18 / 49
18
しおりを挟む
――ヒロイン。マリー・クレトン子爵令嬢。
乙女ゲームにありがちな愛人の子で、ずっと平民として生きてきたのだけれど、つい最近子爵家へと引き取られた。
ヒロインにありがちな、ピンクの髪に金の瞳。
天真爛漫で純粋な性格。
私のような邪な奴とは正反対なのだ。
「お嬢様! もう少し顔を上げて下さい!」
「この色に合わせた髪飾りは?」
「お嬢様、どちらの靴を合わせましょうか?」
黄昏て考える時間なんてない。
今は慌ただしい入学パーティへの準備中だ。
当日になってヒロインの存在に心痛むのは、ルイスとの婚約が見事整ってしまったからだろう。
推しが手に入る……いや、身に余り過ぎる事でしょう! 恐れ多いわ!
今日の為に用意したドレスだって、ルイスの瞳に合わせた青と銀の刺繍。ルイスの衣装も私の瞳に合わせた紫と銀の刺繍だ。
更には、ルイスのエスコートで入場する事になっている。
「あぁああああ!!」
「お嬢様! 頭を動かさない!」
両手で顔を覆って俯いた私に、侍女達は問答無用で頭を上げさせた。
私は悶絶する時間もないのか!
――ルイスは、愛を知らず、感情を殺し育つ。
周囲を恨み、呪うようになり、よく喧嘩もしていたのだ。
だけれど、今のルイスはどうだ。
「出来ました!」
「義姉上」
ノックの音と共に、ルイスの声が響き、扉が開かれる。
もう、パーティへ行く時間なのだろうか。ナイスタイミングで支度を終えた侍女達が、ほっと息を吐いている。
ルイスの姿、立ち振る舞い。全てがもう公爵令息として、しっかり教育を受けている。
「義姉上、綺麗です。とても似合っています」
「ルイスありがとう最高ですごちそうさまです!」
推しからの誉め言葉に、はにかんだ笑顔!
もう、それだけでお腹いっぱいです! 心残りなどありません! 否、あった。
これからルイスはヒロインと出会い、愛を知るのだ。
本来であれば、ヒロインが攻略対象と良い感じになろうとすれば邪魔をするのだけれど……今のルイスならば正々堂々と真正面から戦って愛を勝ち取るだろう。
「義姉上をエスコート出来る名誉をいただけて光栄です」
ルイスから差し伸べられる手。
いや、ヒロインがルイスに惚れないわけがない! だってこんなに良い男なんだよ!?
ドキドキと痛む程に高鳴る心臓が口から飛び出てしまいそうだ。きっと今、私の血圧は測定不可だろう。
意識を何とか保ち、ルイスの手に自分の手をのせれば、ルイスが安堵したように微笑む。
あぁもう、なんてご褒美なんですかー!?
いつ鼻血が出ても良いように、私は扇で鼻から口元まで隠しながら、馬車に乗って入学パーティの場となる学院へと向かった。
乙女ゲームにありがちな愛人の子で、ずっと平民として生きてきたのだけれど、つい最近子爵家へと引き取られた。
ヒロインにありがちな、ピンクの髪に金の瞳。
天真爛漫で純粋な性格。
私のような邪な奴とは正反対なのだ。
「お嬢様! もう少し顔を上げて下さい!」
「この色に合わせた髪飾りは?」
「お嬢様、どちらの靴を合わせましょうか?」
黄昏て考える時間なんてない。
今は慌ただしい入学パーティへの準備中だ。
当日になってヒロインの存在に心痛むのは、ルイスとの婚約が見事整ってしまったからだろう。
推しが手に入る……いや、身に余り過ぎる事でしょう! 恐れ多いわ!
今日の為に用意したドレスだって、ルイスの瞳に合わせた青と銀の刺繍。ルイスの衣装も私の瞳に合わせた紫と銀の刺繍だ。
更には、ルイスのエスコートで入場する事になっている。
「あぁああああ!!」
「お嬢様! 頭を動かさない!」
両手で顔を覆って俯いた私に、侍女達は問答無用で頭を上げさせた。
私は悶絶する時間もないのか!
――ルイスは、愛を知らず、感情を殺し育つ。
周囲を恨み、呪うようになり、よく喧嘩もしていたのだ。
だけれど、今のルイスはどうだ。
「出来ました!」
「義姉上」
ノックの音と共に、ルイスの声が響き、扉が開かれる。
もう、パーティへ行く時間なのだろうか。ナイスタイミングで支度を終えた侍女達が、ほっと息を吐いている。
ルイスの姿、立ち振る舞い。全てがもう公爵令息として、しっかり教育を受けている。
「義姉上、綺麗です。とても似合っています」
「ルイスありがとう最高ですごちそうさまです!」
推しからの誉め言葉に、はにかんだ笑顔!
もう、それだけでお腹いっぱいです! 心残りなどありません! 否、あった。
これからルイスはヒロインと出会い、愛を知るのだ。
本来であれば、ヒロインが攻略対象と良い感じになろうとすれば邪魔をするのだけれど……今のルイスならば正々堂々と真正面から戦って愛を勝ち取るだろう。
「義姉上をエスコート出来る名誉をいただけて光栄です」
ルイスから差し伸べられる手。
いや、ヒロインがルイスに惚れないわけがない! だってこんなに良い男なんだよ!?
ドキドキと痛む程に高鳴る心臓が口から飛び出てしまいそうだ。きっと今、私の血圧は測定不可だろう。
意識を何とか保ち、ルイスの手に自分の手をのせれば、ルイスが安堵したように微笑む。
あぁもう、なんてご褒美なんですかー!?
いつ鼻血が出ても良いように、私は扇で鼻から口元まで隠しながら、馬車に乗って入学パーティの場となる学院へと向かった。
応援ありがとうございます!
870
お気に入りに追加
1,901
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる