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「仮に王族だとしても、お前のように権力だけにしがみついて、笠に着るような真似はしない」

 冷たく……軽蔑を含んだ声色でヒロインに言葉を投げかける。
 あれ? 好感度は?
 これがイベント? まさかのツンからデレにいく?
 頭の中には疑問符がいっぱいだ。

「仮にもと言ったな! 所詮は嘘か!」

 意味の分からない事で、またふんぞり返る王太子殿下。その横では硬直しているヒロイン。
 コーランドだけが王太子殿下を宥めようとしているけれど……。

「全ては王弟殿下に聞けば良い。運が良ければ、まだ学院に居るだろう」
「王弟殿下!? セフィーリオ公爵令息……」

 コーランドは驚きの声を上げた後、顔を真っ青に染め上げた。
 そのふたつが示す王族の血筋に心当たりがあるのだろう。
 周囲を囲む生徒達の中にも、親世代から話を聞いているのか、俯いて真っ白な顔をしている人が数人だけ居た。
 ……そうか、理事長室に居たお客様って、王弟殿下か。
 きっとルイスの顔を見に来たのだろうな。
 親心なのだろうと、しみじみしていると、急に腰を引かれた。

「行こう、ミア。謝罪どころか冤罪をかけてくる奴等のところに連れてきて申し訳なかった……」
「え、いや、それは別に……!」

 いきなり話しかけられ、現実へと引き戻される。
 あれ? イベントは終わり?
 魔術で王太子殿下を殺しかけたりはしないの?
 そしてヒロインは??
 疑問に思う事が多々あり、ちらりとヒロインの方へと視線を向ければ、視線だけで人を殺せるような目でこちらを睨みつけていた。

「ミア。気にする必要はないよ」

 私の視線に気が付いたルイスは、腰から肩へと手を回し、前を向くようにと強く抱き寄せた。
 いや、でも……あれ?
 前世の記憶なんてあてにならない。ゲームの展開が分からない。
 こんな暴露の仕方で、ルイスは本当に良いのだろうか?
 チラリとルイスを見上げれば、厳しい目つきで凛々しさを醸し出している。
 うん、良い! イケる! これはイケる!
 心の中でガッツポーズをしていれば、ルイスが私の視線に気が付いて、安心させるような優しい微笑みを向けてくれた。
 もうご馳走様ですー!!
 最近、推し活ならぬ萌え活になっているのではないかと思いながらも、ルイスに連れられるまま邸へと帰った。





 噂が広がるのは早い。
 あれから直ぐに帰宅したけれど、その日の放課後には全校生徒の知る所となったそうだ。

 ――ルイスに王族の血が流れている。

 勿論、家に帰ってすぐ親へ報告している令息令嬢達も居るわけで……翌日には、全貴族が知っていると言って良い程だった。
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