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事実と冤罪を混ぜた痛恨の一撃!
挙句に軽蔑したような、汚物を見るような冷たく鋭い目線!
いくら攻略対象でも、ルイス以外からそんな眼差しを受けた所で萌えや推しなんて一切感じない。正直どうでも良い存在だけれど、そういう扱いをされると心を抉られる。
「はっ! そんな国にとって価値のない上、未来の王妃に対して不敬の数々。とっとと、この国から出ていけ!」
「……は?」
いきなり放たれた言葉に、素っ頓狂な声が口から漏れ出た。
え? 今、国外追放を言い渡された? 私が? 何故?
一応、私は落ちこぼれでも次期公爵なのだけれど?
一瞬にして思考が回ったと思えば、グイッと身体が引き寄せられ、目の前には見慣れた大きな背中があった。
「様子を見ていれば、勝手な事を」
ルイスの背中、ルイスの声。
何故かホッとして、今まで張っていた肩の力が抜けた。
「階段から突き落とした事を謝罪もせず、冤罪を擦り付けるのか」
「何だと!?」
「ちょ……ちょっとカイ!」
ガタリと椅子の鳴った音がして覗き込めば、険しい顔をした王太子殿下と、剣に手をかける騎士団長子息のルドルフ。嫌な顔をしている宰相子息のコーランド。
王太子殿下を止めようとしているヒロインに、それを宥めようとしている大商人子息のサイラス。
「頭が足りない王太子など、歴史上聞いた事がない。お前に国外追放の権限があるのか?」
「この……っ! 王太子に対して不敬にも程がある!」
一触即発の雰囲気。
これは……王太子殿下との喧嘩!? イベント!?
まさかのルイスルート!?
わくわくと心高鳴るのを抑え、すっと後方へ下がり、全体が見渡せるように横へとズレる。
折角のイベントだ。カメラはないにしても、しっかり視界と心に焼き付けないといけない。
王太子殿下を殺しかけたりする前に、止めに入れば良いだろう。
「王太子という権力を持つにふさわしい人柄を兼ね備えてから言え」
「貴様っ!」
「お……落ち着いて!」
必至に王太子殿下を宥めるヒロイン。
ここから、どう出る? どうなる?
期待の眼差しを込めてヒロインへと視線を向ければ、般若すら逃走するのではないかと言う程、怒りに表情を歪めたヒロインが私に向けて睨みつけて来た。
――え?
何故そんな怒っているのか分からず、首を傾げれば、ヒロインは更に顔を歪めた。
……まさか、ルイスルートではないとか?
そんな事が脳裏に過ったけれど、実際今は王太子殿下と喧嘩をしている。
ならば、これは何のイベントなのだろう?
「所詮はセフィーリオ公爵家の養子だろう! この無礼物を切り捨てろ!」
挙句に軽蔑したような、汚物を見るような冷たく鋭い目線!
いくら攻略対象でも、ルイス以外からそんな眼差しを受けた所で萌えや推しなんて一切感じない。正直どうでも良い存在だけれど、そういう扱いをされると心を抉られる。
「はっ! そんな国にとって価値のない上、未来の王妃に対して不敬の数々。とっとと、この国から出ていけ!」
「……は?」
いきなり放たれた言葉に、素っ頓狂な声が口から漏れ出た。
え? 今、国外追放を言い渡された? 私が? 何故?
一応、私は落ちこぼれでも次期公爵なのだけれど?
一瞬にして思考が回ったと思えば、グイッと身体が引き寄せられ、目の前には見慣れた大きな背中があった。
「様子を見ていれば、勝手な事を」
ルイスの背中、ルイスの声。
何故かホッとして、今まで張っていた肩の力が抜けた。
「階段から突き落とした事を謝罪もせず、冤罪を擦り付けるのか」
「何だと!?」
「ちょ……ちょっとカイ!」
ガタリと椅子の鳴った音がして覗き込めば、険しい顔をした王太子殿下と、剣に手をかける騎士団長子息のルドルフ。嫌な顔をしている宰相子息のコーランド。
王太子殿下を止めようとしているヒロインに、それを宥めようとしている大商人子息のサイラス。
「頭が足りない王太子など、歴史上聞いた事がない。お前に国外追放の権限があるのか?」
「この……っ! 王太子に対して不敬にも程がある!」
一触即発の雰囲気。
これは……王太子殿下との喧嘩!? イベント!?
まさかのルイスルート!?
わくわくと心高鳴るのを抑え、すっと後方へ下がり、全体が見渡せるように横へとズレる。
折角のイベントだ。カメラはないにしても、しっかり視界と心に焼き付けないといけない。
王太子殿下を殺しかけたりする前に、止めに入れば良いだろう。
「王太子という権力を持つにふさわしい人柄を兼ね備えてから言え」
「貴様っ!」
「お……落ち着いて!」
必至に王太子殿下を宥めるヒロイン。
ここから、どう出る? どうなる?
期待の眼差しを込めてヒロインへと視線を向ければ、般若すら逃走するのではないかと言う程、怒りに表情を歪めたヒロインが私に向けて睨みつけて来た。
――え?
何故そんな怒っているのか分からず、首を傾げれば、ヒロインは更に顔を歪めた。
……まさか、ルイスルートではないとか?
そんな事が脳裏に過ったけれど、実際今は王太子殿下と喧嘩をしている。
ならば、これは何のイベントなのだろう?
「所詮はセフィーリオ公爵家の養子だろう! この無礼物を切り捨てろ!」
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