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19.人間です
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「何かあったのですか?」
「多分、あれかなぁ~…」
竜王様への問いかけに、目の前にいるマユが視線を彷徨わせながらポツリと呟く。
精霊ネットワークですね、何かすごく便利で羨ましいけれど、マユが私に我先にと伝えていない事柄ならば、そこまで大したことはないのでしょう。
「レイドワーク一族がルフィル国へ侵攻してきている」
前言撤回!大事だったぁあああああ!?
「…は…え?」
現在、アズール国で追放を受けた私。
領地独立のためにレイドワーク一族は領土を守っているはず…が、侵攻!?領民は!?
静かなパニックを起こしている私をよそに、回し蹴りした人が竜王様を親指で指差し、ディル様へ「ちょっと黙らせて置いて下さい」と伝えるとディル様は竜王様を縛り付けた上に置物のように放り投げていた。
「我が愚王が大変失礼を致しました。私からご説明させていただきます。まず愚王が駄文にてレイドワーク辺境伯へ文を送った事がきっかけとなり、その駄文にて辺境伯が怒り狂った上での侵攻となりました。」
清々しいくらいの罵りっぷりである。と、私の思考現実逃避の如く違う部分へ移行していた。
駄文ってアレよね…アリシアは預かったってやつよね…
すっかり忘れてたけど、お父様、行動を起こすの早すぎないかしら…?
ギギギ…と音がするのではというくらいのぎこちない動きでマユの方を向く。
「んっと…アリシアのお父さん達、持ち前の体力で馬を駆使して、結構早く領地へ帰ってみたいでね。ナイスタイミングで手紙を見て…どうやら私とアリシアが再会した頃にほぼ身一つでルフィル国へ向かったみたいでね………」
「いやいやいやいや、領地守るのは?計画では私放置の筈なんだけど?」
「どうも…アリシアは自分で自分の身を魔獣から守ってるだろうという考えはあったものの…まさか獣人に囚われるとは想定外だったようで…アリシアのお父さんとお母さんは八つ当たりの如く騎士団の目の前で魔獣狩りまくって返り血で高笑いして威嚇してるみたいで…お兄さん二人が猛スピードで向かってきてて………多分もう少しで着くよ…?」
「いやいやいや、ここまでそんな早く…」
「いや本当に。精霊達が『あれ、人間…?』って言ってる…」
「それは本当ですか!?」
まごう事なき人間です。失礼な。
マユと二人で会話しているとキラキラした目で入り込んでくる回し蹴りさん。
「人間でも素晴らしい人材がいたのですね!確かにレイドワーク辺境伯の噂は聞いて居ましたが、所詮は人間と思っていました!見てみたいですね!しかしたった二人で侵攻ですか!伝言では魔獣を狩り散らし猛スピードで村や町に侵入し抜けていくとしか聞いていませんでしたが」
うちの家族は珍獣じゃありません。失礼な。
「そもそも、お前も似たようなものだろう…その力技は人間と思えない」
「え、回し蹴りさんは人間なんですか?」
ディル様がため息をつきながら、言った言葉にマユが聞き返す。
すでに名前が回し蹴りさんになっているからか、回し蹴りさんは苦笑している。
「私はラルドと言います。竜王様の側近をしておりますので以後お見知りおきを」
「多分、あれかなぁ~…」
竜王様への問いかけに、目の前にいるマユが視線を彷徨わせながらポツリと呟く。
精霊ネットワークですね、何かすごく便利で羨ましいけれど、マユが私に我先にと伝えていない事柄ならば、そこまで大したことはないのでしょう。
「レイドワーク一族がルフィル国へ侵攻してきている」
前言撤回!大事だったぁあああああ!?
「…は…え?」
現在、アズール国で追放を受けた私。
領地独立のためにレイドワーク一族は領土を守っているはず…が、侵攻!?領民は!?
静かなパニックを起こしている私をよそに、回し蹴りした人が竜王様を親指で指差し、ディル様へ「ちょっと黙らせて置いて下さい」と伝えるとディル様は竜王様を縛り付けた上に置物のように放り投げていた。
「我が愚王が大変失礼を致しました。私からご説明させていただきます。まず愚王が駄文にてレイドワーク辺境伯へ文を送った事がきっかけとなり、その駄文にて辺境伯が怒り狂った上での侵攻となりました。」
清々しいくらいの罵りっぷりである。と、私の思考現実逃避の如く違う部分へ移行していた。
駄文ってアレよね…アリシアは預かったってやつよね…
すっかり忘れてたけど、お父様、行動を起こすの早すぎないかしら…?
ギギギ…と音がするのではというくらいのぎこちない動きでマユの方を向く。
「んっと…アリシアのお父さん達、持ち前の体力で馬を駆使して、結構早く領地へ帰ってみたいでね。ナイスタイミングで手紙を見て…どうやら私とアリシアが再会した頃にほぼ身一つでルフィル国へ向かったみたいでね………」
「いやいやいやいや、領地守るのは?計画では私放置の筈なんだけど?」
「どうも…アリシアは自分で自分の身を魔獣から守ってるだろうという考えはあったものの…まさか獣人に囚われるとは想定外だったようで…アリシアのお父さんとお母さんは八つ当たりの如く騎士団の目の前で魔獣狩りまくって返り血で高笑いして威嚇してるみたいで…お兄さん二人が猛スピードで向かってきてて………多分もう少しで着くよ…?」
「いやいやいや、ここまでそんな早く…」
「いや本当に。精霊達が『あれ、人間…?』って言ってる…」
「それは本当ですか!?」
まごう事なき人間です。失礼な。
マユと二人で会話しているとキラキラした目で入り込んでくる回し蹴りさん。
「人間でも素晴らしい人材がいたのですね!確かにレイドワーク辺境伯の噂は聞いて居ましたが、所詮は人間と思っていました!見てみたいですね!しかしたった二人で侵攻ですか!伝言では魔獣を狩り散らし猛スピードで村や町に侵入し抜けていくとしか聞いていませんでしたが」
うちの家族は珍獣じゃありません。失礼な。
「そもそも、お前も似たようなものだろう…その力技は人間と思えない」
「え、回し蹴りさんは人間なんですか?」
ディル様がため息をつきながら、言った言葉にマユが聞き返す。
すでに名前が回し蹴りさんになっているからか、回し蹴りさんは苦笑している。
「私はラルドと言います。竜王様の側近をしておりますので以後お見知りおきを」
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