【完結】女が勇者で何が悪い!?~魔王を物理的に拘束します~

かずきりり

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06.魔王って何

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「僭越ながら、私から……」
「あ……あぁ、宰相頼む……」

 国王の側に居た宰相と呼ばれた男性が言えば、国王は引きつった表情のまま頷き、それを確認した宰相様は話始めた。

 魔王とは、世界にとって良くない強大な力を持っている。
 ハレアド教の教えからも魔王は悪いものとされていて、討ち滅ぼさねばならぬ存在。その魔王を倒す者として、勇者・聖女・聖騎士・賢者が存在すると。

「……はぁ」

 溜息にも似た返事が口から洩れた。
 ……魔王も職業なのか?生まれつき持っているとされる職業で討たれる?
 権力者は暇なのだろうか。食べる物もなければ、日々働く事だけで精一杯だ。そんなバカげた思考を持つよりも畑を耕して、獲物を狩ってくるのに。

「それに、この国で勇者が誕生したとして他国からの協力もあるのです」

 焦ったように宰相様は言うが、他国の協力が一体何だと言うのだろう。
 確かにこの大陸全土はハレアド教の教えがあるのだから、魔王を滅ぼして欲しいと考えるのだろうけれど……。

「勇者様のご馳走とかね」

 聖女様の言葉にパッと顔を上げる。
 え?ご馳走!?勇者に他国からご馳走が!?

「魔王を倒すにも身体が資本だからな。しっかり食べて英気を養えるようにな」
「やります!勇者やります!」

 国王様の言葉に、あたしは笑顔で返す。
 食べるものに困らないのならば、それは助かる!泥水を啜ったり、木の根を齧る事もないという事だから!

「……やりますじゃなく、やる以外の道はないのよ……」

 溜息をつきながら聖女様が呟いていたけれど、そんな事より生活が大事だ。食べなければ死ぬし、雨風凌げる場所も欲しい。病気にならない為、最低限の清潔な環境も必要だ。
 ……周囲を見てみれば、そんな事に困りそうな場所や服装ではないだろうけれど。

「……政治的方面という事もあるけれど……」
「では、頼んだぞ」

 聖女様が呟いた言葉をかき消すように、国王様の言葉が響き渡った。


 ◇


「……まさか、勇者が女だとは……」

 自慢の体躯を見せつけるかのように肩や足、谷間などを惜しみなく露出するような布地をまとった女が、身体をしだれかけ言った。

「私の美しさで虜にさせる筈だったのに……」
「女だからと言って、目的は変わらん」

 薄暗い部屋の中、悔しそうな女の声が響くも、男はハッキリした迷いない口調で答えると、女は安心したかのように笑みを浮かべた。

「わかりましたわ……旅なんて嫌ですけれど」
「お前にしか出来ない。頼んだぞ……ロアナ」

 そこに居たのは、清廉潔白とされる聖女、ロアナ・ルスボーだった。
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