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「ルイスー! こっち!」
「ミア、お父様が寂しそうな顔をしていますよ?」

 穏やかな午後の日、私達四人は、中庭にある東屋でお茶会をしようとなったのだ。
 ルイスとお父様が二人並んで東屋へと来てくれた事で安堵した私は、嬉しくてルイスの名を呼べば、目に見えて分かるようにお父様がしょげた。

「お父様にはお母様が居るではないですか」
「妻と娘では立場が違うのです」

 窘めるようにお母様は言うけれど、私にだって推しと父は違うのだ!

「子どもは子ども同士仲良く楽しく遊ぶのです!」
「……ルイス、ミアを頼みますよ? 貴方の方がしっかりしていますので」

 おかしい。
 生きて来た年数は私の方が前世を合わせて長いのに。
 だけれど、推しがこうやって認められるのは私が認められる以上に嬉しい!

「え……あの……」

 狼狽えて言葉が出ないルイスも可愛い!
 今まで顔を合わせる事すら避けていた義父と、冷たい眼差しを投げかける事しかしなかった義母の態度が変わったのだから、困惑するのは当たり前だろう。

「ごめんなさいね、ルイス」
「すまなかった」

 ルイスの様子から、申し訳なさの気持ちが出たのだろう。
 両親は謝罪の言葉を口にしたのだけれど、それに対してルイスが慌て出した。

「いや、あの! 大丈夫ですから!」

 少し前まで平民をしていたのに、公爵夫妻に謝罪されるなんて、それこそ生きた心地がしないだろう。

「もー! お父様、お母様! ルイスが怖がってますよ!」

 私はルイスを守るよう、ギュっと抱きしめる。
 むしろ、どさくさに紛れて推しを堪能する権利を行使しました! うん、柔らかい。良い匂いする。最高!
 このまま、弄りたい気持ちを必死に理性で押さえ、触れる温かさをしっかり堪能する。

「そうだな……これから、ゆっくり新しい家族の形を作って行こう……」
「そうね……。どう接して良いか分からず、時間がかかってごめんなさいね。それはルイスも同じだったというのに」

 困ったように微笑む二人に、ルイスの肩から力が抜けた。

「……はい」

 小さく、ルイスの頷く声が聞こえ、両親の顔に笑顔が浮かぶ。
 あぁ、もうルイスは天使か何かなのだろうか! こんな一気に場を和ませて笑顔を浮かべさせられるなんて!
 更にギュっと握り締め、ルイスにスリスリしていれば、お母様の目が冷たく射貫く。

「……ミア? 淑女らしくないわよ……?」
「だって、ルイスが可愛くて!」
「貴族教育と淑女教育を一から施し直さねばいけないかしら」
「外ではしません!」
「ミア!? 外でしたらお父さん泣くよ!?」

 皆の笑い声が庭園に響く。
 これでルイスが穏やかに過ごせるのなら、それは私の幸せなのだ。
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