よくある令嬢転生だと思ったら

甘糖むい

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ソレイユがその瞳の赤に息を飲むと、エルシャールはソレイユから視線をはずしてサンドラに向きなおり静かに口を開いた。
サンドラへの同情が募り、自分の状況を理解しながらもエルシャールは理路整然と言葉を返す。
その態度は初めて会った時から想像もできないほど堂々としていて、そんなエルシャールにソレイユは驚くしか出来なかった。

何もできないとばかり思っていたエルシャールは何処で学んだのか論理的に実験までしながらワインをかけた犯人が誰かを証明した。

噂で聞いていたエルシャールとも、数日一緒に過ごしたエルシャールとも違う彼女の一面にソレイユは驚くばかりだった。
気の弱い令嬢かと思えば、自分の信念を告げる口調は伸びやかで。
そうかと思えば、謝罪をする。

コロコロと人格が入れ替わったかのようなエルシャールの様々な内面に触れるたび、ソレイユはエルシャールに興味を持っている自分を認めるしかなかった。

「私と、サンドラ。どちらが赤ワインをかけたのか皆さま良くお分かりですね?」

論理的に的確な指摘をしながらエルシャールは自分に有利な方へと話を動かしていく。
そんなエルシャールに対してサンドラ達は苛立ちを隠せない様子で感情的になる。
そうして全面的にエルシャールの無実が認められると、次は仲間同士だったはずの令嬢たちが騒ぎ始めた。

「勝負あったな……」

ずっと飛び出すタイミングを待ち望んでいたソレイユはジェニエルの一言でその場を飛び出した。
自分を虐めていた人間すらも守ろうとするエルシャールに伸びてきた手を払いのけると、背後にいるエルシャールが息を飲むのがわかった。

目的を果たすまで感情を押し殺そうと考えていた理性は何処か遠くに行ってしまったらしいと今ならわかるが、その時はどこかからくる怒りで目の前が赤く染まっているようだった。

自分に巻き付いてきたセージュの手も振り払い、エルシャールをその場から連れ出したと気が付いた時にソレイユは外の馬車置き場にまで歩みを進めていた。
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