【完結】悪役令息の義姉となりました

かずきりり

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「と……ところで王女殿下。何かお話があったのでは……?」

 悪意ある雑談の流れに居たたまれなくなった私が問いかければ、そうだったと言わんばかりの表情で、王女殿下はこちらを向いた。

「影を付けろという忠告を頂いたお礼に……注意を促したくてね」
「私……ですか?」

 いきなり注意と言われて、私は姿勢を正すのだけれど、王女殿下は一瞬チラリとルイスの方に視線を投げ、また私の方へと戻した。

「陛下は王太子殿下にも影を付けましたわ」
「えっ……」

 周囲に聞こえないよう、王女殿下は囁くように言うと、話は終わったと言わんばかりに立ち上がった。

「では、これで」

 驚く私をよそに、またもルイスに視線を投げた王女殿下。それに答えるように頷くルイス。
 わけもわからず、ポカンと口を開ける私。
 その場の流れに付いて行く事が出来ていない私を置き去りにするように、王女殿下達は去って行った。
 いや、ホントに貴族の遠回しな言い方って分からないんだけど!?

「えっと……?」

 答えを教えてもらおうとルイスへ視線を向けると、ジッと見つめ返される。
 その青い瞳に吸い込まれそうです! むしろ吸い込まれたい!

「義姉上は知らなくて良い事です」

 堪能していれば、まさかの言葉が降って来る。
 まぁ知らなくて良いのなら知りたくはないけれどね。それより別の事に脳を使いたい。
 ルイスの追っかけとか! 魔道具の開発とか! ルイスにバレないようにルイスグッズという名のルイスが使った物の収集とかね!
 ならば考えまいと思考を切り替えた私の肩を、ルイスがグッと寄せて来た。

「俺から離れなければ良いだけの話です」
「――っ!」

 ガシャンッ!

 ルイスにはヒロインとの愛を育てなくてはいけないでしょう! と、抗議の声を上げようとした瞬間、何かの割れる音が、すぐ隣で聞こえた。
 悲鳴と驚きの声が周囲から上がる。
 私も、音の正体へと目を向けようとしたのだけれど……。

「教室へ戻りましょうか」

 有無を言わさぬかのよう、ルイスに肩を抱かれて歩かされる。
 顔面蒼白な令息、涙目で悲鳴をあげる令嬢。
 ただならぬ雰囲気に狼狽えていれば、パリンッと、何かを踏みつけた気がして、視線だけを後方に向けた。

「え」

 小さく、声が漏れる。
 ルイスは構わず歩き続け、私の視界を戻すかのように肩を更に強く抱かれたけれど……私は見てしまった。
 先ほどまで、私が居た場所のすぐ隣に……否、ルイスが引き寄せてくれなかったら居ただろう場所に……。

 ――落とされたのだろう、割れた鉢植えがあるのを。
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