召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり

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番外編

番外.アレスの春

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「聖女様に是非お会いしたいものですわ」
「聖女様とお近づきになりたいのです!」
「聖女様が開発する料理に魅了されてしまいまして……」

 アレス・ヴァン・ダレンシア王太子の婚約者を探す為、未だ婚約者が居ない、もしくは何かしら理由があって婚約が白紙になった令嬢達を集めてのお茶会。歳が近い令嬢で瑕疵がなく婚約者は居ないといった者は少ないので、近隣諸国にまで及んでいるのだが……。

「んんんんんんっっ」
「王太子として、その呻き声はどうかと」

 宰相の子息であるピーター・グランキン侯爵令息が苦言を呈してきたが、アレスは更に眉間へ皺を寄せた。

「誰も彼もが聖女、聖女、聖女と! 未来の王妃の座よりスワ様!」

 唾を飛ばす勢いで喚くアレスに対し、ピーターは溜息をついた。
 今代の聖女であるスワは、聖獣だけでなく魔王や古龍を従え、瘴気の渦を浄化する程の力を持つ。更には食事改革までしてみせたのだ。
 ただでさえ聖女が二人召喚された事で注目されていたのが、市井でのびのび暮らしていて、王城でお目にかかる事も出来ないとなれば、見事にレアキャラと化している。
 おかげで、婚約者候補となる令嬢達は皆が皆、スワに一目会いたいという令嬢ばかりだ。

「僕の婚約者を探す筈なのだけれど……」
「仕方ないでしょう……。明日は隣国の伯爵令嬢です。大きな商会を手掛けているらしいですが」
「レシピ目当てかな」

 国内の令嬢達は勿論、近隣の王族や公爵、侯爵の家柄は全滅し、残っているのは伯爵の位になったのだ。王族としてはギリギリだろう。
 ここまでくれば前途多難というより、もはや期待すらしておらず、そんな言葉が零れた。





「それで、アレス王太子殿下は聖女様の異世界知識を使い、どういった計画で国の経済を潤すお考えなのですか?」
「……えっと……?」

 いつもと同じようにスワに会いたいと言わんばかりに、スワを褒め称える言葉が放たれるかと思っていたアレスは呆気にとられた。
 隣国のマリーティア・ロロナ伯爵令嬢は、ワフワしたブロンドの髪に可愛らしい大きなピンクの瞳をした可愛らしい顔立ちだ。怒ったような表情をしたが、それでも可愛らしさが勝っており怖くはない。

「まさか何も考えていらっしゃらないと……? 全く違う文明を遂げた……もしかするとこの世界よりも更なる発展を遂げている異世界の知識の恩恵を……?」
「いや、そういうわけではないけれど……」

 むしろオトが何かしら作っては流行りに乗っているのだ。
 オトはオトで事業を行っているのだから、それを邪魔する気はない。それにスワに至っては自由気ままで制限をかける方が恐ろしい。というかどこかへと行ってしまっている以上、それを捕まえる事自体が難しい話なのだ。
 その事を簡潔に伝えた後、思っていた事を率直に伝える。

「君は聖女に会いたいとは思わないのか?」
「思いますわ! それはもう素晴らしい功績に、謙虚なお方」

 謙虚ではなく面倒臭がっているだけだけれどと口を挟む事はやめて、大人しく聞き役に徹する。

「しかし異世界の知識を使った商品は私の商会に大打撃を与えました。しかし赤字になっても、その商品の素晴らしさは称えるしかないのです! そして問題は女性向けが多い事なのです!」
「なるほど」

 オト自身、自分が欲しいと思った物を最優先して制作している事が原因だろうけれど、自分が欲しいと思わないものを誰が買うんだという理論がある以上、こちらも口を出しにくい。

「商品開発の論議をしたいですし、レシピも子ども向けのアレンジを相談したいですね! 面白い発想の魔道具も作られているようなので、私も携わってみたいです! 異世界の知識は国にとって発展の宝なのですよ!」

 確かにシロ曰く、他国では聖女の知識を使って色々発展していったと言っていた。

「……聖女様の使い方には気を付けるべきだと思いますが」

 過去の歴史から何かを学んだのか、じとりとした目がこちらを向いたけれど、スワは勝手に旅立ったのだ。
 むしろ馬鹿な兄と父の尻ぬぐいをした上に、叔父上にまで見捨てられた僕が一番の被害者ではないか。国王の座がご褒美なんて思えないどころか要らない荷物だ。

「……自由を与えるのが一番いいんだよ……」

 むしろ僕が自由を欲しているんだけれどという心を含んで、溜息をつきながら答えれば令嬢は納得したように頷いた。
 今までとは違う。
 内容はともかく会話として成り立っており、国の未来を見据えられる令嬢。周囲で者達は微笑ましく見守り、頷きあっていた事なんてアレスは知らない。
 そして、あれよあれよという間に令嬢との婚約が整ってしまい、尻に敷かれながらもうまく国のかじ取りが出来る未来は、もう少し先の話。
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