【完結】女が勇者で何が悪い!?~魔王を物理的に拘束します~

かずきりり

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05.国王とご対面です

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「そちが勇者か」

 綺麗な刺繍や装飾品が施された服を着せられたあたしは、だだっ広い部屋に通された。こんな服、今まで着た事はおろか、見た事もないけどね!
 広い部屋の真ん中には、真っすぐ轢かれた絨毯。その先には数段の階段があり、上には豪華な椅子が置かれている。そこへ座っているのが国王だろう。
 立派な髭を生やした中年のおっさんだ。あれ……衛生的に大丈夫なのか。
 いくら辺境の平民でも、仕事の邪魔になるからと、あそこまで伸ばさないよ?と思わず言いたくなるほどだ。
 ……まぁ、立場が違うし、お風呂という水攻めを毎日してるなら問題ないのかもしれない。

「……ちょっと!」

 そんな事を考えていたら、隣に居た聖女様があたしを肘でつつきながら声をかけてきた事により、周囲の空気が何か違う事に気が付いた。
 あ、そういえば国王様に言葉をかけられていたんだっけ。

「……多分?」

 思わず、首を傾げて答える。
 だって、あたしは自分自身を鑑定なんて出来ないし、勇者だと言ったのは聖女様だ。つい視線を聖女様へ向けると、聖女様は慌てたように国王の方へ顔を向け、言葉を発した。

「はい!この方が私の鑑定で勇者と出ました!」

 かなり渋ってた筈なのになーと、国王の前で断言する聖女様に対し、思わず半目になってしまった。
 しかし、国王様はそんなあたしには目もくれず、聖女様の発言に対して満足そうに頷いている。
 ……まぁ、そりゃそうか。聖女様と、所詮辺境の村人。信用度が違うもんね。いくら着飾っているとは言っても、中身は平民だ。

「勇者よ……皆と協力して魔王を倒してくれ。賢者と聖騎士よ、ここへ」

 ふと、おばさんの言っていた言葉が脳裏に過った。魔王を倒す旅に出るって……。

「えっ!?旅!?ご飯は!?」

 ガッ!!

 あたしの放った言葉を途切れさせるかのように、聖女様はふわふわした白いパンをあたしの口へ突っ込んできた。
 ……うん、美味しい。

「……あぁ……まぁ……辺境の地からという事らしいから……な」

 国王様は何故か口元を引きつらせている。食べるの、大事。人間は霞を食べて生きる事は出来ないんだ。
 国王様と聖女様の引きつった顔を無視して美味しい白パンを食べていると、国王様の側に二人の男性がやってきた。

「勇者よ、紹介しよう。賢者と聖騎士だ」

 鎧をまとった茶色の短髪に青い目をした少年と、ローブをはおった緑色のセミロングに黄色い瞳をした青年が、こちらを見つめる。
 ごくんっとパンを飲み込むと、あたしは旅以外で気になっていた事を口にした。

「魔王って?」
「「「「…………」」」」

 この部屋に居る全員、時が止まったかのように表情を固定させ、無言を貫いた。
 ……教えてもらわないと、倒すとか出来ないと思うんだけど……?
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