31 / 83
31
しおりを挟む
――もうすぐ重大なイベントなのに!
ヒロインの言葉が気にかかる。
邸に戻って来て、また学院へ行くという気にもなれず、私は中庭の東屋で考えこんでいた。
イベント……重大なイベント……。
ルイスに関わる事と言えば……。
「あっ」
小さく悲鳴が漏れ出て、私は手で口を被った。
思い出した! 王弟のイベントだ!
――ルイスは王弟殿下の子。
王弟殿下はルイスの存在を知り、調べて、自分の子どもだと知るのだ。
そして王弟殿下はルイスに会い、打ち明けるイベント!
ゲームでルイスは、自分に権力がある事を知って、更に傍若無人になるのだっけ。
ヒロインを監禁したり、王太子殿下に喧嘩を売って、魔術で王太子殿下を殺しかけたりするのだ。
じゃあ、そろそろ王弟殿下が接触してくる頃……?
「お嬢様、お茶のお代わりはいかがでしょうか」
「あ、頂くわ」
考えこんでいる私を見て、コランはちょうど良いタイミングでお茶のお代わりと、ちょっとしたお茶請けを差し出してくれる。
うん、頭を使ったら甘い物だよね。
しかし、ヒロインとの好感度は全くあがっていないし、ヒロインにくっ付いていないから、王太子殿下とも面識はない。
まぁ、あまりの傍若無人さと、権力に溺れ他者を傷つけるルイスをヒロインが見限るので、それがなくなるのは良い事だ。
「破滅させたくない……」
ヒロインに見限られた事で、どうしてもヒロインを手に入れる事が出来ないと悟ったルイスは……魔力暴走を起こして国を滅ぼしそうになる。
むしろ、ヒロインが手に入らないなら滅ぼそうとした、とも見えたのだけれど。
――だからこその悪役令息。
結局、ルイスはヒロイン達に捕らえられ、魔力を封じられて一生監禁される事になるのだ。
そして最後は……王弟殿下がルイスを哀れに思って殺して、自分も自害するのだけれど。
「ルイスの扱いが酷い」
私も含め、大多数の人が公式ブーイングを起こした程だ。
思い出すだけで腸が煮えくり返る!
「俺がどうかしましたか?」
「うっひゃぁ!?」
ルイスの声が背後から聞こえ、私は心臓が喉から飛び出るのではないかと思える程、鼓動を跳ねあがらせた。
うん、心臓に悪い! 絶対、血圧上がった!
「ど……どどど……どうしたの!?」
ルイスの質問に答える余裕もなく、私は口から質問を吐き出して返した。
「まだ日も高いですし……お昼を食べる為にも王都へ下りませんか? デートしましょう」
「デート!?」
何を言ってるんですかルイス様は! 滅相もない!
ぐぅう~~。
そう返そうと思ったのに、私のお腹は正直者だった。
「なら、決まりですね」
にこやかなルイスに逆らえるわけもなく、食という欲望に抗えるわけもなく。
私はルイスとデートに出かける事となった。
ヒロインの言葉が気にかかる。
邸に戻って来て、また学院へ行くという気にもなれず、私は中庭の東屋で考えこんでいた。
イベント……重大なイベント……。
ルイスに関わる事と言えば……。
「あっ」
小さく悲鳴が漏れ出て、私は手で口を被った。
思い出した! 王弟のイベントだ!
――ルイスは王弟殿下の子。
王弟殿下はルイスの存在を知り、調べて、自分の子どもだと知るのだ。
そして王弟殿下はルイスに会い、打ち明けるイベント!
ゲームでルイスは、自分に権力がある事を知って、更に傍若無人になるのだっけ。
ヒロインを監禁したり、王太子殿下に喧嘩を売って、魔術で王太子殿下を殺しかけたりするのだ。
じゃあ、そろそろ王弟殿下が接触してくる頃……?
「お嬢様、お茶のお代わりはいかがでしょうか」
「あ、頂くわ」
考えこんでいる私を見て、コランはちょうど良いタイミングでお茶のお代わりと、ちょっとしたお茶請けを差し出してくれる。
うん、頭を使ったら甘い物だよね。
しかし、ヒロインとの好感度は全くあがっていないし、ヒロインにくっ付いていないから、王太子殿下とも面識はない。
まぁ、あまりの傍若無人さと、権力に溺れ他者を傷つけるルイスをヒロインが見限るので、それがなくなるのは良い事だ。
「破滅させたくない……」
ヒロインに見限られた事で、どうしてもヒロインを手に入れる事が出来ないと悟ったルイスは……魔力暴走を起こして国を滅ぼしそうになる。
むしろ、ヒロインが手に入らないなら滅ぼそうとした、とも見えたのだけれど。
――だからこその悪役令息。
結局、ルイスはヒロイン達に捕らえられ、魔力を封じられて一生監禁される事になるのだ。
そして最後は……王弟殿下がルイスを哀れに思って殺して、自分も自害するのだけれど。
「ルイスの扱いが酷い」
私も含め、大多数の人が公式ブーイングを起こした程だ。
思い出すだけで腸が煮えくり返る!
「俺がどうかしましたか?」
「うっひゃぁ!?」
ルイスの声が背後から聞こえ、私は心臓が喉から飛び出るのではないかと思える程、鼓動を跳ねあがらせた。
うん、心臓に悪い! 絶対、血圧上がった!
「ど……どどど……どうしたの!?」
ルイスの質問に答える余裕もなく、私は口から質問を吐き出して返した。
「まだ日も高いですし……お昼を食べる為にも王都へ下りませんか? デートしましょう」
「デート!?」
何を言ってるんですかルイス様は! 滅相もない!
ぐぅう~~。
そう返そうと思ったのに、私のお腹は正直者だった。
「なら、決まりですね」
にこやかなルイスに逆らえるわけもなく、食という欲望に抗えるわけもなく。
私はルイスとデートに出かける事となった。
1,053
お気に入りに追加
1,876
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
私を虐げた人には絶望を ~貧乏令嬢は悪魔と呼ばれる侯爵様と契約結婚する~
香木あかり
恋愛
「あなた達の絶望を侯爵様に捧げる契約なの。だから……悪く思わないでね?」
貧乏な子爵家に生まれたカレン・リドリーは、家族から虐げられ、使用人のように働かされていた。
カレンはリドリー家から脱出して平民として生きるため、就職先を探し始めるが、令嬢である彼女の就職活動は難航してしまう。
ある時、不思議な少年ティルからモルザン侯爵家で働くようにスカウトされ、モルザン家に連れていかれるが……
「変わった人間だな。悪魔を前にして驚きもしないとは」
クラウス・モルザンは「悪魔の侯爵」と呼ばれていたが、本当に悪魔だったのだ。
負の感情を糧として生きているクラウスは、社交界での負の感情を摂取するために優秀な侯爵を演じていた。
カレンと契約結婚することになったクラウスは、彼女の家族に目をつける。
そしてクラウスはカレンの家族を絶望させて糧とするため、動き出すのだった。
「お前を虐げていた者たちに絶望を」
※念のためのR-15です
※他サイトでも掲載中
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?
紫楼
ファンタジー
5歳の時、自分が乙女ゲームの世界に転生してることに気がついた。
やり込んだゲームじゃ無いっぽいから最初は焦った。
悪役令嬢とかヒロインなんてめんどくさいから嫌〜!
でも名前が記憶にないキャラだからきっとお取り巻きとかちょい役なはず。
成長して学園に通うようになってヒロインと悪役令嬢と王子様たち逆ハーレム要員を発見!
絶対お近づきになりたくない。
気がついたんだけど、私名前すら出てなかった背景に描かれていたモブ中のモブじゃん。
普通に何もしなければモブ人生満喫出来そう〜。
ブラコンとシスコンの二人の物語。
偏った価値観の世界です。
戦闘シーン、流血描写、死の場面も出ます。
主筋は冒険者のお話では無いので戦闘シーンはあっさり、流し気味です。
ふんわり設定、見切り発車です。
カクヨム様にも掲載しています。
24話まで少し改稿、誤字修正しました。
大筋は変わってませんので読み返されなくとも大丈夫なはず。
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる