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朝、身支度を済ませて朝食をとりに下に降りると忙しいと聞いていたソレイユが居て、エルシャールは彼と食事をすることになった。
ザジにもう何をしても問題ないとお墨付きを得てから初めてソレイユが向かいに座っていたため、エルシャールは度肝を抜かれた。

「……お、おはようございます、ソレイユ様」
「おはようございます」

余所行きモードで微笑まれてエルシャールはその笑顔の裏に隠された本音に怯えた。
ここにエルシャールが来てから一度も一緒に朝食を取らなかったソレイユがいる。
それだけでエルシャールは美味しいはずの朝食の味もわからないほど緊張していた。

「エルシャール」
「はい」
「乗馬を習いたいと言っていると伺いました」

食後のデザートをゆっくりと食べながらソレイユが立ち去る事を願っていたエルシャールは名前を呼ばれて、ソレイユの方を見た。

(随分お疲れのようだけど大丈夫かしら……?)

いつも整った目の下にうっすらと隈が見えて、エルシャールはソレイユが仕事帰りで朝食を食べているのかもしれないとあたりをつけた。
食事もあまり進まないようで、デザートに至っては一口も口をつけられていない。

(美味しいのにもったいない)

そう考えていた時に不意打ちで乗馬の話を持ち出されてエルシャールは身体を捻ってナーサの方を向いた。

(まさか、私の先生はソレイユ……?)

言葉にしないもののエルシャールが言いたい事は伝わったらしい。

「はい。私が知る中でも一番馬の扱いがお上手ですから。それにソレイユ様も今日と明日は休暇を頂いたそうです」
「連日働きづめだったから陛下が無理矢理お休みをくださって……エルシャールが良ければ私が乗馬を教えましょう」
「お疲れなのに……そんなことお願いできません」

エルシャールが気を利かせて答えると、ソレイユはナーサがみていない事もあってか、眉間にしわを寄せて明らかに機嫌が悪くなる。

「私では力不足だと?」
「いいえ!そんなこと……」
「では食後1時間ほどしたら部屋に迎えに行きます」

言質を取られてエルシャールが茫然としているとソレイユはにこやかな笑顔に戻り、先に部屋を出ていく。
その背中を見送っていたエルシャールはナーサに声をかけられてようやく自分がソレイユと乗馬に出かける事になった事実を受け入れた。

(私、もしかして乗馬中に殺されるか、捨てられる……?)
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