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03.ルミナSide
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「カミナ……」
「あっ!」
やってしまった、と言わんばかりにカミナはドレスの裾を直すも、起こってしまった事は消えない。目の前には口から泡をふいて倒れているサルム様。
唯一運が良かったとしたら、お茶会に参加している方々へ私が背を向けていたのもあり、上手く視界を遮っているだろう立ち位置に居た事で、カミナが男性の急所を蹴り上げたという醜聞が周囲に目撃されていない事だろう。
どうされたの?いきなりガーリィ侯爵令息が倒れましたわ。なんて言葉が聞こえるのが証拠だろう。
しかしながら、ここからどうしたら良いのだろうとグルグルと頭を働かせるも、何も思い浮かばない。
「どうした」
「アドル殿下!」
その場に現れたのは、第二王子のアドル・ロージアム殿下だった。カミナは殿下の名前を呼んで駆け寄ると、コソッと何かを呟いた後に助けて下さい!と周囲に聞こえるような声を出した。
あの子は……そう思い、心の中でため息をついた。
アドル殿下は視線を素早く動かし周囲を確認すると口を開いた。
「ルミナ伯爵令嬢、これは一体?」
「それが……サルム様がいきなり倒れ……」
「それはいけないな!誰か王宮医のところへ運んでやってくれ!」
適当にやり過ごす言葉を伝えようとしたが、特に最後まで聞く事もなくアドル殿下は周囲に居た騎士達に声をかけた。
「カミナ嬢……」
「ありがとうございます殿下!私も貧血で少し倒れ込んでしまい汚れてしまったので、ここで失礼させていただきますわ!」
何かを求めるようにカミラに声をかけたアドル殿下へ、満面の笑みで帰る、という言葉を伝えると私の手をとって歩き出した。
「さぁ、帰りましょう、お姉さま」
「えっと……カミナ?」
捨てられた子犬のようにカミナを見つめるアドル殿下に見向きもせず、カミナは歩みを進める。
公にされていないけれど、二人は婚約者だったりするのだ。公に出来ないのにも色々理由はあるのだけれど……
「ふふっ……お姉さまと婚約破棄ですって?あのクズが……とっとと帰って愛読書をじっくり読み込みましょう……」
「カミナ……令嬢がすべき事ではないわよ?」
「心配しないで下さい!大丈夫ですよ!証拠は残しません!」
「そういうわけではありません」
「うまくアドルを使います!」
「それはいけません」
花が咲いたかのようなカミナの微笑みに、強く怒る事が出来ない自分に失笑しながらも、まぁ良いかと思ってしまう。
アドル殿下が側に居てくれるのならば、何とかしてくれるでしょう。
例えカミナの愛読書が『世界の拷問大全』であったとしても——
「あっ!」
やってしまった、と言わんばかりにカミナはドレスの裾を直すも、起こってしまった事は消えない。目の前には口から泡をふいて倒れているサルム様。
唯一運が良かったとしたら、お茶会に参加している方々へ私が背を向けていたのもあり、上手く視界を遮っているだろう立ち位置に居た事で、カミナが男性の急所を蹴り上げたという醜聞が周囲に目撃されていない事だろう。
どうされたの?いきなりガーリィ侯爵令息が倒れましたわ。なんて言葉が聞こえるのが証拠だろう。
しかしながら、ここからどうしたら良いのだろうとグルグルと頭を働かせるも、何も思い浮かばない。
「どうした」
「アドル殿下!」
その場に現れたのは、第二王子のアドル・ロージアム殿下だった。カミナは殿下の名前を呼んで駆け寄ると、コソッと何かを呟いた後に助けて下さい!と周囲に聞こえるような声を出した。
あの子は……そう思い、心の中でため息をついた。
アドル殿下は視線を素早く動かし周囲を確認すると口を開いた。
「ルミナ伯爵令嬢、これは一体?」
「それが……サルム様がいきなり倒れ……」
「それはいけないな!誰か王宮医のところへ運んでやってくれ!」
適当にやり過ごす言葉を伝えようとしたが、特に最後まで聞く事もなくアドル殿下は周囲に居た騎士達に声をかけた。
「カミナ嬢……」
「ありがとうございます殿下!私も貧血で少し倒れ込んでしまい汚れてしまったので、ここで失礼させていただきますわ!」
何かを求めるようにカミラに声をかけたアドル殿下へ、満面の笑みで帰る、という言葉を伝えると私の手をとって歩き出した。
「さぁ、帰りましょう、お姉さま」
「えっと……カミナ?」
捨てられた子犬のようにカミナを見つめるアドル殿下に見向きもせず、カミナは歩みを進める。
公にされていないけれど、二人は婚約者だったりするのだ。公に出来ないのにも色々理由はあるのだけれど……
「ふふっ……お姉さまと婚約破棄ですって?あのクズが……とっとと帰って愛読書をじっくり読み込みましょう……」
「カミナ……令嬢がすべき事ではないわよ?」
「心配しないで下さい!大丈夫ですよ!証拠は残しません!」
「そういうわけではありません」
「うまくアドルを使います!」
「それはいけません」
花が咲いたかのようなカミナの微笑みに、強く怒る事が出来ない自分に失笑しながらも、まぁ良いかと思ってしまう。
アドル殿下が側に居てくれるのならば、何とかしてくれるでしょう。
例えカミナの愛読書が『世界の拷問大全』であったとしても——
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