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11.ガストーネ=アベラルド
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「お前たちは何をやっていたんだ!!!」
ナニーとガラテアを牢に入れると、使用人達をホールに集め怒鳴り散らした。
真っ青になって震え、冷や汗を流している。揃いも揃って何をやっているんだ。
自分の愚かさの八つ当たりを含んでいたのは否めないが、それでもこいつ等のやった事は腹立たしい。
隣に居るエクトルも、声は発しないものの噛み締めた唇から血が流れている。
エルザが死んだ。
その喪失感は計り知れないものだった。
政略結婚が多い中、愛してやまない女性と結婚し、家庭を築けたのだ。
とても大切な毎日で……それがイキナリ色あせた。
子ども達の事は気になっていた。
だけど、エルザの笑顔がない邸に帰る事は、エルザが居ないという現実を突きつけられているようで……
次第に、邸から足は遠のいていた。
地位やパワーバランスから、生まれた子が女ならば王子の婚約者にという話があり、ジュリーは城で教育を受けていると聞く。
そんな中、エルザの親友であったナニーが生まれたばかりの子を連れ、路頭に迷っていると聞いたから、ジュリーの専従侍女兼家庭教師にどうだろうと話をした。
エルザの親友が、毎日の生活に怯えるのも心苦しい。
きっと生きていたら、エルザが手を差し伸べていただろう……
貧乏男爵の娘。ジュリーの教育には実力が伴っていないが、少しでもジュリーの気分転換になってくれればと……
それが……
思わず頭を抱えた。
この邸が今まで行っていた報告を聞いて、ジュリーの日記は真実だったと決定的になってしまったからだ。
皆が皆、ナニーを後妻だと思い、ナニーの言う事を聞いてジュリーを蔑ろにし、ガラテアを甘やかしていたと。
私の愛するエルザの忘れ形見を!!
「……くやしい……」
俯き、肩を震わせ、エクトルがかき消されるかのような声で呟いた。
……あぁ、そうだな。悔しい。
そんな状況に十年以上気がつかなかった事に。
止められなかった事に!
「……ジュリーの身体にある痣に心当たりのある者は……?」
一縷の望みをかけて問いかけた。
私がエルザをどれほど愛していたか知っている、古くからの使用人も居るからだ。
使用人達は目を見合わせ、震え……そして
全員が膝をついて頭を下げ、許しを乞うた。
「どうか許して下さい!」
「ナニー様達の暴力を止める事ができませんでした!」
次々に放たれる言葉に、目の前が真っ暗になった。
私は邸の中の事をここまで把握出来ていなかったし、そして、使用人達は完全に私の手から離れていた事に。
どうして誰も私に報告しなかった。
聞きにこなかった。
どうしてジュリーは……
ナニーとガラテアを牢に入れると、使用人達をホールに集め怒鳴り散らした。
真っ青になって震え、冷や汗を流している。揃いも揃って何をやっているんだ。
自分の愚かさの八つ当たりを含んでいたのは否めないが、それでもこいつ等のやった事は腹立たしい。
隣に居るエクトルも、声は発しないものの噛み締めた唇から血が流れている。
エルザが死んだ。
その喪失感は計り知れないものだった。
政略結婚が多い中、愛してやまない女性と結婚し、家庭を築けたのだ。
とても大切な毎日で……それがイキナリ色あせた。
子ども達の事は気になっていた。
だけど、エルザの笑顔がない邸に帰る事は、エルザが居ないという現実を突きつけられているようで……
次第に、邸から足は遠のいていた。
地位やパワーバランスから、生まれた子が女ならば王子の婚約者にという話があり、ジュリーは城で教育を受けていると聞く。
そんな中、エルザの親友であったナニーが生まれたばかりの子を連れ、路頭に迷っていると聞いたから、ジュリーの専従侍女兼家庭教師にどうだろうと話をした。
エルザの親友が、毎日の生活に怯えるのも心苦しい。
きっと生きていたら、エルザが手を差し伸べていただろう……
貧乏男爵の娘。ジュリーの教育には実力が伴っていないが、少しでもジュリーの気分転換になってくれればと……
それが……
思わず頭を抱えた。
この邸が今まで行っていた報告を聞いて、ジュリーの日記は真実だったと決定的になってしまったからだ。
皆が皆、ナニーを後妻だと思い、ナニーの言う事を聞いてジュリーを蔑ろにし、ガラテアを甘やかしていたと。
私の愛するエルザの忘れ形見を!!
「……くやしい……」
俯き、肩を震わせ、エクトルがかき消されるかのような声で呟いた。
……あぁ、そうだな。悔しい。
そんな状況に十年以上気がつかなかった事に。
止められなかった事に!
「……ジュリーの身体にある痣に心当たりのある者は……?」
一縷の望みをかけて問いかけた。
私がエルザをどれほど愛していたか知っている、古くからの使用人も居るからだ。
使用人達は目を見合わせ、震え……そして
全員が膝をついて頭を下げ、許しを乞うた。
「どうか許して下さい!」
「ナニー様達の暴力を止める事ができませんでした!」
次々に放たれる言葉に、目の前が真っ暗になった。
私は邸の中の事をここまで把握出来ていなかったし、そして、使用人達は完全に私の手から離れていた事に。
どうして誰も私に報告しなかった。
聞きにこなかった。
どうしてジュリーは……
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