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 攻略対象者は、カイファレス・アサニヨ王太子殿下。
 武術公爵家で、騎士団長子息のルドルフ・アールトン公爵令息。
 文術公爵家で、宰相子息のコーランド・ファミリア公爵令息。
 この三人は同じクラスだから、ヒロインに対して変な事をしない方が良い。
 と言っても、出会いイベントとか終わらせたのか分からない……どころか、いつそのイベントが起こるのか覚えてないけど。
 ルイスしか見てなかったし。
 画面の端に映っているルイスに釘付けで、会話なんて思いっきり読み飛ばしていた。
 せめて端でも良いから色んなルイスが見たくて、全ルート攻略したのにね!
 そして、最後の一人、子爵を金で買った大商人の息子、サイラス・ミルド子爵令息。
 この人はヒロインと同じクラスだから……攻略は簡単だった筈だけれど。

「きゃああ!?」
「なんだ、これは!」

 移動教室から戻ってみれば、またも教室へ入って行った令息や令嬢達がざわついている。
 ルイスが私の前に半歩出て、先に教室の様子を除いて息を飲んだ。
 今度は何だろうと、ルイスの脇から教室の中を覗けば、またしても人が集まっているのは私の机。
 そして……机の上には破られたノートや教科書があり、周囲には紙の破片が散らばっている。

「……掃除……」
「義姉上がやる事ではありません!」

 ルイスの横から自分の席へ向かおうとすれば、ルイスに止められた。

「でも、紙が落ちていたら、踏んだ時に滑りやすいし。それで転ぶのは御免こうむるわ。可能性が高いのは、その席に座る私でしょう?」

 むしろ、そんな事は恥ずかしすぎる。
 原因となるものは排除したい。
 私の言葉に、返す言葉が見つからなかったルイスは、溜息を吐きながら紙の破片を拾い集める。
 私も拾い集めようと、しゃがむために膝を曲げれば、ルイスから手で制された。

「スカートが汚れます。ここは俺がやりますので」
「ルイス……っ」

 神々しささえ感じるルイス。もはやイケメン! いや、知ってる! 既にそうだった!

「……拾った紙は、捨てないでちょうだい」
「……どうするんですか?」

 首を傾げながら、拾った紙を私に渡してくれるルイス。
 そんなの! 今日の思い出としてノートに貼るのだ!
 カメラがないのであれば、記憶を引き出せるものとして全て日記に書き、その物は貼り付ける!
 ルイスが拾い集めたなんて、それだけでもう宝じゃないか……。

「新しい教科書やノートが必要ですね」
「うん、ノートはたくさん必要だね」
「また破られる気ですか?」
「それはそれで……」

 宝物が増えるだけ。
 そして、それを貼る為にも、ノートは沢山必要なのだ!
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