40 / 65
39.感動ではない再会
しおりを挟む
「王妃様!」
「あら?アリシア、早かったわね?向こうでゆっくりしなかったの?」
父や兄を差し置いて私が声をかけた事に関して、王妃様は咎めなかった。
というより、父や兄は獣人達に囲まれた生活に未だ興奮冷めやらない状態なのだ。
そして王妃様の早かったという言葉………
どうせ殿下達御一行はアズール国に着くまで時間がかかるが、こちらはすぐに着く。
という事で、しばらく城を開けるという事で必要な仕事の整理等を終わらせ、ついでにアズール国復興に必要な力となるだろう獣人達にも声をかけレイドワーク領土にまで戻ってきたのだが、王妃様的には早かったのだろう。
馬鹿王子が侵攻してきた事は頭から抜けているわけではないだろうから、それは瞬殺していて当たり前程度の認識なのだろうか。
「実は…ご報告とご相談がございます」
そう言って、私は視線を後方へ向ける。
父、母、兄二人、ディル様に竜王様、そして………ラルド様
王妃様は知らない二人が誰なのか少し考えた後、気がついたのか目を見開いた。
「………まさか………ラルド?」
「お久しぶりです。母上」
その言葉に竜王様とディル様が少し驚く。
血の繋がっただけの、とか。遺伝子上では、とか。そういう言葉が付いていなかったからだろうか。
そこまで理解できている自分に、一緒にいる時間は短いものの、お互いわかり合ってるんだなと思える。
王都では貴族同士、表情や言葉の裏に醜い物をかかえた探り合いだった事を考えると、こちらは皆素直に正直に生きて居るというのもあるのだろう。
王妃様がラルド様に足取りも覚束ない状態で歩み寄る…
感動の再会かと思いきや、王妃様はいきなり
「こんの大馬鹿者!!!!」
そう言って扇をラルド様の頬に叩きつけた…が、紙一重でラルド様は後ろに下がり躱す。
「あんた!それで獣人にはなれたの!?」
「頑張ってみましたが無理でしたね」
「身体構造上無理だとあれほど言っていたでしょう!分かったならとっとと帰ってきなさい!」
「決めつけるより模索した方が有意義というものでは?今では竜王様の側近として獣人の方々と触れ合っていますが、それはもう色んな発見がありますよ」
王妃様は自身の立場を忘れたかのように、実の息子を叱りつけるただの母親になっていた。
ラルド様の竜王様、という言葉と共に視線を向けた漆黒の髪の男性へ王妃様も視線を向け、思い出したかのように姿勢を正した。
「お初にお目にかかりますわ。私、今はまだアズール国の王妃という立ち位置に存在しているものですわ」
「…………親子だな」
王妃様のご挨拶に、少し引きつった顔をした竜王様が答えた。
「実は王妃ではなく、ラルドの母としてそなたに話があるのだが…」
「あら?母としての役割など、ここ八年行っておりませんわ?もう産んだだけ、と言っても差し障りがない程です」
冷たい言葉と、ラルド様に向けられる刺すような視線を送る王妃様に対し、苦笑する竜王様。
うちの有能な執事が、お茶の用意ができたのでサロンへお集まり下さいという言葉に、一旦この冷え切った場は空気を変えたのだった。
「あら?アリシア、早かったわね?向こうでゆっくりしなかったの?」
父や兄を差し置いて私が声をかけた事に関して、王妃様は咎めなかった。
というより、父や兄は獣人達に囲まれた生活に未だ興奮冷めやらない状態なのだ。
そして王妃様の早かったという言葉………
どうせ殿下達御一行はアズール国に着くまで時間がかかるが、こちらはすぐに着く。
という事で、しばらく城を開けるという事で必要な仕事の整理等を終わらせ、ついでにアズール国復興に必要な力となるだろう獣人達にも声をかけレイドワーク領土にまで戻ってきたのだが、王妃様的には早かったのだろう。
馬鹿王子が侵攻してきた事は頭から抜けているわけではないだろうから、それは瞬殺していて当たり前程度の認識なのだろうか。
「実は…ご報告とご相談がございます」
そう言って、私は視線を後方へ向ける。
父、母、兄二人、ディル様に竜王様、そして………ラルド様
王妃様は知らない二人が誰なのか少し考えた後、気がついたのか目を見開いた。
「………まさか………ラルド?」
「お久しぶりです。母上」
その言葉に竜王様とディル様が少し驚く。
血の繋がっただけの、とか。遺伝子上では、とか。そういう言葉が付いていなかったからだろうか。
そこまで理解できている自分に、一緒にいる時間は短いものの、お互いわかり合ってるんだなと思える。
王都では貴族同士、表情や言葉の裏に醜い物をかかえた探り合いだった事を考えると、こちらは皆素直に正直に生きて居るというのもあるのだろう。
王妃様がラルド様に足取りも覚束ない状態で歩み寄る…
感動の再会かと思いきや、王妃様はいきなり
「こんの大馬鹿者!!!!」
そう言って扇をラルド様の頬に叩きつけた…が、紙一重でラルド様は後ろに下がり躱す。
「あんた!それで獣人にはなれたの!?」
「頑張ってみましたが無理でしたね」
「身体構造上無理だとあれほど言っていたでしょう!分かったならとっとと帰ってきなさい!」
「決めつけるより模索した方が有意義というものでは?今では竜王様の側近として獣人の方々と触れ合っていますが、それはもう色んな発見がありますよ」
王妃様は自身の立場を忘れたかのように、実の息子を叱りつけるただの母親になっていた。
ラルド様の竜王様、という言葉と共に視線を向けた漆黒の髪の男性へ王妃様も視線を向け、思い出したかのように姿勢を正した。
「お初にお目にかかりますわ。私、今はまだアズール国の王妃という立ち位置に存在しているものですわ」
「…………親子だな」
王妃様のご挨拶に、少し引きつった顔をした竜王様が答えた。
「実は王妃ではなく、ラルドの母としてそなたに話があるのだが…」
「あら?母としての役割など、ここ八年行っておりませんわ?もう産んだだけ、と言っても差し障りがない程です」
冷たい言葉と、ラルド様に向けられる刺すような視線を送る王妃様に対し、苦笑する竜王様。
うちの有能な執事が、お茶の用意ができたのでサロンへお集まり下さいという言葉に、一旦この冷え切った場は空気を変えたのだった。
14
お気に入りに追加
432
あなたにおすすめの小説
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と共に幸せに暮らします。
にのまえ
恋愛
王太子ルールリアと結婚をして7年目。彼の浮気で、この世界が好きだった、恋愛ファンタジー小説の世界だと知った。
「前世も、今世も旦那となった人に浮気されるなんて」
悲しみに暮れた私は彼に離縁すると伝え、魔法で姿を消し、私と両親しか知らない秘密の森の中の家についた。
「ここで、ひっそり暮らしましょう」
そう決めた私に。
優しいフェンリルのパパと可愛い息子ができて幸せです。
だから、探さないでくださいね。
『お読みいただきありがとうございます。』
「浮気をした旦那様と離縁を決めたら。愛するフェンリルパパと愛しい子ができて幸せです」から、タイトルを変え。
エブリスタ(深月カナメ)で直しながら、投稿中の話に変えさせていただきました。
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる