【完結】婚約破棄は受けますが、妹との結婚は無理ですよ

かずきりり

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09.カミナSide

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——カミナ・パーリティと婚約している——

その言葉と共に会場で耳に不快感しか残さないような汚い絶叫が聞こえた。どういう事だと騒ぎ立て、壇上に詰め寄ろうとして兵に阻まれている。
視界にも入れたくない私はアドルを見ると、アドルも何事もなかったかのように伝える。
自分が恋焦がれた私と婚約していた事、良いタイミングでライズ様が長年の片思いを実らせてお姉様と婚約できた事。おかげでパーリティ伯爵の後継問題も解決したこと。周囲はおめでとうございますという声と共に盛大な拍手で迎えてくれる。
良いタイミング……まぁ、あのクズ男の事だし、パーリティ伯爵家の後継も決まってはいた事だけれど、グダグダと周囲に言われるような結果にならなくて済んだ事に安心した。長年の片思いと言えば、ライズ様を狙っていた令嬢達も肩を落としつつ、だから婚約者をずっと作らなかったのかと納得している。

嘘だ!
だってカミナは!
どういう事だ!ルミナ!!
騙したのか!!

意味不明な罵声が耳障りだと視線を向けると、お姉様に向かって突進していくクズが見えたが……予想通りライズ様が守ってくれた。
ここまでくれば、不敬が適応されるわよね、と心が弾む。嬉しくて震える私は、表情まで崩れているのを自覚して俯きながら、そっとアドルの袖を掴む。そんな私を知ってか、アドルが両親へと目を向けると、国王と王妃までもが小さく頷いてくれた。

「サルム・ガーリィ!どこまで王族に不敬を働けば気が済むのだ!!」

既にガーリィ侯爵は項垂れ、息子をかばう事すらしない。当の本人は、アドルの叫びに顔面蒼白となって振り返った。違う、とでも言っているのか、小さく首を左右に振っているのを、ライズ様が何か叱責したようで、その場に崩れ落ちた。
そのまま兵に連れられて退場していくのを視界の隅で眺めた後、アドルにだけ聞こえるような声で小さく笑いながら、言葉を紡ぐ。

「これでお姉様が幸せで、私もお姉様と一緒に居られるのね」
「ライズならば、ルミナ譲の意思を優先するだろう」
「お姉様が私を無碍にする事はありえません」

美しく心優しい大好きなお姉様。
あんな男が婚約者になった時は本当に父を拷問したくなったけれど、あの男が馬鹿だったおかげで私の望む通りに事が運んだと思えば、この後に起こるお仕置きは特別な物にしてあげても良いかなと思う。
壇上から、頬を赤らめてライズ様と語り合うお姉様を見ながら、私はお姉様との笑顔あふれる明るい幸せな未来を描きながら

——新しく得た拷問方法を試す事に心弾ませていた——
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