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26.二手に分かれて
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すぐさま領土へ戻ろうとするカイルだったが、馬らしき生き物の休憩が足りないのか、生まれたてのように足をプルプル震わせて立つことすらままならない。
そのため、私とカイル兄がディル様に乗ってレイドワークの現状把握と救援の為に戻る事にした。
マユも着いてきたがったが、精霊の情報網を聞いたセイン兄が黒い笑顔でマユに何かを呟いた後、残りメンバーはルフィル国へ戻ることになったのだ。
セイン兄も何か考えがあってルフィル国へ行くのだと思うけれど…
幸いな事にマユとは精霊を通じてディル様がやり取り出来るので、ありがたく領土へ向かう事にした。
「アリシア、これ」
そう言ってセイン兄は自分が使っていた剣を私に差し出した。
「存分に暴れて良いからね。こちらには聖女様がいらっしゃるので大丈夫だよ」
うん。魔獣相手じゃ確実に戦力過多ですね、と思いながら有り難く剣を受け取る。
一応私も腰にナイフをいくつか付けてはいるが、武器は多い方が良い。
「いくぞ」
そう言って駆け抜けるディル様。
一瞬にしてマユ達の姿が見えなくなる。
「さて。セイン様?早くお城へ戻ってしっかりお話を聞きたいですね」
「えぇ、アリシアを傷つけた罪、しっかりお支払いして頂かないといけませんからね」
楽しそうに微笑むマユと暗い笑みを浮かべるセインを横目に、竜王はため息をつく。
「お前の兄は死んだ方がマシという状態になるのではないか?」
「人間の馬鹿兄なんてもの、私は認めていません」
「……………」
ある意味でマトモだったアリシアとディルが向こうへ行ってしまった事を今更ながら激しい後悔に襲われる竜王は、その背にラルドとセインを乗せ、マユは横を飛んでもらい、ディルが早く帰ってくることを切望しながら城まで飛んでいくのだった。
◇◆◇◆◇
「アリシアは右を!」
「ディル様、伏せて!」
前方に魔獣の群を確認し、そのまま最短ルートを取るという事で、その中を突き抜ける格好になるが、邪魔な物は片付ける。
風の精霊による加護で、アリシアとカイルがディルから落ちるということは余程体制を崩さない限りないし、前方を突っ切る際には風の防御により魔獣の方が吹き飛ぶ。
その為、邪魔になるのは脇になり、恐怖に正気を失った魔獣が突っ込んできても迷惑なので、アリシアとカイルが左右に別れて魔獣を叩き斬っていく。
「これならばディル様は走ることにだけ専念できますね」
「アリシア!領地に着くまでにどちらが魔獣を多く切ったか勝負だ!よし!今度は俺が右な!」
「カイル兄様!右の方が魔獣が多いです!狡い!」
背に乗る二人の会話を聞きながら、ディルは心の中で戦闘狂…とため息をつくのだった。
そのため、私とカイル兄がディル様に乗ってレイドワークの現状把握と救援の為に戻る事にした。
マユも着いてきたがったが、精霊の情報網を聞いたセイン兄が黒い笑顔でマユに何かを呟いた後、残りメンバーはルフィル国へ戻ることになったのだ。
セイン兄も何か考えがあってルフィル国へ行くのだと思うけれど…
幸いな事にマユとは精霊を通じてディル様がやり取り出来るので、ありがたく領土へ向かう事にした。
「アリシア、これ」
そう言ってセイン兄は自分が使っていた剣を私に差し出した。
「存分に暴れて良いからね。こちらには聖女様がいらっしゃるので大丈夫だよ」
うん。魔獣相手じゃ確実に戦力過多ですね、と思いながら有り難く剣を受け取る。
一応私も腰にナイフをいくつか付けてはいるが、武器は多い方が良い。
「いくぞ」
そう言って駆け抜けるディル様。
一瞬にしてマユ達の姿が見えなくなる。
「さて。セイン様?早くお城へ戻ってしっかりお話を聞きたいですね」
「えぇ、アリシアを傷つけた罪、しっかりお支払いして頂かないといけませんからね」
楽しそうに微笑むマユと暗い笑みを浮かべるセインを横目に、竜王はため息をつく。
「お前の兄は死んだ方がマシという状態になるのではないか?」
「人間の馬鹿兄なんてもの、私は認めていません」
「……………」
ある意味でマトモだったアリシアとディルが向こうへ行ってしまった事を今更ながら激しい後悔に襲われる竜王は、その背にラルドとセインを乗せ、マユは横を飛んでもらい、ディルが早く帰ってくることを切望しながら城まで飛んでいくのだった。
◇◆◇◆◇
「アリシアは右を!」
「ディル様、伏せて!」
前方に魔獣の群を確認し、そのまま最短ルートを取るという事で、その中を突き抜ける格好になるが、邪魔な物は片付ける。
風の精霊による加護で、アリシアとカイルがディルから落ちるということは余程体制を崩さない限りないし、前方を突っ切る際には風の防御により魔獣の方が吹き飛ぶ。
その為、邪魔になるのは脇になり、恐怖に正気を失った魔獣が突っ込んできても迷惑なので、アリシアとカイルが左右に別れて魔獣を叩き斬っていく。
「これならばディル様は走ることにだけ専念できますね」
「アリシア!領地に着くまでにどちらが魔獣を多く切ったか勝負だ!よし!今度は俺が右な!」
「カイル兄様!右の方が魔獣が多いです!狡い!」
背に乗る二人の会話を聞きながら、ディルは心の中で戦闘狂…とため息をつくのだった。
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