13 / 14
13.目覚め
しおりを挟む
ジュリーが毒を飲んでから一ヶ月の時間が過ぎた。
「公爵……その……」
「殿下。言わなくてもわかりますが、私はそれを受け入れられません。」
穏やかな日の午後、アルフレッドはアベラルド公爵家を訪れていた。
今後の事についての話だったのだが、ガストーネは当たり前のように否と言う。
きっとこれは王命であっても反発するだろう事は国王すらも理解しているし、そこまで無理強いをするつもりもなかった。
ただ、念の為に伺っただけだ。
アベラルド公爵と公爵子息なら、きっと大事にならないように手を打つだろう。何かあって責任を取る、は許されない。それを分かっているから、責任ならいくらでも取る。なんて言葉が出てくる事はない。
会話が終わり、ただ紅茶を呑む音だけが響く中、ノックもなく応接室の扉が開かれた。
「っ!」
「お嬢様がーーーー!」
注意を促そうとしたガストーネだが、使用人のその言葉を聞いた瞬間、二人はすぐさま走り出した。
◇
「どちら様でしょうか……?」
雪崩込むかのように部屋に押し入ったガストーネとアルフレッド、そのすぐ後ろにも駆けつけたばかりのエクトルが二人を押すように入ってきた。
そんな三人を眺めて、ベッドに座る女性から発せられた言葉に驚きを隠せなかった。
「ジュリー……?」
アルフレッドは、ただ呆然と目の前にいる人物の名前を呼ぶ。
ガストーネはフラフラとしながらもジュリーの元まで歩くと、ベッドサイドで泣き崩れた。
「ジュリー……!お前が生きてるだけで……生きていてくれるだけで良い!!」
「ごめん……!ごめんジュリー……!」
エクトルも、部屋の入口に佇んだまま涙を流し謝罪の言葉を口にする。
三者三様、ただただ悔やんでいた。
そこまでジュリーの心に傷を残したのか、覚えていたくもない程の記憶だったのかと。
毒を飲む程までに追い詰められたジュリーの心に対し、三人もまた心に深く後悔という傷をつけていた。
現在、ジュリーが居る部屋は屋根裏にある一室。
貴族を閉じ込める為の場所で、存在を隠されている。
あの日、毒を飲んだジュリーは何とか一命を取りとめたが、その後の対応に関しては未だに答えが出ていないのだ。
首をはねる事に関しては陛下が止めた。しかしジュリーには国の機密事項たる情報が残っているという事実は変わらない。
本来、情報を守る為に命を絶つとしても、自殺を図る為に毒を飲むとは想定もしていなかったというのもある。
助かったとしても、このまま将来王太子妃としても良いのか。
このまま逝かせるべきではないのか。
国としての答えも彷徨ったままだったのだ。
だから、ガストーネ=アベラルドは言ったのだ。ジュリーを殺す事は受け入れられないと。
「公爵……その……」
「殿下。言わなくてもわかりますが、私はそれを受け入れられません。」
穏やかな日の午後、アルフレッドはアベラルド公爵家を訪れていた。
今後の事についての話だったのだが、ガストーネは当たり前のように否と言う。
きっとこれは王命であっても反発するだろう事は国王すらも理解しているし、そこまで無理強いをするつもりもなかった。
ただ、念の為に伺っただけだ。
アベラルド公爵と公爵子息なら、きっと大事にならないように手を打つだろう。何かあって責任を取る、は許されない。それを分かっているから、責任ならいくらでも取る。なんて言葉が出てくる事はない。
会話が終わり、ただ紅茶を呑む音だけが響く中、ノックもなく応接室の扉が開かれた。
「っ!」
「お嬢様がーーーー!」
注意を促そうとしたガストーネだが、使用人のその言葉を聞いた瞬間、二人はすぐさま走り出した。
◇
「どちら様でしょうか……?」
雪崩込むかのように部屋に押し入ったガストーネとアルフレッド、そのすぐ後ろにも駆けつけたばかりのエクトルが二人を押すように入ってきた。
そんな三人を眺めて、ベッドに座る女性から発せられた言葉に驚きを隠せなかった。
「ジュリー……?」
アルフレッドは、ただ呆然と目の前にいる人物の名前を呼ぶ。
ガストーネはフラフラとしながらもジュリーの元まで歩くと、ベッドサイドで泣き崩れた。
「ジュリー……!お前が生きてるだけで……生きていてくれるだけで良い!!」
「ごめん……!ごめんジュリー……!」
エクトルも、部屋の入口に佇んだまま涙を流し謝罪の言葉を口にする。
三者三様、ただただ悔やんでいた。
そこまでジュリーの心に傷を残したのか、覚えていたくもない程の記憶だったのかと。
毒を飲む程までに追い詰められたジュリーの心に対し、三人もまた心に深く後悔という傷をつけていた。
現在、ジュリーが居る部屋は屋根裏にある一室。
貴族を閉じ込める為の場所で、存在を隠されている。
あの日、毒を飲んだジュリーは何とか一命を取りとめたが、その後の対応に関しては未だに答えが出ていないのだ。
首をはねる事に関しては陛下が止めた。しかしジュリーには国の機密事項たる情報が残っているという事実は変わらない。
本来、情報を守る為に命を絶つとしても、自殺を図る為に毒を飲むとは想定もしていなかったというのもある。
助かったとしても、このまま将来王太子妃としても良いのか。
このまま逝かせるべきではないのか。
国としての答えも彷徨ったままだったのだ。
だから、ガストーネ=アベラルドは言ったのだ。ジュリーを殺す事は受け入れられないと。
589
お気に入りに追加
6,403
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
【完結】高嶺の花がいなくなった日。
紺
恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。
清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。
婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。
※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
身勝手だったのは、誰なのでしょうか。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢になるはずの子が、潔く(?)身を引いたらこうなりました。なんで?
聖女様が現れた。聖女の力は確かにあるのになかなか開花せず封じられたままだけど、予言を的中させみんなの心を掴んだ。ルーチェは、そんな聖女様に心惹かれる婚約者を繋ぎ止める気は起きなかった。
小説家になろう様でも投稿しています。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる