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8.フェンリルの獣人
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隣国ルフィル国
この国は人間が少数で、ほぼ獣人で構成されている国である。
王は5年に一回、トーナメント形式で戦い、一番強い者が治めるとされているが、ここ数十年は竜族が取り仕切っているらしい。
らしい、という曖昧でしかないのは、私の勉強不足だということはなく、そもそも情報自体が簡単なものしかないのだ。
そもそもアズール国は人間至上主義で、獣人を下等生物かのように差別しているためでもある。
「俺は獣人で間違いない。フェンリルのディルだ。アリシア・レイドワークで間違いはないか?」
初めて出会った獣人に、どう対応して良いのか、少し悩んでいたら、向こうから声をかけてくれた。
「そうだけど…どうして私を知っているの?」
「精霊たちに頼まれてルフィル国王の命令で迎えに来た。国王自ら動くと色々問題があるが、俺なら小さくなれば狼くらいに思われる程度だろうからな」
小さくなるって…実際はもっと大きいのかな…
というか精霊って?ルフィル国王自らってどうなっているの?
「マユという聖女が精霊に頼んだらしい。レイドワーク一族の元にもルフィル国から伝言が向かってるだろう。アリシアの方は何か不穏な様子だと精霊が言うから俺が来たまでだ。」
「マユが!?」
何をしているのだろう、マユは。
精霊なんて話、聞いたこともないんだけど…
何、聖女って色々規格外なの?
ぐぅうううう~~~~~~
緊張もほぐれたのか、いきなりお腹が空腹を訴える音を出してきた。
「っ…」
こちとら一応令嬢である。テノールの声からいって、年齢は不明だしフェンリルだろうとディルは男性。
恥ずかしげにチラっとディルに視線を投げると、銀の毛がフサフサ揺れているどころか、体自体ふるふる震えて、声を押し殺して笑っているのがわかる。
「休みなく馬車が走り続け、ここに捨てられたと聞く…早くルフィル国の王城へ向かおうか」
ひとしきり笑ったディルは、こちらを見て言い切った。
しかし、隣国へはここから馬でも七日かかったような記憶があるのだけど…
「…七日間、私は空腹状態を維持ですかね」
ぽつりと心の声が漏れたようで、ディルは目を見開いた後、また声を抑えて笑っている。
なぜ?
「そうか。アズールの国は獣人のことを全く知らないんだったな。俺の足なら一刻もかからん。普段の大きさに戻って走るつもりだしな」
サラっと言ったが、人間社会で生きて来た私としては、とんでもなく凄い事ではあるんだけど。
「では…お邪魔して…」
「念のため、風の精霊に守ってもらうが、しっかり捕まっているにこしたことはないぞ」
そう言ったディルの身体は大きくなり、四つ足歩行なのに顔は私の頭上より高くなった。
驚く暇もなく周りの風が舞ったかと思ったら、フワリと体が浮き、ディルの背にまたがる形となった。
私、一応ドレスなんですけどね、と思ったが、幼い頃はドレスで木登りしてたし、今更かと思い直す。
とりあえず今は空腹を満たすために、早くルフィル国へ連れていってもらおうと思い、しっかりとディルの毛にしがみついた。
…うん。ふわふわ。そして毛しか持つところがない。
ふわふわもふもふを堪能しようと思った瞬間、とてつもない風が吹き抜けた。
今、ディルが走ったのだろう。
物凄いスピードで景色が変わるが、私にはそよ風程度しか感じない。
さっきディルが言っていた風の精霊によるものなのだろうか。
怒涛のように色々な経験をしているような気がするが、今気を抜いたら寝てしまいそうだな、と思いつつ、食事にありつけるまではと気を張ることにした。
この国は人間が少数で、ほぼ獣人で構成されている国である。
王は5年に一回、トーナメント形式で戦い、一番強い者が治めるとされているが、ここ数十年は竜族が取り仕切っているらしい。
らしい、という曖昧でしかないのは、私の勉強不足だということはなく、そもそも情報自体が簡単なものしかないのだ。
そもそもアズール国は人間至上主義で、獣人を下等生物かのように差別しているためでもある。
「俺は獣人で間違いない。フェンリルのディルだ。アリシア・レイドワークで間違いはないか?」
初めて出会った獣人に、どう対応して良いのか、少し悩んでいたら、向こうから声をかけてくれた。
「そうだけど…どうして私を知っているの?」
「精霊たちに頼まれてルフィル国王の命令で迎えに来た。国王自ら動くと色々問題があるが、俺なら小さくなれば狼くらいに思われる程度だろうからな」
小さくなるって…実際はもっと大きいのかな…
というか精霊って?ルフィル国王自らってどうなっているの?
「マユという聖女が精霊に頼んだらしい。レイドワーク一族の元にもルフィル国から伝言が向かってるだろう。アリシアの方は何か不穏な様子だと精霊が言うから俺が来たまでだ。」
「マユが!?」
何をしているのだろう、マユは。
精霊なんて話、聞いたこともないんだけど…
何、聖女って色々規格外なの?
ぐぅうううう~~~~~~
緊張もほぐれたのか、いきなりお腹が空腹を訴える音を出してきた。
「っ…」
こちとら一応令嬢である。テノールの声からいって、年齢は不明だしフェンリルだろうとディルは男性。
恥ずかしげにチラっとディルに視線を投げると、銀の毛がフサフサ揺れているどころか、体自体ふるふる震えて、声を押し殺して笑っているのがわかる。
「休みなく馬車が走り続け、ここに捨てられたと聞く…早くルフィル国の王城へ向かおうか」
ひとしきり笑ったディルは、こちらを見て言い切った。
しかし、隣国へはここから馬でも七日かかったような記憶があるのだけど…
「…七日間、私は空腹状態を維持ですかね」
ぽつりと心の声が漏れたようで、ディルは目を見開いた後、また声を抑えて笑っている。
なぜ?
「そうか。アズールの国は獣人のことを全く知らないんだったな。俺の足なら一刻もかからん。普段の大きさに戻って走るつもりだしな」
サラっと言ったが、人間社会で生きて来た私としては、とんでもなく凄い事ではあるんだけど。
「では…お邪魔して…」
「念のため、風の精霊に守ってもらうが、しっかり捕まっているにこしたことはないぞ」
そう言ったディルの身体は大きくなり、四つ足歩行なのに顔は私の頭上より高くなった。
驚く暇もなく周りの風が舞ったかと思ったら、フワリと体が浮き、ディルの背にまたがる形となった。
私、一応ドレスなんですけどね、と思ったが、幼い頃はドレスで木登りしてたし、今更かと思い直す。
とりあえず今は空腹を満たすために、早くルフィル国へ連れていってもらおうと思い、しっかりとディルの毛にしがみついた。
…うん。ふわふわ。そして毛しか持つところがない。
ふわふわもふもふを堪能しようと思った瞬間、とてつもない風が吹き抜けた。
今、ディルが走ったのだろう。
物凄いスピードで景色が変わるが、私にはそよ風程度しか感じない。
さっきディルが言っていた風の精霊によるものなのだろうか。
怒涛のように色々な経験をしているような気がするが、今気を抜いたら寝てしまいそうだな、と思いつつ、食事にありつけるまではと気を張ることにした。
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