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07.交流ですか?
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美味しい食事、温かい部屋、ふかふかなベッド。
想像した事もない世界を満喫しているあたしに、それ以上驚愕する事が起き、ただ目の前に居る人物を凝視している。
「という事で勇者様と皆の親交を深めていただきたく思っております」
深く頭を下げ、少し高い声のトーンで、にこやかに微笑み、丁寧な言葉を使う。その人物に、ただ胡散臭さしか感じない。もはや別人ではないかと疑う程だ。
「……どうしたんですか聖女様。気持ち悪い」
「気持ち悪い!?……いえ、これから旅をする仲間として敬意を示そうと心を入れ替えまして……」
「え。ただでっかい壁を建てられた感さえする」
あたしの返す言葉に、どんどん聖女様の口角が引きつり始める。……何だろう。慣れない笑顔で表情筋が疲れたのだろうか。
身体もプルプル震えているし、慣れない行動で他の筋肉も引きつっているのかな……見るからにか弱そうだしなぁ。
「あっははははははは!!」
「そんなに笑ったら失礼だよ」
声の方向へ目を向けると、そこには王様に聖騎士と賢者だと紹介を受けた二人が立っていた。否、1人はお腹を抱えてうずくまっていると言っても過言ではない。
「勇者に挨拶と思い、馳せ参じたのですが……」
賢者と言われていた青年が頭を下げ、チラリと聖女様の方へ視線を向けると、聖女様もハッとした顔をして動き始めた。
「お茶の用意をお願いしてあります!皆でサロンへ行きましょう」
未だうずくまって笑いが止まらない聖騎士を賢者が何とか立たせ、引きずるように歩き出す。その後ろを聖女様が付いて行くように歩き出すが、あたしはあまり気が進まない。
お茶って、水に色がついていたやつで、確かに香りはするし砂糖とミルクをたっぷり入れれば甘味はするけれど、何も入れなければ苦みがある。泥水よりはマシだけれど、王城で出される水の方が良いなと思える程だ。
……澄んだ水というのも、初めて見た。
歩みの悪いあたしに気が付いたのか、聖女様が歩みを止め、あたしの方へ振り返った。
「お菓子も用意させてありますよ」
「サロンどこ!?」
その言葉を聞いた瞬間、あたしは迷わず先を歩く賢者達の元へ駆け脚で寄って行った。
聖騎士は更に笑い崩れ、賢者や聖女様の口角がまた引きつっていた気がするけれど、今はお菓子が何より最優先だ!
あんな甘くて美味しい食べ物、初めて食べた。もうそれだけで勇者最高!としか言えない。
村に居ては一生食べる事が出来なかったようなものだ。……むしろほぼ芋生活でしかない村に、砂糖という高級品もない。
「ふぁああ」
サロンに足を踏み入れたあたしは、目の前に広がるお菓子の山に目を輝かせ、椅子に座って即貪り始めた。
後ろに居る三人を気にする事もなく。
想像した事もない世界を満喫しているあたしに、それ以上驚愕する事が起き、ただ目の前に居る人物を凝視している。
「という事で勇者様と皆の親交を深めていただきたく思っております」
深く頭を下げ、少し高い声のトーンで、にこやかに微笑み、丁寧な言葉を使う。その人物に、ただ胡散臭さしか感じない。もはや別人ではないかと疑う程だ。
「……どうしたんですか聖女様。気持ち悪い」
「気持ち悪い!?……いえ、これから旅をする仲間として敬意を示そうと心を入れ替えまして……」
「え。ただでっかい壁を建てられた感さえする」
あたしの返す言葉に、どんどん聖女様の口角が引きつり始める。……何だろう。慣れない笑顔で表情筋が疲れたのだろうか。
身体もプルプル震えているし、慣れない行動で他の筋肉も引きつっているのかな……見るからにか弱そうだしなぁ。
「あっははははははは!!」
「そんなに笑ったら失礼だよ」
声の方向へ目を向けると、そこには王様に聖騎士と賢者だと紹介を受けた二人が立っていた。否、1人はお腹を抱えてうずくまっていると言っても過言ではない。
「勇者に挨拶と思い、馳せ参じたのですが……」
賢者と言われていた青年が頭を下げ、チラリと聖女様の方へ視線を向けると、聖女様もハッとした顔をして動き始めた。
「お茶の用意をお願いしてあります!皆でサロンへ行きましょう」
未だうずくまって笑いが止まらない聖騎士を賢者が何とか立たせ、引きずるように歩き出す。その後ろを聖女様が付いて行くように歩き出すが、あたしはあまり気が進まない。
お茶って、水に色がついていたやつで、確かに香りはするし砂糖とミルクをたっぷり入れれば甘味はするけれど、何も入れなければ苦みがある。泥水よりはマシだけれど、王城で出される水の方が良いなと思える程だ。
……澄んだ水というのも、初めて見た。
歩みの悪いあたしに気が付いたのか、聖女様が歩みを止め、あたしの方へ振り返った。
「お菓子も用意させてありますよ」
「サロンどこ!?」
その言葉を聞いた瞬間、あたしは迷わず先を歩く賢者達の元へ駆け脚で寄って行った。
聖騎士は更に笑い崩れ、賢者や聖女様の口角がまた引きつっていた気がするけれど、今はお菓子が何より最優先だ!
あんな甘くて美味しい食べ物、初めて食べた。もうそれだけで勇者最高!としか言えない。
村に居ては一生食べる事が出来なかったようなものだ。……むしろほぼ芋生活でしかない村に、砂糖という高級品もない。
「ふぁああ」
サロンに足を踏み入れたあたしは、目の前に広がるお菓子の山に目を輝かせ、椅子に座って即貪り始めた。
後ろに居る三人を気にする事もなく。
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