【完結】聖女と共に暴れます

かずきりり

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20.第二王子

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ラルド…

「あ………あーーーーーー!まさか!!」

淑女にあるまじき絶叫を出してしまう。
思い出した。ラルド・ラスフィード。
アズール国の第二王子で、8歳の時に獣人になると謎めいた事を言って城と言わず国を飛び出した人。
目の前にいる男性は王妃様に似た顔立ちで、王妃様の深い緑の目を受け継いでいるし、国王の金髪と王妃様の水色の髪を受け継いだ金青髪だ。
ちなみに第一王子は国王に似ているのか、兄弟と言え似ては居ない。
かろうじて私は王妃様と交流があったから気がつけたのだろう。
幼い時に交流もなく、絵姿も知らず、あったとしても幼少期のものだろう。
ラルド様は更に苦笑しつつ

「ラルド、とだけ名乗っておきます」
「側近って…植民地計画に反対はないのですか?」

精霊と話していたのだろう、どこかを眺めていたマユがラルド様に視線を向け、問いかけた。
精霊…良いなぁ…現状把握が素早い………

「そもそもアズール国は無駄ではないですか?昔ながらのやり方を変えることもなく、新しい物を取り入れることもない。義理もなく人情もなく、騙し合いばかりの王族貴族。精霊が居るから平和なのに、それを知らず知ろうとせず驕り高ぶり、才能ある者を潰した結果が今となっているだけですよ」

王妃様に似た冷ややかな視線。感情の乗らない声。
アズール国を出てからの8年間で色々なものを見聞きしたのだろう、そんな意見を王族が述べた。

「レイドワーク一族に対し今回行ったことに関しては反吐が出ます。アリシア様には血が繋がって居るだけの者が申し訳ない事を致しました。マユ様におかれても大変申し訳ありません」
「悪いのは国王と第一王子です」
「あなたは何もしてません」

謝ることはないと私とマユが遠回しに伝えると、ディル様が遠い目をして言った

「…ただの脳筋だからな、それ。昔ながらの戦術を変えることなく、新しい剣術を取り入れることもなく、という意味だからな」
「アリシア含め、脳筋しかいない…」
「マユ?」

ディル様の言葉にマユが私含め脳筋だと事実極まりないことを呟き、否定はできないが少し牽制するために名前を呼ぶ。
これでも令嬢教育や王妃教育をしてきているので、さすがに脳筋だけみたいな言い方は時間と努力的に悲しくなる。
が、そうか。脳筋……ここではそれが通るし、そういう国なのか。

「ラルド様。馬を用意してください。あと服も」

私の言葉に一瞬目を見開いたラルド様だが、レイドワークの噂が後押ししたのだろう、頷くと部屋を出て行った。

「あ、じゃあ私も。馬はいらないですが、ズボンください~」

私が馬に乗るという事だけは理解したのか、マユはズボンを希望した。
飛ぶのね。飛ぶんですね。
その場合、確実にマユに置いていかれる未来しか見えない…………っ!
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