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39.感動ではない再会

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「王妃様!」
「あら?アリシア、早かったわね?向こうでゆっくりしなかったの?」

父や兄を差し置いて私が声をかけた事に関して、王妃様は咎めなかった。
というより、父や兄は獣人達に囲まれた生活に未だ興奮冷めやらない状態なのだ。

そして王妃様の早かったという言葉………
どうせ殿下達御一行はアズール国に着くまで時間がかかるが、こちらはすぐに着く。
という事で、しばらく城を開けるという事で必要な仕事の整理等を終わらせ、ついでにアズール国復興に必要な力となるだろう獣人達にも声をかけレイドワーク領土にまで戻ってきたのだが、王妃様的には早かったのだろう。
馬鹿王子が侵攻してきた事は頭から抜けているわけではないだろうから、それは瞬殺していて当たり前程度の認識なのだろうか。

「実は…ご報告とご相談がございます」

そう言って、私は視線を後方へ向ける。
父、母、兄二人、ディル様に竜王様、そして………ラルド様
王妃様は知らない二人が誰なのか少し考えた後、気がついたのか目を見開いた。

「………まさか………ラルド?」
「お久しぶりです。母上」

その言葉に竜王様とディル様が少し驚く。
血の繋がっただけの、とか。遺伝子上では、とか。そういう言葉が付いていなかったからだろうか。
そこまで理解できている自分に、一緒にいる時間は短いものの、お互いわかり合ってるんだなと思える。
王都では貴族同士、表情や言葉の裏に醜い物をかかえた探り合いだった事を考えると、こちらは皆素直に正直に生きて居るというのもあるのだろう。

王妃様がラルド様に足取りも覚束ない状態で歩み寄る…
感動の再会かと思いきや、王妃様はいきなり

「こんの大馬鹿者!!!!」

そう言って扇をラルド様の頬に叩きつけた…が、紙一重でラルド様は後ろに下がり躱す。

「あんた!それで獣人にはなれたの!?」
「頑張ってみましたが無理でしたね」
「身体構造上無理だとあれほど言っていたでしょう!分かったならとっとと帰ってきなさい!」
「決めつけるより模索した方が有意義というものでは?今では竜王様の側近として獣人の方々と触れ合っていますが、それはもう色んな発見がありますよ」

王妃様は自身の立場を忘れたかのように、実の息子を叱りつけるただの母親になっていた。
ラルド様の竜王様、という言葉と共に視線を向けた漆黒の髪の男性へ王妃様も視線を向け、思い出したかのように姿勢を正した。

「お初にお目にかかりますわ。私、今はまだアズール国の王妃という立ち位置に存在しているものですわ」
「…………親子だな」

王妃様のご挨拶に、少し引きつった顔をした竜王様が答えた。

「実は王妃ではなく、ラルドの母としてそなたに話があるのだが…」
「あら?母としての役割など、ここ八年行っておりませんわ?もう産んだだけ、と言っても差し障りがない程です」

冷たい言葉と、ラルド様に向けられる刺すような視線を送る王妃様に対し、苦笑する竜王様。
うちの有能な執事が、お茶の用意ができたのでサロンへお集まり下さいという言葉に、一旦この冷え切った場は空気を変えたのだった。
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