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13.目覚め

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ジュリーが毒を飲んでから一ヶ月の時間が過ぎた。

「公爵……その……」
「殿下。言わなくてもわかりますが、私はそれを受け入れられません。」

穏やかな日の午後、アルフレッドはアベラルド公爵家を訪れていた。
今後の事についての話だったのだが、ガストーネは当たり前のように否と言う。
きっとこれは王命であっても反発するだろう事は国王すらも理解しているし、そこまで無理強いをするつもりもなかった。
ただ、念の為に伺っただけだ。
アベラルド公爵と公爵子息なら、きっと大事にならないように手を打つだろう。何かあって責任を取る、は許されない。それを分かっているから、責任ならいくらでも取る。なんて言葉が出てくる事はない。
会話が終わり、ただ紅茶を呑む音だけが響く中、ノックもなく応接室の扉が開かれた。

「っ!」
「お嬢様がーーーー!」

注意を促そうとしたガストーネだが、使用人のその言葉を聞いた瞬間、二人はすぐさま走り出した。





「どちら様でしょうか……?」

雪崩込むかのように部屋に押し入ったガストーネとアルフレッド、そのすぐ後ろにも駆けつけたばかりのエクトルが二人を押すように入ってきた。
そんな三人を眺めて、ベッドに座る女性から発せられた言葉に驚きを隠せなかった。

「ジュリー……?」

アルフレッドは、ただ呆然と目の前にいる人物の名前を呼ぶ。
ガストーネはフラフラとしながらもジュリーの元まで歩くと、ベッドサイドで泣き崩れた。

「ジュリー……!お前が生きてるだけで……生きていてくれるだけで良い!!」
「ごめん……!ごめんジュリー……!」

エクトルも、部屋の入口に佇んだまま涙を流し謝罪の言葉を口にする。
三者三様、ただただ悔やんでいた。
そこまでジュリーの心に傷を残したのか、覚えていたくもない程の記憶だったのかと。
毒を飲む程までに追い詰められたジュリーの心に対し、三人もまた心に深く後悔という傷をつけていた。

現在、ジュリーが居る部屋は屋根裏にある一室。
貴族を閉じ込める為の場所で、存在を隠されている。
あの日、毒を飲んだジュリーは何とか一命を取りとめたが、その後の対応に関しては未だに答えが出ていないのだ。
首をはねる事に関しては陛下が止めた。しかしジュリーには国の機密事項たる情報が残っているという事実は変わらない。
本来、情報を守る為に命を絶つとしても、自殺を図る為に毒を飲むとは想定もしていなかったというのもある。
助かったとしても、このまま将来王太子妃としても良いのか。
このまま逝かせるべきではないのか。
国としての答えも彷徨ったままだったのだ。
だから、ガストーネ=アベラルドは言ったのだ。ジュリーを殺す事は受け入れられないと。
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