【完結】女が勇者で何が悪い!?~魔王を物理的に拘束します~

かずきりり

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08.自己紹介

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「私はご存じの通り、聖女のロアナ・ルスボーですわ。17歳になります。どうぞ、ロアナと」

 美しい所作でお茶を飲みながら目の前に座る聖女様……基、ロアナが言葉を発した。

「俺は聖騎士のレオン・ホルタ。16歳だ。レオンで良い」

 隣から声がした。足を組んで椅子に座っているが、レオンもお菓子を食べる所作が綺麗だ。そもそも家名がある時点で貴族という存在なのだろう。
 ……貴族という者に会うのも初めてだな、そう言えば。勇者、すげー。

「僕は賢者でジャン。エルフだからこう見えても216歳だ」
「エルフ?」

 斜め前に座るジャンから、何か知らない単語が出てきた。食べる手を止める事はないけれど、つい首を傾げてしまう。

「簡単に言えば人間より寿命が長くて、魔力が豊富だから高度な魔法を使える」
「なるほど。ちょっとだけ違うと」

 とても要領を得ていて理解しやすい。確かに200歳とか人間では考えられない。
 頷いていると、ジャンはポカンとした顔をしていて、レオンはまた笑い始めた。

「ジャンの耳は尖ってるけどな!」
「まぁ耳もあると」
「……そこ?」

 レオンは笑いながら言うけれど、耳がないのは虫くらいだと思う。だいたいの動物というか魔物とかにも耳はある。
 そう思って返した言葉だったが、ジャンは更に目を見開いて驚いている。ロアナは若干呆れているようだ。……解せぬ。

「……ジャンがエルフである事は、あたしが生きる事に何か問題が?」

 返した言葉にジャンは更に驚いたようだ。レオンに関しては、確かにその通り!と言って更に笑い出した。
 だって、害があるなら魔物とか人間なんて枠組みは関係なくて、生きるのには害があるかないかで判断するだけだ。
 そして、美味しい食べ物は楽しみにもなる。なんて思いながら更にお菓子を貪る。

「……えーっと……勇者様の自己紹介も」

 引きつったようにロアナが言う。
 あ、そういえばあたしだけ、まだ言ってなかったか。
 お茶で口の中にあるお菓子を流し込み、一息ついてあたしも話す。

「辺境の村から来たマリーです。勇者って言われました。18なのでジャンだけはあたしより年上だね」

 むしろ遥かに年上なんだけれど、見た目的には二十歳くらいだから若干年上という気がする。

「え!?年上!?18!?鑑定は15で受けるだろ!?」

 レオンが声をあげ、ロアナは視線を背けた。
 ……いや、そこスルーして欲しい。鑑定を忘れていた事を思い出させないで欲しい。何この恥を掘り返される感じ。
 年齢……黙っていれば良かったか……?お菓子を食べる手を止めず、そんな事を考えていればレオンは立ち上がって、あたしを指さした。

「それに、どう見たってせいぜい15に見えるかもしれない程度だろー!」
「はぁああああ!!??」

 思わず投げ飛ばしてしまったのは許して欲しい。……隣に居たのが悪い。
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