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番外編
番外.歴代聖女達の追憶-二巻刊行記念SS
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「女は男の三歩後ろ歩くものですよ」
何故?という言葉が出る代わりに、首を傾げた。全く持って理解が不能だったからだ。
だけれど、そんな私の様子を見ると、口角を上げて怪しい微笑みを携えて続きの言葉を放った。
「男を優位に立たせて、自尊心を刺激してプライドを守って、上手く手のひらで転がせれば扱いやすいでしょう?」
「なるほど! 流石は聖女様です!」
そんな聖女様は、浴衣というものを開発し、発酵食品というものも作り出した。そして、王族をうまく言いくるめて平民と結婚し、海の近くにある村で暮らした。
とある聖女様は、とても気弱で王侯貴族の言いなりだった。 そんな時は私がそれを制し、聖女様の負担にならないように動く。
とある聖女様は、とても清純で、皆の為にと動きまくっていた。過労で倒れたり、道具のように使われていく聖女様を守る為に動いた事もある。
――聖女様と言っても、その人によって全く違う。
色んな聖女様が居て、色んな感情があって、色んな価値観がある。
望むものも千差万別ならば、守り方も変わってくるというものだ。
異世界から来た聖女という、たった1つの共通点以外は全て違った。
そして、人間という種族は、全ての個体で同じものが1つとしてない事も聖女様を通して知った。
「あちらの世界では、こういう歴史があってね……」
「こういう計算式があるの」
「医療という技術が進んでいるのよ。細菌という目に見えないものがね……」
「向こうの政治は民主主義というもので……」
色んな聖女様から、色んな知識を貰う。
それは私だけでなく、聖女様を呼んだ国自体も、その知識の恩恵を受けた。
方言というものもあると知った。
せめて向こうの知識を詰め込めば、今後の聖女様達とも楽しく話せるのではないかと、私はいつも色々学ぶ事にしていたのだ。
――そして。
「シロ。口が悪い」
「そうですか?」
「いてこますなんて言葉、使わないんだけど……」
そういえば方言だったかもしれないと思いながら、私は更に言葉を続けた。
「スワ様はよく行っていますよね! 殴り倒すという意味ではありませんでしたか?」
「シロー!?」
「ちょ……」
「なるほど」
慌てるスワ様に、引くルーク。しっかり頷くフェスは理解してくれているようだ。
周囲には馬鹿共の死屍累々……ではなく、意識を削ぎ落された者達。
「怪我なんて唾つけておけば治ります! スワ様のお力を使うまでもない!」
「いや、流石にそれ迷信では……」
なるほど。迷信ですか。ならば……
「熱湯消毒でもしますか?」
「トドメ差す気か!?」
今日も今日とて楽しい日々を過ごしているけれど、スワ様とは長く一緒に居たいと願ってしまう。
初めて名前をくれた聖女様。聖女様を聖女様と呼ぶ事を許さず、スワ様と名前で呼ばせていただける存在なのだ。
そして……人間だけでなく、魔王や果てには古龍まで合流してくるスワ様の元は、また違った学びをする事も出来、いつもと違う日常を送れるのだ。
それを、とても楽しく心地いいと思える。
何故?という言葉が出る代わりに、首を傾げた。全く持って理解が不能だったからだ。
だけれど、そんな私の様子を見ると、口角を上げて怪しい微笑みを携えて続きの言葉を放った。
「男を優位に立たせて、自尊心を刺激してプライドを守って、上手く手のひらで転がせれば扱いやすいでしょう?」
「なるほど! 流石は聖女様です!」
そんな聖女様は、浴衣というものを開発し、発酵食品というものも作り出した。そして、王族をうまく言いくるめて平民と結婚し、海の近くにある村で暮らした。
とある聖女様は、とても気弱で王侯貴族の言いなりだった。 そんな時は私がそれを制し、聖女様の負担にならないように動く。
とある聖女様は、とても清純で、皆の為にと動きまくっていた。過労で倒れたり、道具のように使われていく聖女様を守る為に動いた事もある。
――聖女様と言っても、その人によって全く違う。
色んな聖女様が居て、色んな感情があって、色んな価値観がある。
望むものも千差万別ならば、守り方も変わってくるというものだ。
異世界から来た聖女という、たった1つの共通点以外は全て違った。
そして、人間という種族は、全ての個体で同じものが1つとしてない事も聖女様を通して知った。
「あちらの世界では、こういう歴史があってね……」
「こういう計算式があるの」
「医療という技術が進んでいるのよ。細菌という目に見えないものがね……」
「向こうの政治は民主主義というもので……」
色んな聖女様から、色んな知識を貰う。
それは私だけでなく、聖女様を呼んだ国自体も、その知識の恩恵を受けた。
方言というものもあると知った。
せめて向こうの知識を詰め込めば、今後の聖女様達とも楽しく話せるのではないかと、私はいつも色々学ぶ事にしていたのだ。
――そして。
「シロ。口が悪い」
「そうですか?」
「いてこますなんて言葉、使わないんだけど……」
そういえば方言だったかもしれないと思いながら、私は更に言葉を続けた。
「スワ様はよく行っていますよね! 殴り倒すという意味ではありませんでしたか?」
「シロー!?」
「ちょ……」
「なるほど」
慌てるスワ様に、引くルーク。しっかり頷くフェスは理解してくれているようだ。
周囲には馬鹿共の死屍累々……ではなく、意識を削ぎ落された者達。
「怪我なんて唾つけておけば治ります! スワ様のお力を使うまでもない!」
「いや、流石にそれ迷信では……」
なるほど。迷信ですか。ならば……
「熱湯消毒でもしますか?」
「トドメ差す気か!?」
今日も今日とて楽しい日々を過ごしているけれど、スワ様とは長く一緒に居たいと願ってしまう。
初めて名前をくれた聖女様。聖女様を聖女様と呼ぶ事を許さず、スワ様と名前で呼ばせていただける存在なのだ。
そして……人間だけでなく、魔王や果てには古龍まで合流してくるスワ様の元は、また違った学びをする事も出来、いつもと違う日常を送れるのだ。
それを、とても楽しく心地いいと思える。
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