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12.断罪
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「許して下さい!許して下さい!!許して下さい!!!」
「いやぁあああ!どうして!?お父様!お母様!!」
泣き叫ぶ二人を見ている筈が、そんな姿などうつっていないような瞳で眺めているエクトルとガストーネ。
絶えず行われる鞭打ち。
まだまだ終わらない拷問は、手段を変えて次々に待ち受ける。
それを分かっているも、同情する事も悲しむ事も心配する事もない。
むしろそんな感情なんて一切沸かなかった。
あるのは怒りのみ。
ジュリーはもっと苦しんでいた。
あの苦しみを長年耐え抜いていたんだ。
「愛してるの!愛しただけなの!」
ナニーの悲痛な叫び。
痛みから、苦痛から、自分の思いをぶちまける。
言い訳なんかではなく本心からの言葉だが、そんなものは誰も欲していないし、聞きたくもない言葉だ。
むしろ、そんなものの為に、とさえ思えてしまう。
ガストーネにとって妻の、エクトルにとって母のエルザを、二人はとても愛していた。
そして、その忘れ形見であるジュリーの事も勿論愛していた。
身勝手な愛しているを押し付ける為だけに、大切な愛した存在を奪われるなんて……
「貴方に愛されたかっただけなの!」
「助けて!」
目の前が真っ赤に染まる。
後悔かもしれない。
八つ当たりかもしれないと思っていた。
だけど……
ガストーネは拷問を行っている者達に見えるように手を上げた。
それは、合図だ。
遠慮は要らないという、合図。
勿論、簡単に許す気もない。すぐに楽にす気もない。
ジュリーが苦しんだ年月、しっかり苦しんでもらう。
思うのは勝手だ、くだらない思い等と言うつもりもない。
叶わなくとも、思いだけは自分の意思でどうなるものでもなく、自分が自由に持てるものだ。
しかし……それを手に入れたいと思い、起こした行動は、到底許せるものではない。
絶叫を背後に、エクトルとガストーネは無言で地下牢の奥にある拷問部屋から出た。
きっと思う事は同じだろう。
どんな理由があったとしても、ジュリーを虐げた事は許せない。
ガラテアに関しては、ナニーが嘘を言いくるめて育て、ナニーを手本にしていたからだろうが、情状酌量の余地は一切なかった。
平民が貴族の……しかも公爵令嬢を虐待していたなど、極刑レベルの話である。
ナニーに至っては公爵家を乗っ取ろうとしていたと判断される程の事だ。
勿論、使用人達も入れ替えた。
こんな事は、本来ならば、あってはならない事だ。
留守を守る事が出来ないのであれば、外出する事ができなくなってしまう。
家を守る役目を果たせない者は必要がない。
自分を責める気持ちや後悔に押しつぶされそうになりながらも、悲しみにくれている時間はなかった。
「いやぁあああ!どうして!?お父様!お母様!!」
泣き叫ぶ二人を見ている筈が、そんな姿などうつっていないような瞳で眺めているエクトルとガストーネ。
絶えず行われる鞭打ち。
まだまだ終わらない拷問は、手段を変えて次々に待ち受ける。
それを分かっているも、同情する事も悲しむ事も心配する事もない。
むしろそんな感情なんて一切沸かなかった。
あるのは怒りのみ。
ジュリーはもっと苦しんでいた。
あの苦しみを長年耐え抜いていたんだ。
「愛してるの!愛しただけなの!」
ナニーの悲痛な叫び。
痛みから、苦痛から、自分の思いをぶちまける。
言い訳なんかではなく本心からの言葉だが、そんなものは誰も欲していないし、聞きたくもない言葉だ。
むしろ、そんなものの為に、とさえ思えてしまう。
ガストーネにとって妻の、エクトルにとって母のエルザを、二人はとても愛していた。
そして、その忘れ形見であるジュリーの事も勿論愛していた。
身勝手な愛しているを押し付ける為だけに、大切な愛した存在を奪われるなんて……
「貴方に愛されたかっただけなの!」
「助けて!」
目の前が真っ赤に染まる。
後悔かもしれない。
八つ当たりかもしれないと思っていた。
だけど……
ガストーネは拷問を行っている者達に見えるように手を上げた。
それは、合図だ。
遠慮は要らないという、合図。
勿論、簡単に許す気もない。すぐに楽にす気もない。
ジュリーが苦しんだ年月、しっかり苦しんでもらう。
思うのは勝手だ、くだらない思い等と言うつもりもない。
叶わなくとも、思いだけは自分の意思でどうなるものでもなく、自分が自由に持てるものだ。
しかし……それを手に入れたいと思い、起こした行動は、到底許せるものではない。
絶叫を背後に、エクトルとガストーネは無言で地下牢の奥にある拷問部屋から出た。
きっと思う事は同じだろう。
どんな理由があったとしても、ジュリーを虐げた事は許せない。
ガラテアに関しては、ナニーが嘘を言いくるめて育て、ナニーを手本にしていたからだろうが、情状酌量の余地は一切なかった。
平民が貴族の……しかも公爵令嬢を虐待していたなど、極刑レベルの話である。
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勿論、使用人達も入れ替えた。
こんな事は、本来ならば、あってはならない事だ。
留守を守る事が出来ないのであれば、外出する事ができなくなってしまう。
家を守る役目を果たせない者は必要がない。
自分を責める気持ちや後悔に押しつぶされそうになりながらも、悲しみにくれている時間はなかった。
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