【完結】女が勇者で何が悪い!?~魔王を物理的に拘束します~

かずきりり

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09.魔王討伐へ出発

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「どう見たって18だろう!」
「鑑定受けてなかったら、12位に思えるわ!」

 叫ぶあたしに、むくりと起き上がったレオンが叫ぶ。流石聖騎士、傷はないようだ。

「あたしのどこをどう見たら、そんな子どもに見えるんだー!!」

 片手でレオンを持ち上げて、ぐるぐる回す。

「……え」
「……怪力」

 ロアナとジャンが引き気味で何か言っているが、あたしの怒りはレオン一直線だ。誰が子どもだ、誰が。

「見た目幼女で怪力とか、何この勇者!」

 バリーンッ!

 幼女の一言で窓の外へ放り出したのは仕方ない事だと思う。人に対して失礼な事を言い過ぎだ。
 溜息をつくロアナと、目と口を開いて呆けているジャンを気にせず、あたしは再度お菓子を食べ始めた。……聖騎士だし、レオンなら大丈夫……な、筈。






 数日後、武器や防具、旅資金と言ったものを貰い、地図と資金を受け取った。豪華な食事。風が吹き込まず、雨漏りのしない、無駄に煌びやかな住まいと、ふかふかなベッドからおさらばする時が来たようだ。
 というか、追い出された感がある。

「あ~~!もう面倒臭いなぁ」
「この職業を引いたのが運の尽きだろな」
「むしろ、この職業だからこそ、王城で良い暮らしを少しでもさせてもらったわけだけどね」

 王都を出て、魔王が居るとされる方向へ進みながら愚痴を言う。
 レオンは運という言葉で簡単に済ませたが、ジャンの言う事は最もだろう。お貴族様だろう人には分かるまい。日々食べる物を調達する必死さも、雨風が吹き込む家を修理しながら暮らす事も!硬くて疲れが取れない木の板ベッドも!

「とりあえず隣国を目指して行きましょう。勇者御一行と言えば、それなりに過ごせますから……ね?」

 にこやかに言うロアナだが、その言葉が響く者は誰も居なかった。
 あたしはただ面倒臭いだけだし、レオンは全く興味がなさそう。ジャンに至っては、所詮庶民だからなぁ、と言いたげだった。
 分かる。平民であるあたし的にも、常にあんな豪華な暮らしをしたいわけでもない。あれに慣れたら戻れない気もするし……むしろ肩がこる。
 全く反応をしないあたし達に、ロアナからどす黒いオーラを感じる気がするけれど、気のせいだろう……だって、聖女様だし……?

「……この森を突っ切れば近道……?」
「え」
「は?」

 森を囲うように作られている街道を歩きながら思いついた事を言えば、ロアナとジョンは驚いたように目を見開く。
 ……だって、この森の向こう側が隣国なんだよね?ぐるっと回るくらいなら、突っ切ったら早いよね?

「お!それ良いな!」

 言うが早いか、レオンはとっとと森の中へ入っていった。それを追いかけるかのようにあたしも入っていく。

「あ……あんた達!勝手な行動すんじゃないわよ!!」
「危ないよ!」

 後ろからロアナのヒステリックな叫びと、ジャンの震える声が聞こえるけれど、面倒な事は早く終わらせたいと思わないのかな。
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