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 まさかのご褒美!? こんな状態で!?
 出来れば前世の名前でもお願いしますー! ……あ、もう覚えてないや。

「な……虐められて孤独で、一人寂しく過ごしてきたくせに! 一体何なわけ!?」
「何言ってるんだ……?」

 ヒロインがヒステリックに喚くのを、眉を顰めて、心底意味が分からないと言った様子でルイスが答える。
 周囲の人達も、首を傾げて、頭の上に疑問符を掲げているようだ。

「散々、虐められてきていたでしょう!?」
「どんな妄想ですか。頭おかしいのでは?」

 確かに、ゲームルートではそうだったかもしれない。……現実は違うのだけれど。
 ルイスは養子であっても、公爵家の大事な子として認識されているのだ。
 変な事を言おうものなら、お父様が黙っていないし、私達は幼い頃から仲良しである事も周知の事実である。
 
「妄想癖?」
「頭大丈夫かしら」
「夢の中で生きているとか?」
「貴族の生活に馴染めなくて、錯乱でもしたのか」

 ひそひそと、周囲の囁く声が耳に聞こえたのか、ヒロインは周りをキョロキョロと見回した後、震え出した。

「いい加減にしてもらえますか? いい加減、もう目の前から消えて下さい」

 静かな怒りを携えるルイス。
 おぉお……悪役令息っぽい。ビデオカメラはどこですかー!?
 これ、魔力が見えたりしていたら、オーラのような感じで見えたりしていたのかな!? 魔力が見える道具を開発とかしたいー!
 一人勝手な妄想を心の中で繰り広げ、わくわくしていれば、ヒロインはキッと怒った視線をこちらに向けるように顔をあげた。

「……もうすぐ重大なイベントなのに! もういい!」

 踵を返し、その場から逃げ出すように駆け出すヒロイン。
 まさに子悪党が捨て台詞を吐いて逃げていくようだ。いやヒロインだよね!?

「……まともではないですね」

 ルイスの感想に、周囲の貴族達は深く頷いた。
 うん、これ、何もしなくてもヒロイン孤独コースにならないかな?
 というか……ルイスは、ヒロインと恋に落ちないの?
 ルイスの心を救ったヒロイン。何よりもヒロインの側に居たルイス。

「……私が余計な事しちゃったせいかな……」

 ゲームと違う環境を作り出した、そのせいで。
 ルイスは愛するという事を知らないままになってしまうのかもしれない。

「ミアは余計な事など、何もしていません」

 呟いた言葉は、しっかりとルイスの耳に届いており、ルイスは真剣な瞳で私を庇ってくれた。
 ……けれど。

「……とりあえず、お風呂入りに帰ろうか、ルイス。私も一緒に帰るから」
「……ですね」

 まずは匂いをどうにかしなくては。
 例え授業を欠席する事になっても。
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