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09.ガラテア
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馬車の音が聞こえる。
何事かと外を見ると、公爵家の家紋が入った馬車が入ってくるのが見えた。
お姉さまがもう帰ってきたの?と思い嫌な気持ちが膨れる。
綺麗なドレスをきて、高い宝石をまとい、最高の教育を受け、挙句に王太子殿下の婚約者という事はゆくゆく王妃になるという事。
羨ましかった。妬ましかった。
出来が悪いくせに、どうしてお姉さまだけが!!
まともに勉強も出来なくて、婚約者に浮気までされている魅力のない女が、ただ姉というだけで!!
今日はどうやって嫌がらせをしようかと考えていたら、馬車から男の人が二人降りてきた。
お父様とお兄様だ!!
いつも仕事で邸になかなか帰って来ないし、家族が揃う事もなかった。
まだ午前中という時間に、二人が一緒に帰ってきた事が嬉しかった。
いっぱい甘えよう!そしていっぱいおしゃべりしよう!
そしてお姉さまに負けないくらいのドレスや宝石を買ってもらおう!
部屋から出て向かったエントランスホールでは、母が二人に頭を下げてお出迎えしている。
「お父様!お兄様!おかえりなさい!!」
嬉しくて嬉しくて、お父様に抱きついた。
「っ!ガラテア!」
母が悲鳴にも似た声で私を呼んだ瞬間、私はお父様に突き飛ばされ、床に倒れ込んだ。
「……お父様……?」
理解が出来なかった。
お父様だけでなく、お兄様まで冷たい目線で鋭く睨みつけてくる。
「誰が父だ」
低く感情のこもらないかのような声。
出迎えに来ていた使用人達が佇まいを直し、息を飲んだのが分かった。
母の方を見ると、血の気が引いた顔をして震えている。
「え……お父様はお父様で……」
「ガラテア!!」
母が遮るように私の名前を叫ぶ。
「お前は私の娘などではない。ナニーの連れ子なだけではないか。何を言ってるんだ。……ナニー?」
冷たい声で、母を睨みつけるお父様。
母はただ真っ青になって震えているだけだ。
……どういう事?
私は公爵家の子どもじゃないの?
ずっとずっと、ここで暮らしているのに?
じゃあ、お母様は……?
公爵夫人じゃないの……?私は……?
お父様だと思っていた人の言葉を聞き、使用人達も驚いたかの表情をしてお母様を見つめている。
中には歯を食いしばり、どういう事だと言わんばかりに睨みつけている人も居る。
助けを求めるかのように、お兄様だと思う人に目線を向ける。
私の目線に気がついたのか、冷ややかな視線のまま、こう言った。
「何を驚いてる?居候の娘が」
——居候の娘……?
突然の事実に、私はただ呆然とする事しか出来なかった。
お母様は……居候なの……?
じゃあ……私は……私の今までは……
何事かと外を見ると、公爵家の家紋が入った馬車が入ってくるのが見えた。
お姉さまがもう帰ってきたの?と思い嫌な気持ちが膨れる。
綺麗なドレスをきて、高い宝石をまとい、最高の教育を受け、挙句に王太子殿下の婚約者という事はゆくゆく王妃になるという事。
羨ましかった。妬ましかった。
出来が悪いくせに、どうしてお姉さまだけが!!
まともに勉強も出来なくて、婚約者に浮気までされている魅力のない女が、ただ姉というだけで!!
今日はどうやって嫌がらせをしようかと考えていたら、馬車から男の人が二人降りてきた。
お父様とお兄様だ!!
いつも仕事で邸になかなか帰って来ないし、家族が揃う事もなかった。
まだ午前中という時間に、二人が一緒に帰ってきた事が嬉しかった。
いっぱい甘えよう!そしていっぱいおしゃべりしよう!
そしてお姉さまに負けないくらいのドレスや宝石を買ってもらおう!
部屋から出て向かったエントランスホールでは、母が二人に頭を下げてお出迎えしている。
「お父様!お兄様!おかえりなさい!!」
嬉しくて嬉しくて、お父様に抱きついた。
「っ!ガラテア!」
母が悲鳴にも似た声で私を呼んだ瞬間、私はお父様に突き飛ばされ、床に倒れ込んだ。
「……お父様……?」
理解が出来なかった。
お父様だけでなく、お兄様まで冷たい目線で鋭く睨みつけてくる。
「誰が父だ」
低く感情のこもらないかのような声。
出迎えに来ていた使用人達が佇まいを直し、息を飲んだのが分かった。
母の方を見ると、血の気が引いた顔をして震えている。
「え……お父様はお父様で……」
「ガラテア!!」
母が遮るように私の名前を叫ぶ。
「お前は私の娘などではない。ナニーの連れ子なだけではないか。何を言ってるんだ。……ナニー?」
冷たい声で、母を睨みつけるお父様。
母はただ真っ青になって震えているだけだ。
……どういう事?
私は公爵家の子どもじゃないの?
ずっとずっと、ここで暮らしているのに?
じゃあ、お母様は……?
公爵夫人じゃないの……?私は……?
お父様だと思っていた人の言葉を聞き、使用人達も驚いたかの表情をしてお母様を見つめている。
中には歯を食いしばり、どういう事だと言わんばかりに睨みつけている人も居る。
助けを求めるかのように、お兄様だと思う人に目線を向ける。
私の目線に気がついたのか、冷ややかな視線のまま、こう言った。
「何を驚いてる?居候の娘が」
——居候の娘……?
突然の事実に、私はただ呆然とする事しか出来なかった。
お母様は……居候なの……?
じゃあ……私は……私の今までは……
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