【完結】聖女と共に暴れます

かずきりり

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31.特等席へ向かいます

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「まぁ…それは…愚かですわね」
「面白い事が起こりそうですね」

ロイドが騒いでいたのを一部始終見ていた父とカイル兄からの報告を受け、哀れんだ目をし答えた王妃とアリシア。
マユを取り戻すと言ったところで、出て行ったのはマユの意思だし、何よりマユは今ルフィル国に居る。
武力だけでなく知力でさえも劣っているストーカー王子と三馬鹿なんて、塵芥も同然であるが、気位だけは高い奴等がそれに気が付く事は一生ないだろう。
きっと死ぬその瞬間まで、気がつかなさそうである。

「俺、ルフィル国でセインと合流するわ!」
「お前は次期当主として、ここで領地を整えろ!私が行ってくる!」

カイル兄の言葉を却下し、父が言うが、その横で母はため息をついた。

「貴方たち…面白い見世物をその場で見たいだけでしょう…」
「特等席じゃないか!」
「見逃してたまるか!」

母の言葉に対し、否定する事もなく声を返す父と兄に、王妃がしばらく何かを考え込むような仕草をした後、うちの執事に目を向け、自分の連れてきた侍女や執事にも目を向けた。

「ロイドが王都へ戻り、ルフィル国へ到着するのに馬で7日程。ここからルフィル国へは馬で3日程と言ったところでしょうか」
「馬の獣人に頼めば1日かと」

王妃様の言葉にディル様が返す。
確かに獣人の脚力と精霊の力は素晴らしい。

「レイドワークの領土に関しては常に執事が収めているようなものだと聞きます。問題は武力がいなくなる事だけですわよね?」

微笑む王妃様に対し、父は少し目を逸らす。
確かに父やカイン兄は武力行使に優れているが、経営等の頭脳戦はセイン兄か執事が行っている。

「領民が増えた分の仕事は僭越ながら私や私の執事達もお手伝いしますわ。武力さえ何とかしていただけるのでしたら、楽しんで観劇を見てきてください」

そして参加してきて完膚なきまでに叩きのめしてくるのも楽しいですよ、と黒い笑顔で呟いていたが、私達は皆聞かなかった事にした。
王妃様の闇が深い気がする……
確かに、自分の息子があんな馬鹿だと言うのを毎日見せつけられていたら鬱憤も溜まるかと思うけれどっ

「武力に関しては獣人に増援を求めても良い。そこらの魔獣程度あれば対等に戦えるだろう。肉の確保もできる。対人間など問題外だ……レイドワークの血筋でなければ」

ディル様がボソリと最後に呟いた言葉に納得はいかないが、父や兄は喜んでいるし、母も付いてくるつもりなのか侍女に動きやすい服を用意するよう伝えている。
時間の余裕は十分あるので、観光もするか!と父が言い出し収集がつかなくなっていく——

「…なんか…申し訳ありません?」
「良いんじゃないか?」

気が付けば獣人ありきの計画に、能天気すぎるんじゃないかと思える家族に対しディル様に謝罪をするも、ディル様自身も何やら楽しそうに微笑んでいる。
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