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56.精霊のおしおき

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お披露目のようなものも終わり、獣人達も含めて王都の復興という住みやすい街づくりをしようと民達は動き、そこへ父達も趣いて行った。
城に残っていた人物が最小限だった為か、城の内部は掃除が行き届いておらず、戻ってきたメイド達は掃除に励んでいるし、そこへも獣人達が一緒になって片付けてくれている。
王妃様は出ていってから今まで、王妃様の分だけでなく国王の分まで書類が片付けられていない事に気がつき、狂ったように書類の整理をしている。
私達はとりあえずマユと竜王様の話をしようと城の一室で紅茶を飲んでいたのだが…

「嫌なら断って下さい」
「嫌ではありません。大歓迎です」
「俺もマユが良いと思う」
「マユが決めたのなら、それに賛成です!」
「んんんんんーーー!!!!!」

夫婦と扱われる事に対して、マユは毅然とした態度で竜王様に詰め寄るが、それに賛成の声をあげたのはラルド様とディル様だ。
もちろん私も。
人型に戻っても、蔦が口元に絡みついて話す事が出来ない竜王様に、誰も意見を聞いていない。

「…嫌なんですか?」

蔦を取ろうともがく竜王様に対して、悲しそうに俯いてマユが問う。

「あっつぅううう!!!!????」

とっとと外せ、と言わんばかりにディル様が竜王様の顔面に火を付けた為、蔦は燃え消えたものの、のたうち回る竜王様。
もう…相変わらずというか何というか…
ディル様が盛大なため息を吐いている横で、私も小さくため息を吐いた。

—竜王様は鈍臭い—

その一言を飲み込み、マユに目を向けると、その瞳に薄い涙の膜が張っていた。
竜王様をからかって遊んでいるのかとも思っていたが、完全に外堀を埋めている辺り、何か思いがあったのか。それとも好意を持っているのか。
マユが単独アズール国へ戻った事から、異世界から来たというその気持ちは私が想像する事が難しいのだと心底学んだ。
だからこそ、この涙は何なのだろう…?

「マユ…?」
「退避!!!!!!!」

思わずマユに声をかけた瞬間、ディル様が叫んで私を抱え、ラルド様と共に部屋から飛び出し扉をしめた。

———瞬間、爆音が立ち上り、石が崩れ落ちる音がした。あれ壁崩れてる音ですよね。

「ななななな…何事!?マユ!?」
「養子の手続きは終わってましたか…?」

慌て混乱する私とは対照的に、ラルド様は寂しそうな表情をしつつ至って冷静に養子の心配をする。
…竜王様の心配ではなく、あくまで養子の心配である。
よほど養子という立場が欲しいようです。

「…精霊が…ちょっと怒っておしおきしたみたいだな…」

精霊のおしおきは壁を爆破するらしです…
精霊達はマユを気に入っているみたいなので問題ないでしょうが…
壁は大破損ですね。
…精霊が本気で怒ったらどうなるのかと一瞬考えたが、想像がつかない破壊がありそうだと思った瞬間、背筋が凍りそうになり考えるのを止めた。
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