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「ー!レイドワーク辺境伯!?」
「真ん中の男は誰だ!?」
兵士が少ないとはいえ、家族を養う為、自分の生活を守る為。
仕事を簡単に放棄出来ない人もそれなりに居て、その者達は必死に不法侵入者を捉えようとしてくる。
とは言っても、レイドワークの現在当主と次期当主がいる。
そして———
「下がれ!私はラルド・ラスフィード!アズールの第二王子だ!」
ラルド様が、叫ぶ。
事実なのに、どこか違和感を感じる言葉。
「……利用出来るものは忌まわしい身分でも利用する辺り、清々しいな…」
ポツリと、ディル様が呟く。
そうだ。人間である事はともかく、この国の王子という立場を認めてなかったような気がする。
不本意ながら血が繋がっただけの存在とか……
「第二王子!?」
「え!?あの!?」
「ど…どうする!?」
「本当に存在したのか!?」
驚き慌てる声が聞こえる。
多分、この国を出て行った経緯を考えても、通常思考ではないから御伽噺のように思っていた人もいるのかもしれないな、と、最後の声を聞きながら思った。
王子と名乗るラルド様の左右には父と兄が居る為、その言葉は真実のものとして兵達に周知されていく。
目指すは光の渦が立ち込めた場所。
場所的には城を突っ切って、奥の方にある図書室あたりだと思う。
ラルド様が駆け抜けている道筋も、そちらの方だった。
「ラルド様って記憶力良いんですね」
「レイへの愛だけでたどり着きそうだが」
城の道は結構入り組んでいるが、年月がたっていても迷う様子もなくラルド様が走り抜けているという事は、それまでの生活でしっかり覚えていて、今も忘れていないという事に他ならないと思ったが…
ディル様の言葉に、そちらの方が真実味があると思えてしまった…。
「竜王様!!」
図書室の扉はすでに破壊されており、そのままラルド様は中に突進する。
壁際で気を失っている馬鹿と三馬鹿のうち二人。
残りの一人は壊れた天井を見上げて、何かを視界に入れないようにしている。
そして視界に入れないようにしているだろうものは…………
竜にしがみついて泣いているマユだった。
「マっ……!!んっ!」
泣いているマユが心配になり、マユ!と叫ぼうとした私の口をディル様が手で塞ぐ。
父と兄はニヤニヤした顔をして
「おぉ!二人はそういう…?」
「ふむ…人型じゃないのが残念だ…」
と言っていて、しばらく時間が止まったかのように眺めていたラルド様が、凄い爆弾発言を落として、この空気は一変した。
「あぁ…マユが義母様になるのですね」
と。
「真ん中の男は誰だ!?」
兵士が少ないとはいえ、家族を養う為、自分の生活を守る為。
仕事を簡単に放棄出来ない人もそれなりに居て、その者達は必死に不法侵入者を捉えようとしてくる。
とは言っても、レイドワークの現在当主と次期当主がいる。
そして———
「下がれ!私はラルド・ラスフィード!アズールの第二王子だ!」
ラルド様が、叫ぶ。
事実なのに、どこか違和感を感じる言葉。
「……利用出来るものは忌まわしい身分でも利用する辺り、清々しいな…」
ポツリと、ディル様が呟く。
そうだ。人間である事はともかく、この国の王子という立場を認めてなかったような気がする。
不本意ながら血が繋がっただけの存在とか……
「第二王子!?」
「え!?あの!?」
「ど…どうする!?」
「本当に存在したのか!?」
驚き慌てる声が聞こえる。
多分、この国を出て行った経緯を考えても、通常思考ではないから御伽噺のように思っていた人もいるのかもしれないな、と、最後の声を聞きながら思った。
王子と名乗るラルド様の左右には父と兄が居る為、その言葉は真実のものとして兵達に周知されていく。
目指すは光の渦が立ち込めた場所。
場所的には城を突っ切って、奥の方にある図書室あたりだと思う。
ラルド様が駆け抜けている道筋も、そちらの方だった。
「ラルド様って記憶力良いんですね」
「レイへの愛だけでたどり着きそうだが」
城の道は結構入り組んでいるが、年月がたっていても迷う様子もなくラルド様が走り抜けているという事は、それまでの生活でしっかり覚えていて、今も忘れていないという事に他ならないと思ったが…
ディル様の言葉に、そちらの方が真実味があると思えてしまった…。
「竜王様!!」
図書室の扉はすでに破壊されており、そのままラルド様は中に突進する。
壁際で気を失っている馬鹿と三馬鹿のうち二人。
残りの一人は壊れた天井を見上げて、何かを視界に入れないようにしている。
そして視界に入れないようにしているだろうものは…………
竜にしがみついて泣いているマユだった。
「マっ……!!んっ!」
泣いているマユが心配になり、マユ!と叫ぼうとした私の口をディル様が手で塞ぐ。
父と兄はニヤニヤした顔をして
「おぉ!二人はそういう…?」
「ふむ…人型じゃないのが残念だ…」
と言っていて、しばらく時間が止まったかのように眺めていたラルド様が、凄い爆弾発言を落として、この空気は一変した。
「あぁ…マユが義母様になるのですね」
と。
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