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02.妃教育とは

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「ジュリー?顔色が悪いようだが……」

席につくなり、アルフレッド様はそう言った。
昨夜は……というか常に寝不足の為か、毎日化粧で隈を隠すのにも必死だ。
勿論身支度を手伝ってくれるメイドなんてわたくしには居ない為、いつも自分で行っているが……。

「大丈夫ですわ」

貼り付けた仮面の笑顔でそう答えるも、アルフレッド様は苦虫を噛み締めたような顔をする。

「大丈夫なわけないだろう。今日は早めに終わって少し休め」
「わかりました。ありがとうございます」

笑顔を浮かべてそう答える。
きっとわたくしの顔を見ていたくないだけだろう。
お茶の時間を早く切り上げた所で、変わらず王城で勉強の時間になるだけだ。勉強が終われば公務の手伝い。
それをアルフレッド様が知らないわけがないだろう。

—王太子殿下は浮気ばかりしているそうね—
—きっとアンタに魅力がないからね—
—生きてるだけで忌々しい—

ふいに義母が放った言葉が脳裏をよぎった。
家族に愛されていないわたくしが、人殺しのわたくしが、誰かに愛されるわけがない。
お茶を一杯だけ飲んで、アルフレッド様との時間は解散となった。
悲しいとも寂しいとも思わない、ただの義務のようなもの。
もしアルフレッド様に愛する人が出来た時は、素直にこの婚約を白紙に戻そう——
そう簡単に思っていた。
この後の授業により、わたくしの命にまで関わる事になるとは知らずに。

◇ ◇ ◇

「自害……ですか?」
「そうです。それだけ貴方は重要な存在となるのです」

すでに王妃教育まで学んでいた私は、これから国の機密事項にまで食い込んでいく事になる。
その情報を外部に漏らす事は国家の存続に関わる為、許されない。
何かあった時は、その情報が外部に漏れる前に自害しなさいと。
そして、毒を隠し持つ方法まで教わった。

(アルフレッド様が誰かを愛したとしても、婚約をなかった事には出来ないのね……)

渡された毒を眺めながら、そんな事を考えていた。
すでに逃げ道はなかったんだ。
愛される場所なんてなくて
誰かが愛される姿を見て
わたくしはいつでもどこででも邪魔な存在でしかなくて
存在そのものが迷惑なのね

「それを常に身につけて下さい」

戒めのように先生の声が脳に響く。
そう、常に身に付ける。監視のように。
そして安堵のように。
いつでも自分の命を絶てるように。
王家へ忠誠を誓うかの如く。

「わかりました」

そう言って身に付ける。
もう後戻りは出来ないのだという証のように——
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