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46.それから
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「本当、大変な目にあった……」
そんな事を言いながら机に突っ伏している王太子殿下だが、意外と平気そうにしているのは、肝が据わっているのだろうか。
「あの絶対防御は凄かったな!流石魔王だ!……その後、揺れまくるのはいただけなかったが……」
思い出して興奮気味に言っていた王太子殿下は、後半、どこか遠い目をしながら呟いた。
ジャンは、視線をあたしに向けて何か言いたげにしているし、レオンは吹き出していた。……まぁ、そりゃそれを武器にしたわけだしね。
「ありがとうございます……?」
あたし達にも慣れてきたのか、ユーリィが気絶する事もなく、紅茶を片手に王太子殿下へ小首をかしげながら言った。その膝には、傷ついていたのを助けたというリスをハンカチの上にのせている。相変わらずの優しさだ。
あれから、大神官と聖女を拘束し、共に全てを見ていた王太子殿下により全てを白日の下へ晒された。教会に関しては各国を統括している大本へ苦情を申し入れたのだが……魔王が善人すぎる気弱な人である事、そして魔人を召喚したのが大神官という点で、民衆達から大反発をくらった。
例え、今まで信仰深く生きて来た人でも、今回の件は信仰心を継続できるものではなかったのだろう。まだ、王太子殿下の方を疑心暗鬼に思う人も中には居るらしいが、各国の王族が出した真実に、嘘だろう!と面と向かって言う勇気はないといったところか。
たった一人の神官による悪事で、教会の威信は地に落ちた。
ちなみに、新しく神官達が派遣されてきて、あたし達は念の為にと鑑定をしてもらったのだが……ロアナは聖女で間違いないし、あたしは勇者だ。ジャンやレオンも同じく、賢者と聖騎士で……ユーリィも魔王だった。
あくまで、適正職業は適正職業であって、そこに基づく何かがあるのではないか。
そんな予測と共に、教会はこれから追及していくそうだ。……そりゃ魔王が存在していても、王都で民の暮らしは変わらないし、作物の育ちが悪くなるわけでもなく、自然災害に侵される事もないのだから。あたし達が生きていく上で、全く問題ない存在と言える。
「そういえば、絶対防御って、あの形でしか無理なわけ?武器にならない形には出来ないの?」
「……どうだろう?試してみた事はない」
唐突に放ったジャンの言葉に、ユーリィがあの時を思い出したように、少し青ざめて答える。
「え!?じゃあ防具みたいなの作れない!?防御の軽いやつでも良いから、付加させたようなやつ!」
「やった事は……」
「王太子殿下!それは面白そうですね!!」
ユーリィをよそに、王太子殿下とジャンがはしゃぎだした。
そんな事を言いながら机に突っ伏している王太子殿下だが、意外と平気そうにしているのは、肝が据わっているのだろうか。
「あの絶対防御は凄かったな!流石魔王だ!……その後、揺れまくるのはいただけなかったが……」
思い出して興奮気味に言っていた王太子殿下は、後半、どこか遠い目をしながら呟いた。
ジャンは、視線をあたしに向けて何か言いたげにしているし、レオンは吹き出していた。……まぁ、そりゃそれを武器にしたわけだしね。
「ありがとうございます……?」
あたし達にも慣れてきたのか、ユーリィが気絶する事もなく、紅茶を片手に王太子殿下へ小首をかしげながら言った。その膝には、傷ついていたのを助けたというリスをハンカチの上にのせている。相変わらずの優しさだ。
あれから、大神官と聖女を拘束し、共に全てを見ていた王太子殿下により全てを白日の下へ晒された。教会に関しては各国を統括している大本へ苦情を申し入れたのだが……魔王が善人すぎる気弱な人である事、そして魔人を召喚したのが大神官という点で、民衆達から大反発をくらった。
例え、今まで信仰深く生きて来た人でも、今回の件は信仰心を継続できるものではなかったのだろう。まだ、王太子殿下の方を疑心暗鬼に思う人も中には居るらしいが、各国の王族が出した真実に、嘘だろう!と面と向かって言う勇気はないといったところか。
たった一人の神官による悪事で、教会の威信は地に落ちた。
ちなみに、新しく神官達が派遣されてきて、あたし達は念の為にと鑑定をしてもらったのだが……ロアナは聖女で間違いないし、あたしは勇者だ。ジャンやレオンも同じく、賢者と聖騎士で……ユーリィも魔王だった。
あくまで、適正職業は適正職業であって、そこに基づく何かがあるのではないか。
そんな予測と共に、教会はこれから追及していくそうだ。……そりゃ魔王が存在していても、王都で民の暮らしは変わらないし、作物の育ちが悪くなるわけでもなく、自然災害に侵される事もないのだから。あたし達が生きていく上で、全く問題ない存在と言える。
「そういえば、絶対防御って、あの形でしか無理なわけ?武器にならない形には出来ないの?」
「……どうだろう?試してみた事はない」
唐突に放ったジャンの言葉に、ユーリィがあの時を思い出したように、少し青ざめて答える。
「え!?じゃあ防具みたいなの作れない!?防御の軽いやつでも良いから、付加させたようなやつ!」
「やった事は……」
「王太子殿下!それは面白そうですね!!」
ユーリィをよそに、王太子殿下とジャンがはしゃぎだした。
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