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07.エクトル=アベラルド公爵子息

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妹が毒を飲んだ。そんな現実を突きつけられて、目の前から色がなくなるようだった。
ジュリーの日記には衝撃を受けたが、自分の事を棚に上げ、ついアルフレッドの胸ぐらを掴んでしまった。
愛していると、大事だと言っていたのに、浮気?令嬢達に囲まれていた??

「愛してるさ!!!」

そう叫ぶアルフレッドの言葉に、正気に戻ったかのような感覚に陥った。
そうだ、こいつはジュリーへ攻撃が行かないように適当にあしらう事をしなかっただけだ。
王妃様も未だに嫉妬に狂った婦人たちに足を引っ張られる事がある。
王太子妃、しいては婚約者だった時は更に酷かったと聞いた事がある。
だからこそ……俺はジュリーをアルフレッドと共に守る為にも王太子の側近にまで上り詰めたんだ。
だけど……それが正しかったかどうかより、俺にはもっとやる事があったんだと痛感した。
まさか俺から嫌われていると思っていたなんて……

涙を流し震える父を見ながら、公爵邸に使いを出していない事に安堵もしている。
許せるわけがない……。
元凶は勿論の事、震える父に対しても怒りはある……が、自分自身にも怒りが溢れる。
どうしてもっと一緒に居なかったんだ。
どうしてもっと会話をしなかったんだ。

5歳下のジュリーが生まれた時、確かに母は亡くなった。
確かに見ると母の事を思い出して寂しくもなったし悲しくもなったが、それを乗り越え立ち直った時には、俺はジュリーを溺愛していた。
ただ……8歳の時にナニー親娘が公爵邸に来た。
公爵の跡取りとして勉強も始まり、今までのようにジュリーに会うことが出来なくなったし、ナニーが常についていたから、どうして良いのか戸惑った部分もあった。
一度距離感が分からなくなると、どうして良いのか分からないまま月日は過ぎてしまった。
ジュリーは常に忙しく、会いたくても会えない日々も続き、俺と会っても分からないんじゃないかという不安まで出てきた。
だから……王太子の側近になってジュリーの手助けが出来るようにと毎日頑張っていたのだが……

「父上、俺は許せません」

思った以上に低く震えた声が出た。
何に、とか誰が、とか、そんな事は言わない、言えない。
ただ……絶対に許してはいけない人物が居るのだけは確かだ。
父の肩がピクリと動くと、ゆっくりと立ち上がり、冷たく絶望を写したかのような瞳で振り向いた。

「……そうだな。……陛下」
「好きにすると良い。許される事ではない」

陛下から許可の言質を取り、そして邸へ向かう。
愛情を歪め
誤解を誘導し
ジュリーを追い詰めた。
あいつらの元へ。
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