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「私、二人に渡したいものがあるの」
そう言ってセージュは後ろ手に隠していた色違いのハンカチを2枚取り出した。
「ソレイユとジェニエルにはいつもお世話になっているから、何か返したくて作ってみたんだけどどうかしら?」
「これは……見事だなこんな細かな刺繍は国1番じゃないか?」
「ええ……素晴らしい腕前です、大変だったでしょう。ありがとうございますセージュ」
ソレイユが渡されたハンカチには、愛馬ジャスタにそっくりな馬とイニシャルがこれまで見た中でも一番と言っても遜色がないほどの刺繍で刺されていた。
「ソレイユのは馬で私のは王冠か……」
「ええ、気に入ってもらったならよかったわ」
ジェニエルが喜色を浮かべてソレイユのハンカチを覗き込むと、ソレイユは明らかに嫌そうな顔をしてジェニエルからハンカチを遠ざけた。
微笑みを浮かべるセージュは黄金色に輝く髪を揺らして嬉しそうに微笑む。
そんな彼女にジェニエルはハンカチを大切に懐に閉まってから一歩、セージュに近寄った。
「なぁセージュ。早く嫁に来ないか?」
「もう、いつもそんな冗談を言って本気にしたらどうするつもり?ねえソレイユ」
セージュは自分の腰に回ったジェニエルの手を受け入れながらそう言ってジェニエルを睨みつける。
そんな仲睦まじい様子の二人にソレイユは黙って微笑みを浮かべていたがセージュにふられると同意をしてから口を開いた。
「嫌がっているのに強要するのはおやめください陛下の悪い噂が広まってしまったらどうします」
「こんな時だけ陛下扱いはやめてくれソレイユ……それにセージュは本当に嫌がってるわけじゃないだろう?」
腕の中に居るセージュに同意を求めたジェニエルからソレイユはセージュをそっと抜け出させ、自分の後ろに隠すと、凍り付いた笑顔で再度忠告した。
「殿下、軽々しい行動はお控えください」
「わかったわかった」
両手を上げて降参を示すジェニエルとソレイユの様子にセージュはくすくすと笑い、突然思い出したかの様にソレイユの腕を取った。
「ありがとうソレイユ、この後は何か用事があるの?私お菓子も料理長とさっきまで焼いていて……」
「お気持ちは嬉しいですが、スケジュールが立て込んでいて……申し訳ございません」
ソレイユはセージュの誘いに応じ、時計を確認してから申し訳なさそうな顔をして断りを告げた。
「忙しいのね……せっかく久しぶりに会えたのに」
「また機会がありましたらぜひ、ご一緒させて下さい」
残念そうな声をだしてソレイユを引き留めるセージュの手をソレイユはそっと退けると、ソレイユは二人に退室を告げて部屋を出て行こうとする。
そんな彼の背にジェニエルは1枚の封筒をソレイユに投げるようにして手渡した。
「ひとまず様子見がてらそこのパーティーに出席してくれ、出来ればエルシャール嬢と共に」
そう言ってセージュは後ろ手に隠していた色違いのハンカチを2枚取り出した。
「ソレイユとジェニエルにはいつもお世話になっているから、何か返したくて作ってみたんだけどどうかしら?」
「これは……見事だなこんな細かな刺繍は国1番じゃないか?」
「ええ……素晴らしい腕前です、大変だったでしょう。ありがとうございますセージュ」
ソレイユが渡されたハンカチには、愛馬ジャスタにそっくりな馬とイニシャルがこれまで見た中でも一番と言っても遜色がないほどの刺繍で刺されていた。
「ソレイユのは馬で私のは王冠か……」
「ええ、気に入ってもらったならよかったわ」
ジェニエルが喜色を浮かべてソレイユのハンカチを覗き込むと、ソレイユは明らかに嫌そうな顔をしてジェニエルからハンカチを遠ざけた。
微笑みを浮かべるセージュは黄金色に輝く髪を揺らして嬉しそうに微笑む。
そんな彼女にジェニエルはハンカチを大切に懐に閉まってから一歩、セージュに近寄った。
「なぁセージュ。早く嫁に来ないか?」
「もう、いつもそんな冗談を言って本気にしたらどうするつもり?ねえソレイユ」
セージュは自分の腰に回ったジェニエルの手を受け入れながらそう言ってジェニエルを睨みつける。
そんな仲睦まじい様子の二人にソレイユは黙って微笑みを浮かべていたがセージュにふられると同意をしてから口を開いた。
「嫌がっているのに強要するのはおやめください陛下の悪い噂が広まってしまったらどうします」
「こんな時だけ陛下扱いはやめてくれソレイユ……それにセージュは本当に嫌がってるわけじゃないだろう?」
腕の中に居るセージュに同意を求めたジェニエルからソレイユはセージュをそっと抜け出させ、自分の後ろに隠すと、凍り付いた笑顔で再度忠告した。
「殿下、軽々しい行動はお控えください」
「わかったわかった」
両手を上げて降参を示すジェニエルとソレイユの様子にセージュはくすくすと笑い、突然思い出したかの様にソレイユの腕を取った。
「ありがとうソレイユ、この後は何か用事があるの?私お菓子も料理長とさっきまで焼いていて……」
「お気持ちは嬉しいですが、スケジュールが立て込んでいて……申し訳ございません」
ソレイユはセージュの誘いに応じ、時計を確認してから申し訳なさそうな顔をして断りを告げた。
「忙しいのね……せっかく久しぶりに会えたのに」
「また機会がありましたらぜひ、ご一緒させて下さい」
残念そうな声をだしてソレイユを引き留めるセージュの手をソレイユはそっと退けると、ソレイユは二人に退室を告げて部屋を出て行こうとする。
そんな彼の背にジェニエルは1枚の封筒をソレイユに投げるようにして手渡した。
「ひとまず様子見がてらそこのパーティーに出席してくれ、出来ればエルシャール嬢と共に」
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