【完結】女が勇者で何が悪い!?~魔王を物理的に拘束します~

かずきりり

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23.ユーリィが起きた

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「あ、目が覚めた!」
「え…………」

 村につき、村長さんの家に泊めてもらう事になった。そこへユーリィを運び込んだ後は、ただひたすらユーリィのご尊顔を舐めるように眺めていた。目が覚め、こちらを向いたユーリィと目が合った。うん、目が開いたら開いたで、これまた良い!

「ヒィッ!勇者!」

 だけれど、ユーリィはあたしの顔を見て小さく悲鳴をあげれば、青白い顔をして後ずさった。なんで?まさか男だと思われてる!?勇者だし!あたしただの変な人みたいな!?

「勇者と言っても、女ですよ。女性です」
「ただし怪力破壊魔だけどね」

 潔く性別を訂正するつもりで言えば、ロアナが横から余計な口を挟み、水をユーリィに向けて差し出した。
 あぁあ!ずるい!これが女子力!?
 しかも、ユーリィはおずおずと水を受け取りながらも、余程喉が渇いていたのか、ゴクゴク飲んでいるし!あたしが渡したかった!

「ここは先ほど助けた者達が住んでる村で、村長の家を間借りしてます」
「え!?」

 ロアナが説明すると、水を一気に飲み終わったユーリィが驚きの声をあげた。飲み終わったコップを受け取って、もう一杯どうですかと聞いてるロアナに嫉妬する。
 あぁああこれが気遣いというものなのか!あたしがやりたいのに!全く気が付かなかった!

「いや、もう大丈夫です。俺は今すぐにでも此処から出ていくので……」
「え!なんで!?」

 頭を下げ、布団から出ようとしたユーリィの腕を掴んで、思わず叫んだ。

「ユーリィ一緒に行こうよ!てか倒れてたし、まだしばらく休んだ方が良いって!」
「え!?いやちょっと……」
「……マリー……」

 戸惑うユーリィを、そのまま無理やり寝かしつけると、ロアナは額に手をあてて溜息をついた。
 しっかり布団に戻ってもらわないと!ユーリィに何かあったら大変だ!

「ね?」
「…………はい」

 このまま無理に起きるならと、ロープを手ににっこり微笑んで見せると、ユーリィは引きつりながらも返事をしてくれた。よし!それで良い!
 ロアナが深いため息をつきながらユーリィに対して、言うだけ無駄ですよと言っていたけれど、何が無駄なんだろう。





 皆が寝静まった深夜。暗闇の中、こっそりとしながら動く気配。
 目を覚ましたあたしは、同じく目を覚ましただろうレオンと目を見合わせ、頷き合った。
 動いたのは、ユーリィだ。……縛り付けておけば良かった。

「冗談じゃない……逃げる……逃げるぞ」

 ユーリィの声が聞こえる。
 何かから逃げているのだろうか。追われているのなら、いくらでも助けるのに。
 そのまま出ていったユーリィを、あたしはレオンと共に追いかける。
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