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「おはようございます!」

 翌朝、ルイスに会えるという嬉しさからダイニングへと行けば、シーンとした重苦しい空気に包まれており、思わず半歩後ずさる。

「……おはよう、ミア」
「……おはよう……」
「……おはようございます」

 冷たい眼差しでお父様を睨みつけるお母様。
 お母様の態度に傷つき落ち込むお父様。
 そんな空気に少し戸惑っている様子のルイス。
 うん! ルイスが愛しい!

「ルイス、看病ありがとうね!」

 ルイスの方へ駆け寄り、私が満面の笑みでお礼を言えば、ルイスは少し恥ずかしそうに俯いた。
 可愛い~!
 顔がにやけるのを何とか押しとどめて、ルイスの隣に座る。
 上座に座るお父様は様子を伺うように、私の正面に座っているお母様は、私に対して少し睨みつけるように表情を一瞬だけ変えた。

 ――本来なら、私もルイスに対して冷たい態度をとっていたんだよなぁ。

 他人事のように考えてしまうのは、やはり前世の記憶が戻ったからだろう。
 ミア・セフィーリオは、ルイスの事を父の隠し子だと思っていた。しかも自分と同じ歳なのだ。ミアはルイスだけでなく父親も嫌いになっていたのがゲームの設定だ。
 母もルイスの事を父と愛人の子だと思い込み、ルイスに冷たく接し、父とは険悪な空気になる。
 そんな状況にも関わらず、ルイスの事を説明できない父は静観するだけだし、ルイスに対してもどう扱って良いのか分からず距離を置くのだ。更にはお父様の場合、姉であるリリアック・セフィーリオに対して申し訳なさや負い目もあったから、というのもあるだろう。
 魔術公爵家なのに、実力があるリリアックではなく、男という理由で跡継ぎとなったのだから。

 ――そんなこんなで、セフィーリオ家の家族仲は最悪なのだ。

 といっても、それはゲームの中だけの話だ。私は違う。

「ルイス! これ美味しいよ!」
「え……あ……」
「テーブルマナーなんて後から覚えれば良いんだから! うちの料理人の腕は確かだよ!」

 戸惑うルイスに関係なく、私は話かける。
 平民として育って……そして、母親が儚くなってから今日まで、ろくな生活をしていないだろう。
 おせっかいおばさんと言っても過言ではないが、それでもルイスには健康で居てもらいたい。
 だって推しなのだから!

「いっぱい食べて! これあげる!」
「あ……」

 両親の様子なんて全く関係ない私は、ただ甲斐甲斐しくルイスの世話を焼くのだけれど、緊張からかルイスの手は進まない。

「はい、あーん」
「ミア!? はしたない!」

 一口も食べないルイスに、自分のフォークを差し出せば、お母様から制止が入った。
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