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4.聖女と大親友

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「異世界には、そういった物語があるのね」

殿下に見つからないよう、裏庭で一番大きな木の上でマユとティータイムが恒例となった。
殿下の婚約者という肩書きもあって、一応令嬢っぽく振舞っているが、本来はこうやって木登りしている私としては、マユ様とはマナー関係なしに付き合えるのは心が安らぐのだ。
あまりに気が合いすぎて、今や敬語もなく、くだけた感じだ。
もはや仲の良い友達。マユ曰く親友!だ。

「そうなのよ。そうなると私ってヒロインで、悪役令嬢を断罪してハッピーエンドというゲームを元にして、悪役令嬢が主役となりヒロインに逆断罪する!って言っても、私は物語の中のヒロインのように欲はないし。つか、殿下がありえない。アレと結婚なんて無理。無理無理無理。」

ため息混じりに話していたマユだが、後半は物凄く嫌そうに顔を歪めた。
異世界の物語も面白いが、そもそもマユがこちらの世界に来てからの話も聞いていたが、確かにため息しか出ないような状態だった。

マユは向こうの世界でも学院のような所に通っていたが、そもそもそこまで勉強もしておらず、友達と遊んでいたらしい。
おしゃれをして、美味しいものを食べて、遊ぶ物もたくさんあるような世界で、マナーはこの世界ほど厳しくもない。
身分に囚われず、皆が皆、自由に生きているような世界だったらしい。
それがいきなりこちらの世界に来た上に聖女だと言われて戸惑っている内に、殿下がマユの世話係として付きまとってきたらしい。
最初は心細かった為、放置されず助かっていたようだが、この世界で生きて行くと切り替え、聖女としての役割を学ぼうとすると「マユは居るだけで良いんだ」
この世界のマナーを学び、あまりの厳しさに涙を浮かべつつ頑張っていると、マナー講師を見かけなくなり「あいつはマユを泣かせたから辞めさせた」
女は女同士と思い、他の人とも交流を深めようとしたら「お前らのような者がマユに近づくな」
挙句、ずっと側に居るというので、全く気がぬけなかったそうだ。
自分の意思というものがなくなりそうで、存在がよく分からなくなるほどになってきた時、殿下に婚約者がいるという噂を聞き、私が昼休みに裏庭に居ると調べ、逃げて木の上で待っていたそうだ。

「すとーかー、だっけ?」
「そう!ストーカー!異常な執着心!付きまとい!相手の迷惑を考えない押し付け!あやつはストーカー!」

そのまま言ったら不敬だと騒がれそうだが、この世界の人達はストーカーという言葉の意味を知らない。
マユの世界での言葉だから。
だからマユ曰く、殿下はストーカーという呼び名が定着している。
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