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03.ふさわしい妃に

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私が存在する意味は何なのだろう——

「王太子殿下に相手されていない事が分かってないんじゃなくて?」
「お茶の時間も月一回だけですって!お情け程度ね」
「愛されてもいないのに縋り付いて。みっともないと思いません?」

目の前に居る令嬢達が様々な意見を口にしている。この方達はいつもアルフレッド様と談笑されている方達だ。
わたくしなんかよりもアルフレッド様の事を知っているし理解しているだろう。
縋り付いているわけでもない。
ただ生まれる前から婚約は決まっていて、3歳から今の生活をしていて——
すでにこれが日常で、これが私の毎日で……それ以外を知らないだけ……
自由な時間なんてない程に詰め込まれたスケジュール。
挙句、私自身がもう機密事項を覚えこまされた存在だ。
ガラテアは街へ行ったとか、遠くへ散歩に行ったとか言っていた気がするけど、それは楽しいものなの?
いえ、それより……楽しいという感情はどんなものなのかしら?

「っ!?」
「わ…わたくしは知りませんわよ!」
「行きましょう!」

慌てて令嬢達が去っていく。
どうしたのだろうかと思うが、わたくしの頬が濡れているように思えて手を添える。

「……涙?」

思わず呟いた。涙を流すのなんて、どれくらいぶりなのだろう。
忘れ去ったものの一つ。
流し方も止め方も忘れた涙は無表情でもハラハラと流れ落ちる。

——わたくしは悲しいのかしら?——

城に仕えている者に発見されるまで、わたくしはただその場に立ち尽くして、表情がないまま涙を流し続けた。

◇ ◇ ◇

「弱いわね」

王妃様に呼ばれ伺うと、挨拶もそこそこに放たれた一言。

「その程度で泣いてどうするの。精神が弱くては王妃どころか王太子妃にも相応しくないわ。もっと図々しくならないと」

頭をかかえて王妃様はため息をつく。

「図太く生きなさい!そんな女にしか妃は務まらないのよ!」

図々しく、図太い……
それがわたくしとは違うというのなら、わたくし以外の人を選べば良いのではないのだろうか……
務まらないと言うのであれば、生まれる前の子に決める事がおかしい。
あぁ…人間性で決めるのではなく、生まれた人間の個を決められたものへと導くのか

——本当、わたくしは一体なんなのだろうか——

ついでに化粧で誤魔化していても顔色が酷く健康にも気を遣えと言われた。
妃は公務を行い、人前に出る際にも恥ずかしくない状態でなければいけないから健康でなくてはいけないと。
しばらく城に泊まって療養を兼ねろと。邸と往復する時間を休む時間に遣えと。
あぁ……どうして。
どうして
どうして
どうして
どうしてわたくしなのだろう
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