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番外編

番外.双子たち

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 冷や汗を垂らしながらも執務を行うが、当たり前のように集中なんて出来ていない。
 痛みのある部分を無意識的に擦るのは、人間の本能なのか。

「アレス~、大丈夫?」
「お腹痛い?」
「アイとサクラか……」

 いつの間に忍び込んだんだ、なんて言葉は無意味だろう。
 なんてったって相手はスワ様と叔父上の子ども。更に言えば剣聖と聖女の称号を持って生まれた双子なのだ。

「ちょっと良い?」
「スオウ?」

 言って、お腹を触って強く押したりするのは、スオウだ。スオウもスワ様と叔父上の子どもで……何と勇者の称号を持って生まれた。本当にあの二人は一体なんなのだと思う。

「ちょっと待っていてね」
「私も行くー!」
「私もー!」

 三人は急いで執務室から出て行く。……薬でも用意してくれるのだろうか。最近は気分が悪くて何も喉が通らない。というか、原因は分かっているのだけれど……。

「あ、蘇芳! ワジムが探してたよ?」
「あいつ弱い!」

 ……騎士団長相手に弱いとは。さすが勇者……ワジムが聞いたらへこむだろうけれど事実だから仕方がない。
 スオウの相手になるのは、スワ様かキラしか居ないだろう……甥の将来が怖い。怖すぎる。いや、甥だけでなく姪もだけれど。

「あれ? アレスが死んでる」
「勝手に殺さないで……」

 開け放たれた執務室の中で屍と化しているのに気が付いたスワが声をかけ、入ってくる。

「どうしたの?」
「ちょっと……お腹痛くて……食欲もあまりないんだ」
「……アレス、それ出てるの?」

 スワ様の率直な一言に、ギクリとした。
 無言でいると、スワ様の鋭い視線が突き刺さり、正直に言えというオーラが殺気のように漂う中で観念して口を開く。
 ……一週間程、出ていない、と。





「アレス! 出来たよ~!」
「それは……?」

 スオウが持ってきた料理は初めて見るものだった。

「便秘には梅流し!」
「あと、水溶性食物繊維の海藻と不溶性食物繊維のきのこ、不飽和脂肪酸のナッツとオリゴ糖の果物、発酵食品も持ってきたよ!」
「大きな声で言わないでくれるかなぁ!?」

 執務室とは言え、そんな大声で言われたら恥ずかしくて仕方ない。
 アイとサクラの手には料理でなく食材があるのは助かった。今食べろと言われても食べられないから、あとで料理長にでも渡しておけば良いだろう。
 まずはスオウの手にある、食べやすそうな料理に手をつける。意外と食べやすくて、酸味が食欲を後押ししてくれる感じだ。

「……それ、誰が作ったの?」
「サクラだよ!」
「空腹時に梅流し……しかも料理スキルを持つサクラが作ったのかぁ……」

 食べ終えた後に聞こえたスワ様の言葉。
 悪い予感でもあったのだろうか、それは見事に的中した。料理スキル……なめてはいけない。

「いつまでもトイレにこもられては執務が進まないんですけど!?」
「前に居ないで! どっか行って! そう言われても仕方ないだろー!?」

 見事にトイレの住人となった。
 そして何より一番鬼だったのは、トイレの中にまで書類を詰め込んだピーターだと思う……。国王に人権はないの……か?
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