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教会の場所も諦めた。
ドレスの形も諦めた。
どうせ好きどころか、何とも思っていない相手との契約結婚だ。形なんて、どうでも良い。こだわりだって、ない。
けれど、やはり一生に一度の事だから、他人に決められたものではなく、自分で選びたかった気持ちはある。
ただそれ以上に、義姉の言いなりとなっているジャンに対して、失望しか感じられない。
これから夫婦となり一緒に侯爵家を盛り立て、領地を経営していくのだ。それなのに、お互いの意見を出し合って、すり合わせる事も出来ないのだ。二人で話し合って、自分の意見を譲ったのなら、まだ納得がいくというのに。
――なのに。
「ブーケは白い百合で、飾りは白いバラにしましょうか! 私の夢だったの!」
今日も何故かにこやかに、ブリジット嬢は打ち合わせに同席している。私の実母どころか、義母となる侯爵夫人でさえも遠慮しているというのに。
「夢? 義姉さん、どういう事?」
「だって……どうせ私は結婚できないわ……」
ジャンの問いかけに、悲しそうな表情を浮かべたブリジット嬢。
「だって、こんなにも身体が弱いんですもの……どこの貴族令息も、お嫁になんて貰ってくれないわ……」
「義姉さん……」
今にも溢れそうな涙に、業者の人も思わず涙ぐんでいる。
確かに、どこかに嫁いで夫人となったとしても、その家を盛り立てないといけない。家を守り、家を切り盛りし、書類もさばく。更には茶会を開催したり、出席等して、横の繋がりを強化していく。まさに体力勝負だ。
「良いよ! 義姉さんの夢を詰め込んだ結婚式にしよう!」
「まぁ! 本当に!? ありがとう! ジャン!」
怒気を孕んだ、床を踏みつける音がした。
視線をそちらに向けると、マリーの眉間に皺が寄り、目が完全に吊り上がっている。
誰の結婚式だ!と、怒鳴りそうになった私は、またもマリーのお陰で冷静になれた気がする。……怒りがなくなったわけではないが。
「テーブルクロスは、この色でどうかしら」
「義姉さん、ナプキンの色はどうする? 折り方も色々あるよ」
「ねぇ! キャンドルも注文しましょう?」
「義姉さんの望む通りの式にしたら良いよ」
「嬉しいわ!」
私を差し置いた二人が、どんどん式の形を決めていく。
一体、誰が新婦なんだと平手打ちたい気持ちがフツフツと沸き上がると共に、二人がどんどん人間ではない何かに見えてくる。
業者の人達はチラチラと私の顔色を窺いつつも、結婚できないだろう身体の弱い侯爵令嬢に同情しているのは、丸わかりだ。
私は小さく息を吐いて、出された紅茶を飲みながら、早くこのくだらない時間が終わるのを願った。
ドレスの形も諦めた。
どうせ好きどころか、何とも思っていない相手との契約結婚だ。形なんて、どうでも良い。こだわりだって、ない。
けれど、やはり一生に一度の事だから、他人に決められたものではなく、自分で選びたかった気持ちはある。
ただそれ以上に、義姉の言いなりとなっているジャンに対して、失望しか感じられない。
これから夫婦となり一緒に侯爵家を盛り立て、領地を経営していくのだ。それなのに、お互いの意見を出し合って、すり合わせる事も出来ないのだ。二人で話し合って、自分の意見を譲ったのなら、まだ納得がいくというのに。
――なのに。
「ブーケは白い百合で、飾りは白いバラにしましょうか! 私の夢だったの!」
今日も何故かにこやかに、ブリジット嬢は打ち合わせに同席している。私の実母どころか、義母となる侯爵夫人でさえも遠慮しているというのに。
「夢? 義姉さん、どういう事?」
「だって……どうせ私は結婚できないわ……」
ジャンの問いかけに、悲しそうな表情を浮かべたブリジット嬢。
「だって、こんなにも身体が弱いんですもの……どこの貴族令息も、お嫁になんて貰ってくれないわ……」
「義姉さん……」
今にも溢れそうな涙に、業者の人も思わず涙ぐんでいる。
確かに、どこかに嫁いで夫人となったとしても、その家を盛り立てないといけない。家を守り、家を切り盛りし、書類もさばく。更には茶会を開催したり、出席等して、横の繋がりを強化していく。まさに体力勝負だ。
「良いよ! 義姉さんの夢を詰め込んだ結婚式にしよう!」
「まぁ! 本当に!? ありがとう! ジャン!」
怒気を孕んだ、床を踏みつける音がした。
視線をそちらに向けると、マリーの眉間に皺が寄り、目が完全に吊り上がっている。
誰の結婚式だ!と、怒鳴りそうになった私は、またもマリーのお陰で冷静になれた気がする。……怒りがなくなったわけではないが。
「テーブルクロスは、この色でどうかしら」
「義姉さん、ナプキンの色はどうする? 折り方も色々あるよ」
「ねぇ! キャンドルも注文しましょう?」
「義姉さんの望む通りの式にしたら良いよ」
「嬉しいわ!」
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一体、誰が新婦なんだと平手打ちたい気持ちがフツフツと沸き上がると共に、二人がどんどん人間ではない何かに見えてくる。
業者の人達はチラチラと私の顔色を窺いつつも、結婚できないだろう身体の弱い侯爵令嬢に同情しているのは、丸わかりだ。
私は小さく息を吐いて、出された紅茶を飲みながら、早くこのくだらない時間が終わるのを願った。
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