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52.対面

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「何を言ってるんだラルド!!???」

竜王様は動揺して声をあげるが、マユは竜王様から離れる様子はない。

「義父様。そこは人型になって抱きしめるとこでしょう」
「獣人の王なのであれば、そこは獣らしく!」
「そこ、男らしくの方が良いと思うぞ、カイル」
「女性的にはそういう方が良いのか?アリシア」
「私に聞かないでください!ディル様!」
「て言うかまだ褒美は渡せないぞ!?」

男性は色々思うところがあるのでしょう。
竜王様に至っては呼び方の否定に必死みたいですが、それも時間の問題かと思う。
そして私に意見を聞かないで欲しい。剣で死ぬより恥ずかしさで死にそうになる。
口々にそういった事を言っている間に、兵達は様子を見に次々と集まってくる。
そこには、足取りが覚束無い様子な国王も居た。兵に支えられながら来たのだろう。

「お久しぶりですね。遺伝子上、父という存在な人」
「ま…さか……ラルドか…?」

国王に冷ややかな目線を向けるラルド様。
ラルド様の後ろ左右を父と兄が固める。

「ラルド…だと?」

気がついたらしい殿下の声までも聞こえる。

「…なんでレイドワークが…」

ロイドも気がついたようだ。
私とディル様は竜王様とマユの側に行くと、殿下と目があい、私達に気がつき叫ぶ。

「アリシア!マユから離れろ!」

お決まりの言葉に成長がないとさえ思える。

「低脳すぎて吐き気がする。この国はルフィル国が貰いうけるよ」

早くご褒美が欲しいからね、とラルド様が呟きながら、サラリと言う。

「何を言っているんだラルド…なぜ獣人の国なんかに」
「低脳が統治するより良くなりますよ」
「王太子は私だぞ!」
「血筋だけで政治も分からない馬鹿が」

陛下や殿下に悪態をつくラルド様だが、周囲に居る兵達は特に動くわけでもない。
ロイドやアスタは殿下とマユの両方を視線で追いながら、どう動くべきか時を見極めているようにも思える。
何か収集がつかなくなりそうな感じがする。
このまま言い合っていたところで何も進まない。
隣ではディル様が本当くだらなくて面白いなんて呟いて笑いをこらえてる気がする。

「レイドワーク領土は独立した後、現在はルフィル国と協力体制をとっている!兵達よ!どうする!?」

兵達は私達に敵意を向けているわけでもなさそうだから、あえて問いかけてみた。

「ラルド竜王御子息に忠誠を」
「レイドワークはラルド竜王御子息にお仕えする」

父と兄がラルド様に忠誠を誓う。
ただでさえ青ざめた顔をしていた国王が、血の気が失せたように白くなっていく反面、殿下は怒りだろうか顔を真っ赤にしている。

「まだ息子じゃ……」
「ガルル!!!我ら獣人もラルドならば支持をしよう!」

ディル様がフェンリル姿になり、周囲を威圧する。
竜王様の言葉を遮って。
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