19 / 65
18.落ち着いた朝に何かが起こった
しおりを挟む
1日かけてルフィル国に来たマユは、元気そうに見えても疲れていたらしく、部屋とお風呂の準備が出来たと聞くと、寝ると言って部屋へ下がっていった。
「アリシアは大丈夫?」
「私も少し部屋で休ませていただいて宜しいでしょうか」
「わかった。レイは溜まった書類の整理な」
「え!?」
ディル様の気遣いに便乗し、私も部屋で休むことにした。
退室する部屋からは竜王様の小さい悲鳴も聞こえるが、多分…いや確実に書類仕事が苦手なのだろう。
なんか想像できる。うん。
脳筋は脳筋……思わず家族の事を思い出す。
優秀な執事が居なければ、きっと書類は見ることなく燃やされていただろうし、そのため仕事も回ることはなかっただろう…。
そんな事を考えながら、ソファに深く腰掛け、背もたれにもたれてゆっくりしていると、そのまま意識が薄れていく。
思った以上に疲れていたのだろう。
◇◆◇◆◇
窓から明るい日差しと共に、鳥のさえずりが聞こえる。
うっすらと覚醒しつつある意識から目を開けようとするも、光の眩しさから少しだけ瞼を開く。
どうやら、あれからぐっすり休んだようで、今は朝のようだ。
起き上がり、テーブルの上にある水差しから水を入れて口に含む。
ここ獣人の国では侍女や執事と言ったものの仕事は多岐に渡る上に、自分の身の回りのことは自分でやる風習がある為、人間と違って朝から起床の声かけや着替えの手伝いなどしないようなのだ。
正直、座っていれば周りが勝手に仕上げてくれるという人形極まりない待遇は苦手だし、マユもこの国の待遇は最高!って両手をあげて喜びそうだな、と思う。
「アリシア!おはよう~!」
「おはよう、マユ」
朝食の席に行くと、すでにマユが座っていて満面の笑みで迎えてくれた。
竜王様とディル様はまだのようだ。
仕事をするより朝食を食べに来そうな竜王様なのだが、どうしたのだろうと少しは思うけれど、気にしないことにして食事を持ってきてもらうよう近くにいた者に頼む。
「自由…自由いい!自由だ!!!!!」
何かを噛み締めて感動しているマユ…
うん…むしろここは自由すぎる気がしないでもないが、マユが元居た世界を思えば、貴族世界の生活なんて束縛しかなかったのだろう。
そこへ加えて……………うん。なんとも言えない。
人目も気にすることなくリラックスした様子で食事をするマユを微笑ましく思っていると、ふいに外の騒がしさに気がつく。
「アリシア!ちょっと良いか!」
騒々しく扉を開けた竜王様に眉をひそめた瞬間、綺麗な回し蹴りが竜王様の顔に入る。
が、そこで少しふんばる程度で終わったのは獣人ならではの身体なのだろうか、回し蹴りをきめただろう人の舌打ちらしきものが聞こえる。
「アリシア様、申し訳ございません。少し大変なことになりまして」
舌打ちしたのを微塵も感じさせない落ち着いた雰囲気で顔を出して声をかけてきた人物に目をみはる。
金青色のさらりとした髪に、深い緑の瞳、どこか高貴さを感じさせる佇まい。
「…人は見かけによらないのね」
ぼそりとマユが呟いた言葉はきっと私にしか届いていないだろう。
高貴さを感じさせる人が綺麗な回し蹴りを入れたことですよね、わかります。
人間が相手だったら、確実にどこかへ飛んで行っていたでしょうね。
「アリシアは大丈夫?」
「私も少し部屋で休ませていただいて宜しいでしょうか」
「わかった。レイは溜まった書類の整理な」
「え!?」
ディル様の気遣いに便乗し、私も部屋で休むことにした。
退室する部屋からは竜王様の小さい悲鳴も聞こえるが、多分…いや確実に書類仕事が苦手なのだろう。
なんか想像できる。うん。
脳筋は脳筋……思わず家族の事を思い出す。
優秀な執事が居なければ、きっと書類は見ることなく燃やされていただろうし、そのため仕事も回ることはなかっただろう…。
そんな事を考えながら、ソファに深く腰掛け、背もたれにもたれてゆっくりしていると、そのまま意識が薄れていく。
思った以上に疲れていたのだろう。
◇◆◇◆◇
窓から明るい日差しと共に、鳥のさえずりが聞こえる。
うっすらと覚醒しつつある意識から目を開けようとするも、光の眩しさから少しだけ瞼を開く。
どうやら、あれからぐっすり休んだようで、今は朝のようだ。
起き上がり、テーブルの上にある水差しから水を入れて口に含む。
ここ獣人の国では侍女や執事と言ったものの仕事は多岐に渡る上に、自分の身の回りのことは自分でやる風習がある為、人間と違って朝から起床の声かけや着替えの手伝いなどしないようなのだ。
正直、座っていれば周りが勝手に仕上げてくれるという人形極まりない待遇は苦手だし、マユもこの国の待遇は最高!って両手をあげて喜びそうだな、と思う。
「アリシア!おはよう~!」
「おはよう、マユ」
朝食の席に行くと、すでにマユが座っていて満面の笑みで迎えてくれた。
竜王様とディル様はまだのようだ。
仕事をするより朝食を食べに来そうな竜王様なのだが、どうしたのだろうと少しは思うけれど、気にしないことにして食事を持ってきてもらうよう近くにいた者に頼む。
「自由…自由いい!自由だ!!!!!」
何かを噛み締めて感動しているマユ…
うん…むしろここは自由すぎる気がしないでもないが、マユが元居た世界を思えば、貴族世界の生活なんて束縛しかなかったのだろう。
そこへ加えて……………うん。なんとも言えない。
人目も気にすることなくリラックスした様子で食事をするマユを微笑ましく思っていると、ふいに外の騒がしさに気がつく。
「アリシア!ちょっと良いか!」
騒々しく扉を開けた竜王様に眉をひそめた瞬間、綺麗な回し蹴りが竜王様の顔に入る。
が、そこで少しふんばる程度で終わったのは獣人ならではの身体なのだろうか、回し蹴りをきめただろう人の舌打ちらしきものが聞こえる。
「アリシア様、申し訳ございません。少し大変なことになりまして」
舌打ちしたのを微塵も感じさせない落ち着いた雰囲気で顔を出して声をかけてきた人物に目をみはる。
金青色のさらりとした髪に、深い緑の瞳、どこか高貴さを感じさせる佇まい。
「…人は見かけによらないのね」
ぼそりとマユが呟いた言葉はきっと私にしか届いていないだろう。
高貴さを感じさせる人が綺麗な回し蹴りを入れたことですよね、わかります。
人間が相手だったら、確実にどこかへ飛んで行っていたでしょうね。
13
お気に入りに追加
432
あなたにおすすめの小説
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる
櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。
彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。
だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。
私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。
またまた軽率に短編。
一話…マリエ視点
二話…婚約者視点
三話…子爵令嬢視点
四話…第二王子視点
五話…マリエ視点
六話…兄視点
※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。
スピンオフ始めました。
「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と共に幸せに暮らします。
にのまえ
恋愛
王太子ルールリアと結婚をして7年目。彼の浮気で、この世界が好きだった、恋愛ファンタジー小説の世界だと知った。
「前世も、今世も旦那となった人に浮気されるなんて」
悲しみに暮れた私は彼に離縁すると伝え、魔法で姿を消し、私と両親しか知らない秘密の森の中の家についた。
「ここで、ひっそり暮らしましょう」
そう決めた私に。
優しいフェンリルのパパと可愛い息子ができて幸せです。
だから、探さないでくださいね。
『お読みいただきありがとうございます。』
「浮気をした旦那様と離縁を決めたら。愛するフェンリルパパと愛しい子ができて幸せです」から、タイトルを変え。
エブリスタ(深月カナメ)で直しながら、投稿中の話に変えさせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる