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1.王家と辺境伯
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人間・獣人・精霊・魔獣など、様々な生き物が生息して居る世界で、アズール国というのは『人間』のみで構成されて居ると言われている国だった。
そもそも国の成り立ちが、精霊を見る事が出来ない人間は獣人に虐げられ、魔獣に殺されながらも生き延びてきた人たちを憐れに思った神が異世界から聖女を喚び、荒れ果てた地を聖女の力で植物を植え、人が住める環境を整えたとか。
そしてアズール国では人間達が人間達だけでのびのびと暮らせるようにとか。
そんなこんなで、平和に長いあいだ暮らしていた人間の王様に緊張感がなくなり、第一王子は脳内お花畑とか。
…失礼。事実ですので。
そんな王家に対し、言葉にせずとも民衆の総意は同じだという現在の状況。
緊張感がなくなったと言え、国王は民意を理解していて、第一王子が16歳となる年、王立学院に入学して変な虫(令嬢)がつく前にと、民衆に慕われている辺境伯の14歳になる娘との婚約を王命にて取り決めた。
そう、その辺境伯の娘が私、アリシア・レイドワークである。
レイドワーク辺境伯領は国境沿いにあり、魔獣の侵略から国を守る仕事がある。
そのためレイドワーク一族は皆血気盛んで、領主である父は自らが率先して魔獣を狩り、それを領民に食として振舞うような土地だ。
むしろ父的には「肉をやるから畑でとれた余っている野菜くれ!」という感じで、物々交換が基本となっていて、税率は最低限だったりする。
両親や二人の兄と育った私も、世のご令嬢が宝石だドレスだマナーだ、といったことより、馬に乗り駆け回り、魔獣を狩る方が好きだ。
「アリシアが王命にて、第一王子の婚約者と決まった」
と、父が告げた時
「破棄で」
とすかさず言った母。
「王命だから断れないだろ。殺すか?」
と17歳になる年の長男が単細胞のように言う。
「不敬だぞ。隣国に引っ越すか?」
と王太子と同じ16歳となる次男が言う。
家族や領民に迷惑をかけることもできない為、王妃教育だの、殿下との仲を深めるために行う月一回のお茶会だのの為、私は王都の屋敷に兄二人と共に住むことにした。
本来であれば、私も16歳になる年から3年間だけ学院に通うために王都で我慢して生活するだけだったのにな、と思う。
◇◆◇◆◇
そして、第一王子ハイルド・ラスフィード殿下との初めての顔合わせ。
国王、王妃夫妻と殿下。
私の両親と、私の6人で、お城の中庭でお茶をしている時に、殿下は言った。
「どうして私が辺境伯の田舎娘ごときと婚約せねばならぬのだ。しかし父上が決めたことには逆らえないからな。仕方なく婚約してやる」
焦った国王様だが、息子を窘める言葉は出てこないようだ。
「そうですね、王命には逆らえませんから。」
裏に「こっちも同じだ」という意味をこめ、私も言う。
殿下は、なんだこいつ。という顔をし、国王様は真っ青になっているだけで何も言わない。
そんな国王様でも立てる為か、ただ国王様と息子に冷たい目線を投げかけた王妃様は、私に対し申し訳なさそうに目を向けた。
そもそも国の成り立ちが、精霊を見る事が出来ない人間は獣人に虐げられ、魔獣に殺されながらも生き延びてきた人たちを憐れに思った神が異世界から聖女を喚び、荒れ果てた地を聖女の力で植物を植え、人が住める環境を整えたとか。
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そのためレイドワーク一族は皆血気盛んで、領主である父は自らが率先して魔獣を狩り、それを領民に食として振舞うような土地だ。
むしろ父的には「肉をやるから畑でとれた余っている野菜くれ!」という感じで、物々交換が基本となっていて、税率は最低限だったりする。
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とすかさず言った母。
「王命だから断れないだろ。殺すか?」
と17歳になる年の長男が単細胞のように言う。
「不敬だぞ。隣国に引っ越すか?」
と王太子と同じ16歳となる次男が言う。
家族や領民に迷惑をかけることもできない為、王妃教育だの、殿下との仲を深めるために行う月一回のお茶会だのの為、私は王都の屋敷に兄二人と共に住むことにした。
本来であれば、私も16歳になる年から3年間だけ学院に通うために王都で我慢して生活するだけだったのにな、と思う。
◇◆◇◆◇
そして、第一王子ハイルド・ラスフィード殿下との初めての顔合わせ。
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