ルイスの言葉に、お父様とお母様はガタンッと椅子を鳴らして立ち上がる。
 その顔は先ほどまでとは一変して、怒りで真っ赤に染め上げている。
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