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06.アルフレッド王太子殿下

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ジュリーが自分で毒を飲んだ。
発見された日記により、ジュリーの思いが包み隠さず表面化された。
王宮専属医が手をつくしている中、身体に虐待の跡も見つかった。
傷だらけの背中は、とても痛々しくて……
城に居たジュリーの父も兄も、俺の父や母も、すぐに駆けつけては皆泣きくれている。
どうして気がつかなかったのか。
何故気づけなかったのか。
後悔しても今更でしかない……握りこんだ掌に爪が食い込み、涙の変わりかというように血が滴り落ちる。

「どういう事だ!アルフレッド!」

行き場のない怒りを俺にぶつけるかのように、ジュリーの兄、エクトルは俺の胸ぐらを掴む。

「お前は……お前はジュリーを愛していたんじゃなかったのか!!」
「愛してるさ!!!」

俺は声を張り上げた。愛していた、なんて過去形は使いたくない。俺は今も愛している。
政略だなんて思っていなかった、とても大切で、とても愛おしい、大事な大事な婚約者。
俺の迫力に、エクトルは一歩後ずさり、俺から手を離した。

「……すまない」

エクトルがそう呟くも、俺は踵を返し、ジュリーの部屋から出て行った。
ジュリーをこれ以上見たくなかった、その手に触れたくなかった。
——認めたくなかった——
例え現実逃避だとしても。いつかは受け入れなくてはいけないとしても。

「あら?ご機嫌よう、王太子殿下」

いつも近づいてきてはベラベラとくだらない話をし続ける令嬢達が近づいてきた。

「失せろ」
「え?」
「失せろと言った。鬱陶しい。俺は話しかける許可を与えていない」
「で……殿下?」

何か言っていたが、それ以上特に何かを言う事もなく俺は歩いて行った。
そもそも気軽に話しかけられていても、それに対応していたのはジュリーの為だった。
側室狙いの女達が多数いたのは知っているが、それを邪険に扱ってしまいジュリーに攻撃が行く事を懸念していた為、相手をしていたにすぎない。
自分の母も攻撃をされていたし、アベラルド公爵夫人からも聞いた事があったからだ。
だから嫌々ながらも相手をしていたというのに……止める事さえ出来なかった上に、誤解を与えていたなんて……

自室に入り、立ち入りを禁ずると、そのまま俺は泣き崩れた。
後悔しても時間は戻らない。
やり直す事も出来ない。
本当はもっとジュリーに会いたかった。
だけれど今は妃教育や公務の手伝いで忙しく、月一回と言えど大変かもしれないと、何も告げなかった。
月一回すらも嫌だと言われたら寂しくて立ち直れそうになかったからだ。
結婚すればずっと一緒に居られるから……そう思って……言わなかった。
何も伝えなかった自分の愚かさを悔やみ、泣きつかれて気を失うまで、声にならない声で泣き続けた。
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