よくある令嬢転生だと思ったら

甘糖むい

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「……ああ! ソレイユ様、よくエルシャール様を止めてくださいました」
ナーサがエルシャールを追いかけて階段を下りてくると、ソレイユを見つけて安堵したような声を出した。

「ごめんなさいナーサ、ソレイユ様もご迷惑をおかけしてしまって……」

じわじわと赤くなる頬を自覚して俯いてドレスを握りしめたエルシャール。
恥ずかしくて穴があったら今すぐ入りたくて仕方がなかった。

「戻るぞ」

耳元で言われて返事をする前にエルシャールは覚えのある浮遊感に襲われた。
ふわりと、ドレスの裾が膨らんでソレイユの顔が至近距離に見えてエルシャールは自分がまたソレイユに抱えられている事に身を固くした。

「いつになったら慣れるんだ」

自分の腕の中で固まったままのエルシャールにソレイユは呆れたような声を出した。
そう言われて、エルシャールはせめてもの反抗とばかりにソレイユを睨むが、彼にはまったく効かないようで鼻で笑われてしまう。

「ナーサ、先に行って準備をしてください」
「お任せ下さいな」

ナーサは嬉しそうな声で答えると、先導するように先にエルシャールの部屋に向かっていった。
その背中を見送ってソレイユはエルシャールに視線を動かした。

「落とされたいのか?」
「え?……きゃっ!」

ソレイユがエルシャールを抱え直すと、不安定な体制になってしまい、エルシャールは咄嗟にソレイユに抱き着いた。
先程よりもソレイユの顔が近くてエルシャールの心臓は早鐘を打つ。
近くで見ればより一層作り物めいたソレイユの美しさに目を奪われ、エルシャールは意地わるく笑われていてもドキドキしてしまう。

(美形だからってドキドキしてる場合じゃないわエルシャール、しっかりするのよ)

自分に叱咤をしてからエルシャールは人一人を抱えても涼しい顔をしているソレイユの顔を何度も盗み見る。

(この人も腐っても軍人の端くれってことね)

背中と足の裏に差し込まれた腕は、ソレイユの見た目から想像が出来ないほど逞しく、手のひらは大きかった。
辺境地を守り、時には王族を守る近衛騎士として動くソレイユの鍛え抜かれた身体を想像してしまいそうになってエルシャールは慌てて邪心を追いやった。
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